« 2017年10月 | トップページ | 2017年12月 »

2017/11/24

【装丁】松山佐代子五行歌集 『そ・ら』

五行歌の会同人の松山佐代子さんの歌集の装丁を担当させていただいた。
打ち合わせの際、松山さんご自身が描かれたイラストをたくさんお持ちくださった。
パステル調のやさしい色彩のポストカードが目をひいた。
タイトルとの兼ね合いから、青空のイラストをカバーにすることにした。

ぽわぽわと丸い雲が浮いているのが、メロディーのようで、このメロディーに沿うように、黄色い雲にのせて『そ・ら』とつづった。(ソとラなら、ラがちょっと高いよね。)
紙の風合いを生かしたニス引き仕上げ。
この絵をみていると、ユーミンの「悲しいほどお天気」を思い出す。
0812a31f31224c9e82594287f1fe8d1a

イラストのやさしい印象を壊したくなくて、帯も補色でなく同系色のブルーに。空をイメージした明るめのブルーの特色を選ぶ。

D3474c31b2e041a2885755d235995ddf

カバー下の表紙は、シアン一色の濃淡でさわやかに。
4345450edfef4af8b9cef4d6e39d3812

扉もイラストをつかってカラーに。見返しは扉を引き立てる淡いクリーム色。
絵の雰囲気を強い色で壊さないように、光の黄色が反対側まで届くイメージにした。
F62a5fcd9d1149bf9192b32fdc43e983

松山さんの絵手紙や貼りえ、イラスト数枚を、巻頭カラー口絵になった。
8f571de5d64a4fcc9d5e64054efcbbf9


2873ff27b0924629912028f190c405d7

女が一人で生きていく現実の厳しさ。くじけそうになりながらも、何度も心を立て直す。
胸底にはいつも美しいイメージが流れている。憧れの翼をもっている。
大丈夫。まだ笑える。
その姿がまばゆくて胸打たれる一冊だ。


【書誌情報】
書 名◇『そ・ら』
著 者◇松山佐代子(まつやま・さよこ)
四六判変型・並製・314頁
定価1,400円+税
発行日:2017年12月7日
ISBN978-4-88208-152-4


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/11/12

【没後30年 回顧展】 澁澤龍彦 ドラコニアの地平

世田谷文学館で開催されている、澁澤龍彦没後30年の展示を見に行った。
美術展は、「日曜美術館」とか「ぶらぶら美術・博物館」みたいなTV番組でもよく紹介されるが、こういう文学系の地味な展示は紹介が少ないと思う。
世田谷文学館は、地道にいい展示をしてくれる貴重な場所だ。
Sibusawa004

澁澤龍彦は、フランス文学者、作家、批評家であるが、なんといってもマルキ・ド・サド著『悪徳の栄え』の翻訳、発禁の「サド裁判」で有名になったことで知られている。
今回の展示は、

300点を超える草稿・原稿・創作メモの自筆資料、愛蔵の美術品やオブジェ、和洋の蔵書などから表現活動の背景と博物誌的魅力に迫る。
パンフレットより引用。
サドにとどまらない、豊かな「ドラコニア」(澁澤の造語)の世界を見せてくれた。
Sibusawa003

入るなりたくさんの自筆原稿が並んでいて、じっくり読んでいると意外と時間がかかるので、余裕をもって訪れてほしい。澁澤氏は、鉛筆で原稿用紙に書いているのだが、たくさん吹き出しの修正をいれていて、消しゴムは使わない主義のようだ。おもしろいのは、最初の筆が鉛筆で、直しが万年筆なこと。
普通逆ではないのかな?
手書きの文字は、思いのほか読みやすく、修正内容も明確で、より分かりやすいように修正している。
個性的なひとだとは思っていたけど、生原稿からはすごく誠実な印象を受けた。

旅行記もたくさん出されていて、龍子夫人や友人との写真もたくさんあった。
サングラスやパイプを片手に、なかなかのかっこよさ。

イラストや、自ら自著の装丁もされていたようで、そこも興味深かった。
自分の世界観を装丁に反映したいという気持ちは、痛いほどわかる。

書棚の大量な書物、地球儀、球体人形、凸面鏡、リトグラフなど、その博識と偏愛かげんがなんとも魅力的である。

たくさんの友人との手紙も展示されており、たとえば本を送ってくれた礼状など、きさくで温かな人柄が伝わるものだった。
今の作家が亡くなっても、こんなふうな手書きの手紙なんて残されてるのかな、なんて思った。
若い人はとくに、手書きの手紙を書く人も少なくなってるような気がして。

たっぷり鑑賞し、文学館を後にして、出た一言は、
「かっこいい!」
でした。
『幻想美術館』と『石の夢』は読んでみたい。

開催期間:2017/12/17(日)まで 10:00-18:00 (月曜休館)
11月24日は、朗読を楽しむ会のイベントもあるようですよ。こちら申し込み不要・入場無料。
世田谷文学館イベント

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年10月 | トップページ | 2017年12月 »