【装丁】 三葉かなえ五行歌集 『プロジェクションマッピング』
小学生のときから詩歌を書いていた少女が大人になって五行歌集を出した。
詩歌に打ち込む若い彼女のエネルギーを間近に見ていたから、この歌集が形になったことが特別嬉しい。
歌集に対して、しっかりとしたイメージを持っていた三葉さん(以下かなえさん)は、イラストや帯文もご友人に頼まれて準備されていた。
イラストの雰囲気や、20代女性の歌集であることから、可愛らしくおしゃれなフォントを選んだ。
紙の温かみを感じるタントのカバーで、ニス引きしあげ。
後ろ側にも何かアクセントがほしかったので、イラストの一部を使わせていただいた。
帯文は、詩人の文月悠光(ふづき・ゆみ)さん。
繊細でありながら、果てしなく勇敢なことば。痛みにも目を背けることなく、世界を信じて、よりそっている。
佳苗さんの作風をよく表していることばだと思う。ご本人もあとがきでこの帯文にふれ、あらためて「歌集の歌は、私自身を投影したものと感じた」と語られている。イラストの中の紫をいただいて、明るい紫色に。
袖に「三つ葉」のシルエットを忍ばせた。
表紙は、三つ葉のイメージの若草色に。カバーのグリーンと共鳴させる。
枠を入れたいというのは著者のリクエスト。
カバーが白地なので透け過ぎないよう、文字白抜きの特色一色にした。
カバー袖には、歌集タイトルになった「プロジェクションマッピング」の五行歌を。
歌の世界への入り口の扉はモノトーンに。
夜空に浮かぶ月のイメージ。
見返し紙はピンク。私の最初の案では藤色のような薄紫だったのだが、著者のリクエストによりピンクに。
紫だとちょっと寂しくしぶい感じになってしまったかもしれない。こちらのほうが、若い女性らしくて良かったと思う。
本文中にも、柴原ののはさんのイラストが数枚入っている。
歌に合わせて描いてくださっている。
かなえさんの長年の思いがつまった一冊。
自分の中に眠る「押し花になった恋」や「かさぶた」が光を浴びたように思えるし、「菜の花の黄色」「額縁の青」や「トマトのへたのダンス」に微笑む。
でも私が一番胸に刺さったのはこの歌だ。
この一冊もかなえさんがちぎって投げた「にく」だ。
確かに受け取ったよ。
【書誌情報】
書 名◇『プロジェクションマッピング』
著 者◇三葉かなえ(みつば・かなえ)
四六判・並製・124頁
定価1,000円+税
発行日:2017年11月7日
ISBN978-4-88208-151-7
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