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2017/09/29

第27回五行歌全国大会inびわ湖の私の歌と個人賞

先日の9月24日(日)に年1回の五行歌全国大会が大津で開催されました。
お天気もよく、美しい琵琶湖を目の前にした琵琶湖ホテルで約200名の皆様とご一緒しました。
関西の皆様の緻密な計画とご尽力をいただき、盛況のうちに幕を閉じることができました。
ありがとうございました。

私の提出歌はこれでした。72番。
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半世紀も生きていれば、人生山あり谷あり。そしてその旅はもう少し続くと思われます。
ディズニーランドのアトラクションって、初めて乗るときって先に何があるかわからないですよね。
ドキドキしながら進んで、驚いたり笑ったり。
なんかあれみたいな感じだな、ってふと思ったのです。
ぐんぐん進んでいって、終わりになると「あー楽しかったぁ!」って降りる。
ああだったらいいなと。

「降りたとき」は、人生の最期のときです。最期に「楽しかった!」って終えられるよう、今を大切にしたい、という歌でした。

そして私が個人賞を進呈したのは、かおるさんの歌でした。145番。
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このお歌は、大会作品集203首の中で、ゆうさんのご友人のように(笑)「光ってみえた」お歌でした。
すべてが暗喩で謎めいたお歌というのは、とかく長くなりがち。
でもこの歌は、驚くほど簡潔です。
読んだときに、「あーなんて素敵な歌なんだろう!」 としびれました。

迷路は、自分の人生、生き方の選択ととりました。
迷いながらもぐるぐる歩いていく。時は進む。
椅子を置いたのは、おそらく過去の自分。
過去にも迷い込んだ道なのかもしれません。
その時、苦しんだあげく、気がついたこと。「私は私」なんだと。
いつか迷った自分のために、「まあ、腰かけなよ」と声をかけて、手紙を読ませる。

夢の中のことのようですが、迷いあぐねる人にはとてもイメージが広がります。
何度も手紙を読み直し、ちょっと椅子で休んだら、また進める。
そんな主人公の姿が見えました。

物語に連れて行ってくれた素晴らしい作品でした。
ちなみにこの歌を個人賞に選んだのは、私と紫野恵さん2人でした。
なんかそれも嬉しかったので、書き添えておきます。

作者のかおるさんは、ガラス絵作家。いろんなものを作ったり描いたり想像力豊かなひと。
創作活動の中で、いろんな壁にぶつかりながら歩まれているのだと思います。
かおるさんの歌だとわかって、ものすごくうれしかったです。

ほかに最高点3点つけたうたは、22番柳沢由美子さん、54番池原弘子さん、56番永田和美さん(全体3席)、66番秋葉澪さん、92番水源純さん、94番酒井映子さん、114番菜の花さんでした。
事前採点の後、同じ歌を小歌会で見るとまた違う良さを感じたりして。面白いですね。

2日目の研究会もすばらしかったのですが、今回はこのへんで。

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2017/09/18

【装丁】 高原郁子五行歌集 『雅』 (そらまめ文庫)

そらまめ文庫第二弾、高原郁子(こうげん・かぐわし)氏の『雅』。
高原氏は、五行歌を始めてから一年足らずなのだが、読売新聞さいたま版の五行歌欄に精力的に投稿を続け、五行歌の会にも入会、歌会参加、そして「そらまめ文庫」にて出版となった。
こちらの『雅』は、そらまめ文庫のスタンダートな装丁になっているので、それも合わせて紹介したい。

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カバー写真は、素材サイトから購入したもの。高原氏が撮影した、満濃池の写真を参考に、同じアングルのものを探して採用した。スリップも雰囲気に合わせて、藤色に。

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上が表紙。文庫らしい飽きのこないシンプルなデザインにしている。(そらまめ文庫規定デザイン)
下がカバー。表の写真は、好みのものを選べる。タイトルやイメージに合わせて、フォントを選んだ。
帯なしが規定なので、単調にならないよう、いくつか色で構成している。
うすい黄緑は、そらまめの色をイメージしている。
そらまめ文庫のロゴをカバー袖にいれている。

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こちらが扉。基本的には規定のデザインだが、フォントなどはイメージに合ったものにしている。

そらまめ文庫は、著者の頭文字+著者コード+著者通番の番号をつけている。
こうげん氏なので、「こ」、頭文字「こ」の最初の人なので「1」、高原郁子氏の最初の一冊なので「1」
こ1-1、となる。
高原郁子氏がもし、2冊目のそらまめ文庫を出したとすると、「こ1-2」となる。
こうしてそらまめ文庫シリーズが充実したおりには、著者名ごとに著作がずらりと並ぶことを夢見ている。


【そらまめ文庫 こ1-1】
書 名◇五行歌集『雅』
著 者◇高原郁子(こうげん・かぐわし)
新書判・並製・104頁
定価800円+税
発行日:2017年9月23日
ISBN978-4-88208-149-4


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【装丁】 水源カエデ 『一ケ月反抗期 -14歳の五行歌集』(そらまめ文庫)

AQ五行歌会でも仲間の水源(みなもと)カエデくんが、ついに五行歌集を出した!
市井社で新しくはじまった、「そらまめ文庫」第一弾である。
「そらまめ文庫」とは、新書サイズのコンパクトな装丁で、規定パターン+カスタマイズとなる。
今回のカエデくんの歌集は、カスタマイズとして跋文つき、帯つき、としたので、規定パターンも少々変えてデザインした。
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今回の装丁については、著者のカエデくんの要望とアイディアが生きている。
カバー写真も、自ら撮影したものだし、「反抗期」のフォントも、自分でアプリで見つけてきた。シミュレーションしながら、細かく相談して、そらまめ文庫らしさもいれつつ、インパクトのある装丁になった。

この歌集を読んだときに、これは彼の言揚げだと思った。
鮮やかに翻る旗のようだと。
そこでサブタイトルの「14歳の五行歌集」を真っ赤な旗にして掲げた。
帯は赤がいい、歌を入れたい、と言ったのもカエデくんだった。
帯に入れる歌は、この歌集やカエデくんの背景がわかる一首が選ばれた。
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表紙は、そらまめ文庫オリジナル(規定)デザイン。

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扉、こちらもそらまめ文庫デザイン。
カワイイサインをいただいたので、サイン入り画像。

この歌集は、彼に起きたこと、激しい感情、悩みが真っ正直に書かれている。
昨今の14歳の少年の活躍、4に1つの離婚家庭があるとさえ言われる現代社会においても、大変注目をあびる一冊となった。
ぜひ手に取っていただきたい。

【そらまめ文庫 み1-1】
書 名◇『一ヶ月反抗期』
    - 14歳の五行歌集 -
著 者◇水源カエデ(みなもと・かえで)
新書判・並製・96頁
定価800円+税
発行日:2017年9月17日
ISBN978-4-88208-148-7

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2017/09/15

【写真展】荒木経惟 「センチメンタルな旅 1971-2017-」

東京都写真美術館、総合開館20周年記念の展示会は、荒木経惟の妻「陽子」をテーマにした作品展だった。
荒木経惟、通称アラーキーの写真は、いろんなテーマがあるがやはりヌード写真の印象が強い。
女の裸に対する男の欲情は、女のわたしにはわからないんだろうなと思う。

でも、アラーキーの妻陽子さんの写真は昔から好きだった。陽子さんが早逝したことも、大変うつくしい人だったことも知っていた。今回、陽子さんの展示だったから、これはいかねば、と思った。

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最初のプロローグと、センチメンタルな旅のコーナーは、二人が恋人だったころから新婚旅行の写真によって綴られた写真群。
若き日の陽子さんが、私の印象をくつがえすようなまなざしで驚く。
なんというか、まるで捨て猫みたいなのだ。
あんたを信じていいの? あたしを好きなの? とカメラを睨み付けてくる。
これが恋人同士の、妻の写真なんだろうか。
それくらい、陽子さんはびりびりにとがっていた。

陽子のメモワールは、1960年代から80年代の一番輝いている陽子氏のポートレイトがひしめく。
うつくしくてエロチックで魅力的だ。

一番の圧巻は、静かな「冬の旅」という陽子さんの最後の誕生日、1989年5月17日から、闘病生活から亡くなる1990年1月27日、葬儀後の2月1日までの日付入りの写真たち。
仲間たちとおどけた誕生日パーティーに死の影はない。
しだいに病室らしい写真、握り合う手、空、と日付が進んでいく。
それが、怖くて切なくて、観ていて、体に鳥肌と震えがきた。
まるで抽象画のように、写真は一部しか映してないのに、心が伝わる。

風景の一枚が、限りなく悲しくて。

納棺され、あふれんばかりの花の中瞑目する陽子さんは、若くうつくしすぎた。
葬儀を終えた夫の様子、誰もいない空間。
嗚咽をかみころした。
写真で、こんなに感情を揺さぶられたのは、初めてかもしれない。

遺作空2、はアラーキー自らに忍び寄る死の影を表現したものという。
モノクロの空の写真に、鮮やかなアクリル絵の具が踊る。
色彩も形も、みごとな心象風景となって、手法の斬新さもあり、とても印象的だった。素晴らしかった。
心の揺らぎ、葛藤、屈折が、ぐいぐいとした線に託されていて。

三千空は、自宅のバルコニーから撮影された空の写真をスライドショーとして映像で流していた。
同じ屋根や同じ木々のシルエットをフレームにして、空はさまざまな色や形を描く。
ひとつところにいても、こんなに素晴らしいものに出会える。
あなたは、気がついているのですか? と問われている気がした。
同時に最愛の妻を失い、どこへも行けずひたすら空を眺めているアラーキーの姿も目に浮かぶよう。
空の変化が、彼を再生させたのだろうか。

家族の一員の愛猫、チロのポラロイド写真200点。
ほとんどが、チロの顔のアップ。顔から、いろんな表情をくみ取ろうとしたのかな。
またチロはなんとなく、陽子さんにも似ているようだ。
やせ細った体といい、媚びない表情といい。

そのほか、古き昭和の東京の風景が切り取られた写真もよかった。
生活のにじみでているもの、古びているもの、人間の臭いがするものがちゃんとすくいあげられている。

今は誰でも気軽に写真を撮ってアップできる時代。
しかも簡単に加工までできる。

だけど、ここで見たアラーキーの写真は、ネットで見かけるいわゆる「見栄えのいい」写真とは全く異なるものだった。
もっと生々しくて、人間くさくて、温かいものだった。
そして写真の中から、多くの心象風景を語り掛けてくるものだったんだ。
わが愛、陽子。
愛の記録だった。

恵比寿ガーデンプレイス内 東京都写真美術館
9月24日(日)まで。
めちゃくちゃおすすめです。

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