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2017/11/12

【没後30年 回顧展】 澁澤龍彦 ドラコニアの地平

世田谷文学館で開催されている、澁澤龍彦没後30年の展示を見に行った。
美術展は、「日曜美術館」とか「ぶらぶら美術・博物館」みたいなTV番組でもよく紹介されるが、こういう文学系の地味な展示は紹介が少ないと思う。
世田谷文学館は、地道にいい展示をしてくれる貴重な場所だ。
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澁澤龍彦は、フランス文学者、作家、批評家であるが、なんといってもマルキ・ド・サド著『悪徳の栄え』の翻訳、発禁の「サド裁判」で有名になったことで知られている。
今回の展示は、

300点を超える草稿・原稿・創作メモの自筆資料、愛蔵の美術品やオブジェ、和洋の蔵書などから表現活動の背景と博物誌的魅力に迫る。
パンフレットより引用。
サドにとどまらない、豊かな「ドラコニア」(澁澤の造語)の世界を見せてくれた。
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入るなりたくさんの自筆原稿が並んでいて、じっくり読んでいると意外と時間がかかるので、余裕をもって訪れてほしい。澁澤氏は、鉛筆で原稿用紙に書いているのだが、たくさん吹き出しの修正をいれていて、消しゴムは使わない主義のようだ。おもしろいのは、最初の筆が鉛筆で、直しが万年筆なこと。
普通逆ではないのかな?
手書きの文字は、思いのほか読みやすく、修正内容も明確で、より分かりやすいように修正している。
個性的なひとだとは思っていたけど、生原稿からはすごく誠実な印象を受けた。

旅行記もたくさん出されていて、龍子夫人や友人との写真もたくさんあった。
サングラスやパイプを片手に、なかなかのかっこよさ。

イラストや、自ら自著の装丁もされていたようで、そこも興味深かった。
自分の世界観を装丁に反映したいという気持ちは、痛いほどわかる。

書棚の大量な書物、地球儀、球体人形、凸面鏡、リトグラフなど、その博識と偏愛かげんがなんとも魅力的である。

たくさんの友人との手紙も展示されており、たとえば本を送ってくれた礼状など、きさくで温かな人柄が伝わるものだった。
今の作家が亡くなっても、こんなふうな手書きの手紙なんて残されてるのかな、なんて思った。
若い人はとくに、手書きの手紙を書く人も少なくなってるような気がして。

たっぷり鑑賞し、文学館を後にして、出た一言は、
「かっこいい!」
でした。
『幻想美術館』と『石の夢』は読んでみたい。

開催期間:2017/12/17(日)まで 10:00-18:00 (月曜休館)
11月24日は、朗読を楽しむ会のイベントもあるようですよ。こちら申し込み不要・入場無料。
世田谷文学館イベント

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