物語を食べて育った
小学生のとき、ヒノキちゃんという友だちがいた。
ある日その子の家に遊びに行ったとき、「うちのタンスの裏に秘密の扉があるんだよ。見せてあげる」
と言われた。
タンスの中の服をかき分けて、ヒノキちゃんは奥を調べた。
「あれ? 今日は開かないや」
私はちょっとがっかりして、なんだか少しホッとした。
何処かに行っちゃうかもしれないのが怖かったのだ。
家に帰ってから、うちのタンスの奥も調べてみたのは言うまでもない。
わかる人にはわかる。ヒノキちゃんは、「ナルニア国」の住人だったに違いない。
本を読んでいると、本の中の世界が頭の中でぐんぐん広がって、主人公と一緒に旅している気分になる。
登場人物が大好きになったり、悪役を憎んだり。
こんな風に入り込める作品は限られている。
例えば『指輪物語』、『はてしのない物語』、ハリーポッターシリーズ、『ダレン・シャン』『モモ』。
児童文学ばっかりになっちゃったが、今でもタンスの裏の鍵は持っているつもりだ。
誰かの作ったバーチャルを見せられてるんじゃなくて。
自分の想像力が作った世界への鍵。
「精霊の守り人展」に行って、いろいろ思い出して、あらためて本を読み返したり、ドラマを見たり。
困難にどう主人公が立ち向かうのか、息をとめてわくわくするのは、心の栄養になっていたと思う。
うん、物語を食べて育ったんだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント