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2016/07/09

物語を食べて育った

小学生のとき、ヒノキちゃんという友だちがいた。
ある日その子の家に遊びに行ったとき、「うちのタンスの裏に秘密の扉があるんだよ。見せてあげる」
と言われた。
タンスの中の服をかき分けて、ヒノキちゃんは奥を調べた。
「あれ? 今日は開かないや」
私はちょっとがっかりして、なんだか少しホッとした。
何処かに行っちゃうかもしれないのが怖かったのだ。
家に帰ってから、うちのタンスの奥も調べてみたのは言うまでもない。

わかる人にはわかる。ヒノキちゃんは、「ナルニア国」の住人だったに違いない。

本を読んでいると、本の中の世界が頭の中でぐんぐん広がって、主人公と一緒に旅している気分になる。
登場人物が大好きになったり、悪役を憎んだり。
こんな風に入り込める作品は限られている。

例えば『指輪物語』、『はてしのない物語』、ハリーポッターシリーズ、『ダレン・シャン』『モモ』。
児童文学ばっかりになっちゃったが、今でもタンスの裏の鍵は持っているつもりだ。

誰かの作ったバーチャルを見せられてるんじゃなくて。
自分の想像力が作った世界への鍵。

「精霊の守り人展」に行って、いろいろ思い出して、あらためて本を読み返したり、ドラマを見たり。
困難にどう主人公が立ち向かうのか、息をとめてわくわくするのは、心の栄養になっていたと思う。
うん、物語を食べて育ったんだ。

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