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2017/10/25

【装丁】 三葉かなえ五行歌集 『プロジェクションマッピング』

小学生のときから詩歌を書いていた少女が大人になって五行歌集を出した。
詩歌に打ち込む若い彼女のエネルギーを間近に見ていたから、この歌集が形になったことが特別嬉しい。
歌集に対して、しっかりとしたイメージを持っていた三葉さん(以下かなえさん)は、イラストや帯文もご友人に頼まれて準備されていた。
イラストの雰囲気や、20代女性の歌集であることから、可愛らしくおしゃれなフォントを選んだ。
紙の温かみを感じるタントのカバーで、ニス引きしあげ。
後ろ側にも何かアクセントがほしかったので、イラストの一部を使わせていただいた。

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帯文は、詩人の文月悠光(ふづき・ゆみ)さん。

繊細でありながら、果てしなく勇敢なことば。痛みにも目を背けることなく、世界を信じて、よりそっている。

佳苗さんの作風をよく表していることばだと思う。ご本人もあとがきでこの帯文にふれ、あらためて「歌集の歌は、私自身を投影したものと感じた」と語られている。イラストの中の紫をいただいて、明るい紫色に。
袖に「三つ葉」のシルエットを忍ばせた。

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表紙は、三つ葉のイメージの若草色に。カバーのグリーンと共鳴させる。
枠を入れたいというのは著者のリクエスト。
カバーが白地なので透け過ぎないよう、文字白抜きの特色一色にした。
カバー袖には、歌集タイトルになった「プロジェクションマッピング」の五行歌を。

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歌の世界への入り口の扉はモノトーンに。
夜空に浮かぶ月のイメージ。
見返し紙はピンク。私の最初の案では藤色のような薄紫だったのだが、著者のリクエストによりピンクに。
紫だとちょっと寂しくしぶい感じになってしまったかもしれない。こちらのほうが、若い女性らしくて良かったと思う。

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本文中にも、柴原ののはさんのイラストが数枚入っている。
歌に合わせて描いてくださっている。
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かなえさんの長年の思いがつまった一冊。
自分の中に眠る「押し花になった恋」や「かさぶた」が光を浴びたように思えるし、「菜の花の黄色」「額縁の青」や「トマトのへたのダンス」に微笑む。
でも私が一番胸に刺さったのはこの歌だ。

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この一冊もかなえさんがちぎって投げた「にく」だ。
確かに受け取ったよ。

【書誌情報】
書 名◇『プロジェクションマッピング』
著 者◇三葉かなえ(みつば・かなえ)
四六判・並製・124頁
定価1,000円+税
発行日:2017年11月7日
ISBN978-4-88208-151-7


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2017/10/20

【装丁】柳瀬丈子五行歌集『波まかせ〜旅〜』

同人の柳瀬丈子氏が、世界旅行の船旅の思い出を、写真と五行歌でつづった歌集を出版された。
柳瀬氏が自ら撮影した旅のスナップを入れた、うつくしい五行歌集。

最初の歌集のお打合せ時に、旅先のたくさんのお写真をみせていただいた。
旅は主に船旅で、北廻り世界一周とか、南極経由南廻りでとか、なかなか目にすることがない珍しい景色や生き物が映されていた。今回の歌集のタイトルが、船旅のイメージから『波まかせ』になったことから、南極で撮られたなんとも幻想的な流氷の写真をカバーに使った。
南極の氷山は長い年月をかけて凍るため、光の青だけを通すので青くみえるらしい。
その欠片が流されてぷかぷか浮いてるようすは、まさに波まかせ!

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カバー写真が煙るような淡いブルーの世界なので、見返しは、はっとするセルリアンブルーに。
氷山のひと色であり、この色は、ときおり柳瀬氏のお召し物に見つける色だった。

写真をきれいに見せたいので、中身の本文紙は微塗工紙にしてオールカラー印刷。
判型は、著者の希望から、B5の横幅で、縦が短い横長のアルバム風の形となった。
横長なので、横置きの写真もたっぷり余裕をもって入れられるし、歌も横並びで1ページに複数入る。

カバーの裏側は、歌集の中の最後の虹の歌をひきついで海にかかる大きなレインボウのお写真を配置。

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表紙と扉は、波のイメージでラインを入れてみた。
特色一色の濃淡で変化をつけている。表紙と扉はサイズが違うので、それぞれ別に描いている。
扉の紙は、新局紙。和紙の風合いのものを選んだ。

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船旅は、地につく時間よりも長く、空や海を見る時間が多そうである。
ことに夕日のなにも遮るものがない地球まるごとの夕日の写真は圧巻である。
ページをめくりながら、見知らぬ土地を旅する気分を味わう。

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【書誌情報】
書 名◇『波まかせ ~ 旅~』

著 者◇ 柳瀬丈子
    (やなせ・たけこ)

B5判変型(w182xh170) カラー印刷・上製・46頁
定価1,500円+税
発行日:2017年10月26日
ISBN978-4-88208-150-0


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2017/10/09

SONGS 小沢健二~今 僕が伝えたい音楽とことば~の衝撃

10月5日(木)第437回SONGSは、小沢健二~今 僕が伝えたい音楽とことば~だった。

SONGSサイトによると

今回出演するに当たり、小沢は「SONGS」スタッフと何度もディスカッションを行い、一夜だけのスペシャルなステージをプロデュース。まるで一つの劇場を作ったかのようなステージセットや、番組全体の構成、さらに観客にふるまう飲み物のレシピまで、全てに小沢本人の意向が反映された特別な内容となっている。

おそらく再放送の要望が殺到して、もう一度見られるチャンスもあるかと思うが、あまりに素晴らしかったので、内容や感想などを記しておきたい。
最初に、私は熱狂的な小沢健二信者というわけではなく、ものすごく彼に詳しいわけでもない。
あくまで一ファンの個人の感想であり、小沢健二(以下オザケン)の真意と違うのでは? という批判はご容赦いただきたい。

今年19年ぶりにシングルを発表したこと、音楽活動を本格化したことが告げられる。
そういえば、9月に新曲『フクロウの声が聞こえる』をリリース、SEKAI NO OWARIとミュージックステーション(テレ朝金20:00-)に出演して瞠目させられた。

時代の寵児となっていたとき1998年に日本での音楽活動を停止、ニューヨークに活動拠点を移し、結婚、2児の父親にもなっていた。
私は、彼のホームページをときおり覗いていた。
今回のSONGSは先に書いた通り、オザケンのプロデュースとのことで通例では一般の観客の前でパフォーマンスするが、オザケンの家族と友人を招待してのライブとのこと。
オザケンが、一番大切な人たちの前で一番伝えたいことをパーフォマンスした内容が、NHKで放送されたという贅沢な時間なのだった。

最初のモノローグは「文化が、町をつくる」。
ご自分の奥様はアメリカ人とイギリス人のハーフなので、お子様はアメリカ人と日本人のハーフ(ダブル)。そのお子さんが自動販売機を不思議なロボットとして受け止めている。
お金の入っているロボットが国中に立っていて、それを盗む人がいない、日本の町。それを作っているのが人々。

「人々の驚くべき文化が驚くべき町を、都市をつくっている」

彼の考えは、子どもを持ったことで大きく影響を受けたと見受けられる。何も持たずに生まれ、命だけの力で生きている塊。生き物としての食べること、眠ることのシンプルな意味、価値感。
アメリカの銃社会から、お金の入った機械が平気で放置されている驚くべき日本へ。
その日本の価値を再認識し、それを私たちにフィードバックしてくれる「スーパーヒーロー」として日本に帰って来てくれたのではないか。

1曲目:シナモン(都市と家庭)(2017)
オザケンが昔から大切にしているテーマと、今のテーマの融合をみた。

モノローグ2:「三割増し」〜自分の過去について
 SONGS制作チームから、「なぜ芸能界から姿を消したのか」について語ってほしいというリクエストに、モノローグで答えた。
 一般に人が自分をよくみせようとする真理。SNS映えを意識した行動。自分の過去を三割増しで語ってしまうことへの危惧。 現在というものに、過去の姿を一瞬で見せる力がある、と語ったうえで、「現在の自分の眼にみえるものを報告した方がいい」と考えたと語る。それが過去の自分を説明する、と。

2曲目:天使たちのシーン(1993)feat.(Tp)タブゾンビ
3曲目:「愛し愛されて生きるのさ」(1994)feat.(Tp)タブゾンビ

 この曲が演奏された意味について、これは今と変わらない価値観として選ばれたのではないかと思った。
 悩めるときに未来へすすめる魔法は愛し愛されることだし、家族や友人とうつくしい浜辺を歩くことが大事だし、突然深夜に会いたい思って走って会いにいってしまう人が必要なんだよ。

モノローグ3:身近で本当の話がしたい
 日本人が何年も英語を勉強しているのに、英語がしゃべれないというテーマから、「間違える力」の必要性を説く。今の日本に足りないものをじっと外から見ていたオザケン。

4曲目:流動体について(2017)
 ああ、そうだったんだ。そうだったんだね。モノローグを聞いて、なぜこの曲を書いたかわかったよ。
一番大事なフレーズだから特異なメロディにしたんだね。
セットのしかけの最高なところは、ぜひ再放送で?!

オザケンは、言葉で都市を、人を文化を作りたいんだ。
日常の人たちの良心を信じて大切にして、それがそういうものを作っていくってことを伝えたいんじゃないかと。

モノローグ5:なんでもない日本と(いい意味で)とんでもない日本。
 ダブルにみえる東京を昔は見えなかったこと、今は見えるその姿を音楽やことばで綴りたいという宣言。
 素晴らしいメッセージをありがとう。

過去の旅も、結婚も、子育ても、アメリカでの生活もぜんぶ重ねて融合して、今の道を作ってきたんだね。
さあ、一緒に歩こうか。
オザケンのいる東京を。  


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