2017/10/25

【装丁】 三葉かなえ五行歌集 『プロジェクションマッピング』

小学生のときから詩歌を書いていた少女が大人になって五行歌集を出した。
詩歌に打ち込む若い彼女のエネルギーを間近に見ていたから、この歌集が形になったことが特別嬉しい。
歌集に対して、しっかりとしたイメージを持っていた三葉さん(以下かなえさん)は、イラストや帯文もご友人に頼まれて準備されていた。
イラストの雰囲気や、20代女性の歌集であることから、可愛らしくおしゃれなフォントを選んだ。
紙の温かみを感じるタントのカバーで、ニス引きしあげ。
後ろ側にも何かアクセントがほしかったので、イラストの一部を使わせていただいた。

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帯文は、詩人の文月悠光(ふづき・ゆみ)さん。

繊細でありながら、果てしなく勇敢なことば。痛みにも目を背けることなく、世界を信じて、よりそっている。

佳苗さんの作風をよく表していることばだと思う。ご本人もあとがきでこの帯文にふれ、あらためて「歌集の歌は、私自身を投影したものと感じた」と語られている。イラストの中の紫をいただいて、明るい紫色に。
袖に「三つ葉」のシルエットを忍ばせた。

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表紙は、三つ葉のイメージの若草色に。カバーのグリーンと共鳴させる。
枠を入れたいというのは著者のリクエスト。
カバーが白地なので透け過ぎないよう、文字白抜きの特色一色にした。
カバー袖には、歌集タイトルになった「プロジェクションマッピング」の五行歌を。

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歌の世界への入り口の扉はモノトーンに。
夜空に浮かぶ月のイメージ。
見返し紙はピンク。私の最初の案では藤色のような薄紫だったのだが、著者のリクエストによりピンクに。
紫だとちょっと寂しくしぶい感じになってしまったかもしれない。こちらのほうが、若い女性らしくて良かったと思う。

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本文中にも、柴原ののはさんのイラストが数枚入っている。
歌に合わせて描いてくださっている。
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かなえさんの長年の思いがつまった一冊。
自分の中に眠る「押し花になった恋」や「かさぶた」が光を浴びたように思えるし、「菜の花の黄色」「額縁の青」や「トマトのへたのダンス」に微笑む。
でも私が一番胸に刺さったのはこの歌だ。

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この一冊もかなえさんがちぎって投げた「にく」だ。
確かに受け取ったよ。

【書誌情報】
書 名◇『プロジェクションマッピング』
著 者◇三葉かなえ(みつば・かなえ)
四六判・並製・124頁
定価1,000円+税
発行日:2017年11月7日
ISBN978-4-88208-151-7


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2017/10/20

【装丁】柳瀬丈子五行歌集『波まかせ〜旅〜』

同人の柳瀬丈子氏が、世界旅行の船旅の思い出を、写真と五行歌でつづった歌集を出版された。
柳瀬氏が自ら撮影した旅のスナップを入れた、うつくしい五行歌集。

最初の歌集のお打合せ時に、旅先のたくさんのお写真をみせていただいた。
旅は主に船旅で、北廻り世界一周とか、南極経由南廻りでとか、なかなか目にすることがない珍しい景色や生き物が映されていた。今回の歌集のタイトルが、船旅のイメージから『波まかせ』になったことから、南極で撮られたなんとも幻想的な流氷の写真をカバーに使った。
南極の氷山は長い年月をかけて凍るため、光の青だけを通すので青くみえるらしい。
その欠片が流されてぷかぷか浮いてるようすは、まさに波まかせ!

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カバー写真が煙るような淡いブルーの世界なので、見返しは、はっとするセルリアンブルーに。
氷山のひと色であり、この色は、ときおり柳瀬氏のお召し物に見つける色だった。

写真をきれいに見せたいので、中身の本文紙は微塗工紙にしてオールカラー印刷。
判型は、著者の希望から、B5の横幅で、縦が短い横長のアルバム風の形となった。
横長なので、横置きの写真もたっぷり余裕をもって入れられるし、歌も横並びで1ページに複数入る。

カバーの裏側は、歌集の中の最後の虹の歌をひきついで海にかかる大きなレインボウのお写真を配置。

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表紙と扉は、波のイメージでラインを入れてみた。
特色一色の濃淡で変化をつけている。表紙と扉はサイズが違うので、それぞれ別に描いている。
扉の紙は、新局紙。和紙の風合いのものを選んだ。

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船旅は、地につく時間よりも長く、空や海を見る時間が多そうである。
ことに夕日のなにも遮るものがない地球まるごとの夕日の写真は圧巻である。
ページをめくりながら、見知らぬ土地を旅する気分を味わう。

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【書誌情報】
書 名◇『波まかせ ~ 旅~』

著 者◇ 柳瀬丈子
    (やなせ・たけこ)

B5判変型(w182xh170) カラー印刷・上製・46頁
定価1,500円+税
発行日:2017年10月26日
ISBN978-4-88208-150-0


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2017/09/18

【装丁】 高原郁子五行歌集 『雅』 (そらまめ文庫)

そらまめ文庫第二弾、高原郁子(こうげん・かぐわし)氏の『雅』。
高原氏は、五行歌を始めてから一年足らずなのだが、読売新聞さいたま版の五行歌欄に精力的に投稿を続け、五行歌の会にも入会、歌会参加、そして「そらまめ文庫」にて出版となった。
こちらの『雅』は、そらまめ文庫のスタンダートな装丁になっているので、それも合わせて紹介したい。

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カバー写真は、素材サイトから購入したもの。高原氏が撮影した、満濃池の写真を参考に、同じアングルのものを探して採用した。スリップも雰囲気に合わせて、藤色に。

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上が表紙。文庫らしい飽きのこないシンプルなデザインにしている。(そらまめ文庫規定デザイン)
下がカバー。表の写真は、好みのものを選べる。タイトルやイメージに合わせて、フォントを選んだ。
帯なしが規定なので、単調にならないよう、いくつか色で構成している。
うすい黄緑は、そらまめの色をイメージしている。
そらまめ文庫のロゴをカバー袖にいれている。

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こちらが扉。基本的には規定のデザインだが、フォントなどはイメージに合ったものにしている。

そらまめ文庫は、著者の頭文字+著者コード+著者通番の番号をつけている。
こうげん氏なので、「こ」、頭文字「こ」の最初の人なので「1」、高原郁子氏の最初の一冊なので「1」
こ1-1、となる。
高原郁子氏がもし、2冊目のそらまめ文庫を出したとすると、「こ1-2」となる。
こうしてそらまめ文庫シリーズが充実したおりには、著者名ごとに著作がずらりと並ぶことを夢見ている。


【そらまめ文庫 こ1-1】
書 名◇五行歌集『雅』
著 者◇高原郁子(こうげん・かぐわし)
新書判・並製・104頁
定価800円+税
発行日:2017年9月23日
ISBN978-4-88208-149-4


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【装丁】 水源カエデ 『一ケ月反抗期 -14歳の五行歌集』(そらまめ文庫)

AQ五行歌会でも仲間の水源(みなもと)カエデくんが、ついに五行歌集を出した!
市井社で新しくはじまった、「そらまめ文庫」第一弾である。
「そらまめ文庫」とは、新書サイズのコンパクトな装丁で、規定パターン+カスタマイズとなる。
今回のカエデくんの歌集は、カスタマイズとして跋文つき、帯つき、としたので、規定パターンも少々変えてデザインした。
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今回の装丁については、著者のカエデくんの要望とアイディアが生きている。
カバー写真も、自ら撮影したものだし、「反抗期」のフォントも、自分でアプリで見つけてきた。シミュレーションしながら、細かく相談して、そらまめ文庫らしさもいれつつ、インパクトのある装丁になった。

この歌集を読んだときに、これは彼の言揚げだと思った。
鮮やかに翻る旗のようだと。
そこでサブタイトルの「14歳の五行歌集」を真っ赤な旗にして掲げた。
帯は赤がいい、歌を入れたい、と言ったのもカエデくんだった。
帯に入れる歌は、この歌集やカエデくんの背景がわかる一首が選ばれた。
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表紙は、そらまめ文庫オリジナル(規定)デザイン。

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扉、こちらもそらまめ文庫デザイン。
カワイイサインをいただいたので、サイン入り画像。

この歌集は、彼に起きたこと、激しい感情、悩みが真っ正直に書かれている。
昨今の14歳の少年の活躍、4に1つの離婚家庭があるとさえ言われる現代社会においても、大変注目をあびる一冊となった。
ぜひ手に取っていただきたい。

【そらまめ文庫 み1-1】
書 名◇『一ヶ月反抗期』
    - 14歳の五行歌集 -
著 者◇水源カエデ(みなもと・かえで)
新書判・並製・96頁
定価800円+税
発行日:2017年9月17日
ISBN978-4-88208-148-7

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2016/12/29

【電子書籍】『五行歌 誰の心にも名作がある』Kindleストアにて発売ができるまで

一年の最後にようやく、念願のキンドル本製作&販売がかないました!

 編集部で相談の上、最初の一冊は、草壁焔太先生の『五行歌 誰の心にも名作がある』にしました。
わずか四歳のときに、啄木の歌と出合いうたびとになる決意をしたエピソード、五行歌の創始の経緯、古代歌謡からの発見、ものを思い、詩歌を書くことでそれぞれの個性が輝くこと。
 五行歌のすべてがここにわかりやすく解説されています。
 一人でも多くの方に読んでいただきたい一冊を、電子書籍化しました。
 電子書籍化への編集では、「リフロー型」、ページの概念がなく、長い巻物のような展開になります。
 小さな端末で見ることを想定して、段組みは、すべてひらき、ルビをつかっておさまりよく再構成しています。
 また、古代歌謡については、文献を見直して一部修正、巻末に参考文献も追加しています。
 キンドル本は、対応するアプリをダウンロードすると、パソコン、タブレット、スマートフォンでも読むことができます。サンプルもダウンロードできますので、ぜひ体験してみてください。

 とここまではちょっと宣伝。
 実際に苦労したポイントをいくつか以下まとめてみたい。

----- + ----- + ----- + -----

1)どのやり方、ツールで電子書籍化したらいいのかわからない。

 電子書籍をつくるためのツール、無料のものも一杯あるのだが、今回の書籍がまず「縦書き」が条件だったので、縦書きに対応できるもの、とした。
 PDFファイルからepub3へ変換できるツールを試したが、結果使える形にならず、挫折。
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 Sigilというツールが、epubファイルを直接編集できて、オールインワンツールで使いやすかったのだが、編集が横向きになってしまい、「縦書き」未対応で挫折。これが縦書き対応ならベストだと思った。
 ↓
 青空文庫のツールを使って作る方法は、縦書きに関してはOKだった。
 ツールがいくつか必要で、やりにくい。(不採用)
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 その他、Carib,Renee PDF Aide,t2epubなどかたっぱしからトライするも、納得できるものなし。
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 IndesignからePUB3 なんとなくいけそうだが、会社にIndesign導入してないので没。
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 でんでんコンバーターは縦書きOK.(採用)
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 テキスト変換で、Perlスクリプトを書く挑戦。(パターンが多すぎ挫折)
 ↓
 電子書籍の作り方の、キンドル本もいくつか買ってみたが、意外に中途半端だし、すぐ情報が変わる。
 今回は、kindle本製作販売実績のあるとれぶ出版の渡辺氏にお願いし、製作を支えていただいて、やっと販売までたどり着けたという経緯である。やっぱり一人で片手間にやってできることではなかった。


2)テキスト化に一苦労

 ふだん本を作るのに使っている編集ソフトから、ベースとなるテキストファイルを抽出したのだが、これが曲者だった。ルビがぬける、ルビを打った漢字が欠落する、段組みの文字が欠落、縦中横にした文字が欠落。
 また、Unicodeでないと表示できない文字も欠落。Unicode UTC-8を調べ、補完する作業が必要。
 段組みをひらく、ルビ打ち、ルビの元の漢字を補てん、縦中横補てん、及び校正作業。


3)動作確認の不可解な現象

 実機テストは、KindleforPC(KPC)、KindlePaperwhite(以下PW)、iPhoneKindleアプリ、iPadKidleアプリで行った。
 mobiファイルを転送するのだが、iPhoneでは横書きになる>その後AZKファイルを転送することを知るが、それでもときおり横書きに変わる?! kindleで表紙画像がでない、脚注リンクの不安定、目次が全部でないなど。


4)圏点、丸数字、章扉センタリングなどの対応に、CSS設定追加

 底本になるべく準じるように、HTML記述だけでなく、CSS作成をお願いした。


5)全編にわたり、何度となく校正、実機テストの繰り返し。


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 当初想定できない、ハードルが次から次へとでてきて、苦しい戦いでした。
 渡辺氏には、心より感謝いたします。
 作ってみたものの、そうそう売れるもんでもないんだな、というのも痛感しております。
 それでも、紙よりも電子の方が残しやすいし、将来的にも利用価値があると信じ、これからもとりくんで行きたいと思っております。
 ぜひぜひよろしくお願いいたします!

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2016/08/24

【読書メモ】 平野啓一郎 『マチネの終わりに』

久しぶりに純粋な恋愛小説を読ませてもらった。
読み終わったときに、虚脱感と、全身に血が巡るような温かみ。
その夜は、パソコンもスマホも開かなかった。

(===結末、ネタばれはいっています。ご注意ください===)

最初読み始めたら、なんとなく時間の流れ方とか、海外の舞台とかが『冷静と情熱のあいだ』に似てる話だなと感じたが、読み進めるうちに、それは忘れた。

藤野聡史 38歳 (天才)クラシックギタリスト
小峰洋子 40歳 フランス通信社記者(婚約中)

コンサート後の知人の紹介で出会った二人の一目ぼれから始まる、ロング・ロング・ワンダリングロード。
物語の舞台は、東京、パリ、ニューヨーク、ジュネーブと華やか。バックミュージックはクラッシックの名曲。
お膳立てはばっちりなのだが、描かれるのは真摯で周りを思いやり、うぬぼれない大人の恋愛なのだ。
魅力的な二人の周りの登場人物の苦悩。マリアになれないマルタの苦しみ。
逸る心をぶつけるような、若い恋とは違う、揺れながらゆっくり熟していく魅力にあふれている。

この小説は、二人の恋愛が中心だが、その中にクラシック音楽の興味、イラク情勢、難民問題、金融経済についての考察が、日常の中にたくみに描かれて、話に厚みを持たせている。多くの時間、取材や調べものをされたんだろう。わかりやすいように、的確に書かれているのは、作者の知性そのものだ。

のちに蒔田の妻となるマネージャーが、二人を引き裂く嘘をついたことで、一度決別を迎える。
それぞれの人生を立て直すため、もがく蒔田と洋子。その姿さえうつくしい二人である。
主なあらすじだけをたどると、うすい恋愛小説になってしまうのだが、これは違うのだ!

それは先に書いた、作者が何重にもめぐらした、主旋律にからむ「副旋律」の絶妙さからくるものだ。
主人公が才能があり、魅力的なうえに、努力家で愛について真摯で、自分の仕事についてまじめに取り組んでいるから、からかいの言葉を挟む余地がない。

=== ネタバレ ===

学生時代からのフィアンセと結婚し、一児をもうけたものの、離婚した洋子。
失意の後、長く活動を支えた妻と結婚し、やはり女の子をさずかった蒔田。
ニューヨークの蒔田のコンサートを見に行った洋子を、見つけた蒔田は、二人の思い出の曲をアンコールに弾く。
ラストシーンは、セントラルパークの池のほとりで、お互いを見つけた場面。

これからどんな会話がなされるのか。
二人の未来、過去がどうかわるのか。
作品中何度となく表れる、呪文のことばを唱える。


未来は常に過去を変えている


作者は描かないでおいてくれた。
読者がどうあってほしいか、どう想像するかに任せてくれた。
それは、蒔田の夫としての誠実さを守ることであり、二人の愛の成就を願いそれが叶うカタルシスを守ることでもあった。
平野さん、ありがとうございました。
素晴らしい作品でした。5つ★献上。

#マチネの終わりに

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2016/07/26

【装丁】福田雅子五行歌集『馬ってね…』

今月の市井社新刊として、埼玉在住の福田雅子さんが五行歌集を発行され、装丁を担当しました。
2013年に表紙歌、

馬と私が
空気の一玉となって
ふわっと弾む
体験乗馬の
まさかの一瞬

この「空気の一玉」で体感を瞬時に人に教えてしまう、見事な表現を見せてくれた福田さん。
今回の歌集も、馬が主軸のテーマになっています。

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馬の後ろ側、なにやらもの思いしてるようなちぎり絵は、著者によるもの。
カバー裏のおしりと合わせ、これをカバーデザインに使うことに。
バックは薄オレンジという希望をいただいたのですが、茶とオレンジだけでは少し色調が単調な気がして、空と草を追加してみました。
カバーの袖を広げると、雲も馬の形になっているんです。馬は馬の夢をみるのかなぁ? と想像しながら。

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帯は不要とのリクエストで、スペースのびのびのレイアウトが可能になりました。
カバー下の表紙は、ポクポク歩いている足跡がわりの蹄鉄。
馬の蹄鉄は「幸運のお守り」とされていて、上が開いているU字型に幸運を受けとめると言われています。
お守りをアクセントにあちこちに散りばめています。

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見返し紙は、芝生の緑に合わせてみました。
扉は、特色一色。
中にも入っていますが、この馬も、著者の切り絵を使っています。
五行歌の会に入会後、次々と新鮮な表現で周りを驚かせた作者の歌集です。
一首一首が鮮やかな印象を残すことに驚かれるでしょう。
ぜひご覧くださいませ。


【書誌情報】
書 名 ◇ 『馬ってね・・・』
著 者 ◇ 福田雅子
価 格 ◇ ¥1,200+ (税)

四六判・並製・204頁
本体1,200円(税別)
発行日 2016年7月27日
ISBN ISBN978-4-88208-142-5

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2016/07/09

物語を食べて育った

小学生のとき、ヒノキちゃんという友だちがいた。
ある日その子の家に遊びに行ったとき、「うちのタンスの裏に秘密の扉があるんだよ。見せてあげる」
と言われた。
タンスの中の服をかき分けて、ヒノキちゃんは奥を調べた。
「あれ? 今日は開かないや」
私はちょっとがっかりして、なんだか少しホッとした。
何処かに行っちゃうかもしれないのが怖かったのだ。
家に帰ってから、うちのタンスの奥も調べてみたのは言うまでもない。

わかる人にはわかる。ヒノキちゃんは、「ナルニア国」の住人だったに違いない。

本を読んでいると、本の中の世界が頭の中でぐんぐん広がって、主人公と一緒に旅している気分になる。
登場人物が大好きになったり、悪役を憎んだり。
こんな風に入り込める作品は限られている。

例えば『指輪物語』、『はてしのない物語』、ハリーポッターシリーズ、『ダレン・シャン』『モモ』。
児童文学ばっかりになっちゃったが、今でもタンスの裏の鍵は持っているつもりだ。

誰かの作ったバーチャルを見せられてるんじゃなくて。
自分の想像力が作った世界への鍵。

「精霊の守り人展」に行って、いろいろ思い出して、あらためて本を読み返したり、ドラマを見たり。
困難にどう主人公が立ち向かうのか、息をとめてわくわくするのは、心の栄養になっていたと思う。
うん、物語を食べて育ったんだ。

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2016/07/02

上橋菜穂子と〈精霊の守り人〉展

世田谷文学館にて開催中の上橋菜穂子と〈精霊の守り人〉展に行ってきました!
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会期は7月3日までなのですべりこみセーフ。行きたい方は明日まで!
写真は一部OKマークのところだけ撮れました。

展示は、守り人シリーズの作品紹介を中心に、上橋先生の才能を育てたバックグラウンドの紹介、、二木真希子氏、佐竹美保氏の挿絵の原画も展示されていました。
(会場の最後に、二木真希子氏は5月にご逝去されたと書いてあった。ご冥福をお祈りします。)

NHKで3年かけて放送するドラマ「精霊の守り人」から、出演者がきた衣装も展示されていました。
一つ一つ作品イメージに合わせ凝った作りです。
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女用心棒、バルサ役、綾瀬はるかさんの衣装。

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チャグム、帝の子ながら、ある秘密から命を狙われる。町の子変装の衣装と、宮廷での衣装。ちっちゃい。

帝の住まいの装飾マークなどもオリジナルで作ったそうで、その製作ノートも興味深かったです。

上橋先生ご自身による登場人物のイメージのイラスト(!)も何点かありました。イラストレーターに人物イメージを伝えるため書いたものらしいです。きけばお父様が洋画家だったというので、絵がうまいのもうなずけますな。
大学時代のフィールドワークの資料から創作についてのインタビューのVTRや、ドラマで使われた衣装や絵コンテなど。
おじいさまが、柔術の達人で警護のお仕事(守り人!)をされていたこと、おばあさまが語り上手で、おじいさまの武勇伝を聞いたこと、大学でアボリジニのフィールドワークをされていたこと。
いろんな素地、経験、学問などから、あの物語が生まれたのだなぁと感心した。

インタビューの中で、「私はファンタジーを書いてるのではない」と語られていてはっとした。
「何でもありじゃないんです」
つまり、想像力は使うんだけど、リアリティーの延長での想像。
精霊の守り人の主人公は、女用心棒バルサ。
それが現実的にありなのか、柔術の道場に取材に行き、そこにうつくしい達人が居て得心が行ったという。
バルサの武器が、短槍なのも女性が使いやすいリアリティがある。
弁慶の体格なら、大長刀でよいが、細身のバルサには似合わない。そういう、細かな設定が綿密な思考と想像力によって組み立てられていたのだった。

そのリアリティが、読むものをどっぷり世界に惹きこんでしまうのだろう。
上橋先生の創作の秘密をちょっとのぞけた気がして、とても興味深い展示であった。

展示のチケットは、バングルになっている。つけて回っていると、映像のブースがあり、そこで別の文様が浮かび上がるしかけ。カッコイイ!
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昔読んだ原作をまた読み返したくなった。ドラマも楽しみ!
創作についての上橋先生の矜持は、素晴らしいものだなと大いに刺激を受けた。
これからもご活躍を!

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2016/04/10

【読書メモ】 『田舎のパン屋が見つけた「腐る」経済』

この本を何で知ったのか思い出せないが、何かのレビューを見て興味をもって図書館の予約をしておいた本だった。かなり待ち行列は長かったと思う。
「経済」がつく本を読むのはほとんどない私も、「これは面白い!」と思ったので、紹介したい。

作者は、30代でパン屋をめざし修行を始めるが、「天然酵母パン」と名乗っているものの実態、利益第1主義の商売に疑問を感じ、本物の「自家培養の天然酵母パン」を作るために、東奔西走する中、地産地消を大切にした「循環型地域社会づくり」の道を見つける。

店の経営理念は、「利潤」を出さないこと。

マルクスの『資本論』の中に出てくる、パン屋の惨状。パン屋修行の中で、「商品」「価格」「交換価値」についての学び。「労働力」を切り売りしないために、「生産手段」を持つこと。
「自家培養の天然酵母パン」は手間暇かかる。その分、高い。でもそれは正当な価格なのだ。
それを支払ってもらうことで、よりよい品質のものを提供し続けることができる。
苦労する中で、目標が一緒の仲間たちも連携して、支え合う。

大人になるということは、自分で稼いだお金で生活できることだと思っている。
問題は、そのお金をどう使うか、何に消費するのかがとても大事だ。
オンラインゲームに課金するのか、体にいい食事のために使うのか。
それは、人生の選択そのものだ。

この本を読んで、「経済」という言葉がどこか堅苦しいと思っていたが、自分の「収入と支出」を選び取ることなんだなと思った。何で稼ぎ、何を消費する、そこで何が循環するのか。

先日読んだ、『フランス人は10着しか服を持たない』(読書メモ参照)も、同じくライフスタイルを提案した本だった。
シック家は「守り」、渡邉さんは「挑戦」だと感じる。

ムッシュー・シックの一族は、貴族の末裔だからこそ、豪華な調度品や食器、住宅を「すでに手に入れていて」、伝統を守り、多くを欲しがらず、厳選した良いものを取り入れて、毎日を楽しむことができた。
渡邉さんは、学生時代の放浪からはじまり、まさに「裸一貫」からのスタート。
シック家は、豊かに暮らしているけれど、どこか自己完結している。
渡邉さんは、菌を育て、土を育て、地域を活性化させ、人も育てようとしている。

2つの「豊かな暮らし」を比べてみて、どちらも大変興味深かった。
自分は、何をどう選んでいくか、どんなライフスタイルをつくっていくのか、読者に問いかける、素晴らしい本であった。

【おまけ】
ちなみに渡邉さんと奥さんがやっている「タルマーリー」は2015年6月鳥取県智頭町智頭町に移転ししている。ホームページをみると、パンの香りが漂ってくるよう。こだわりのいろいろも読めるので、おすすめ。
あぁ〜美味しいパンが食べたくなる〜!

【書誌情報】

著 者  渡邉 格(わたなべ・いたる)
書 名  田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
判 型  四六判・上製・234頁
出版社  講談社
ISBN978-4-062183895


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