« 2016年6月 | トップページ | 2016年8月 »

2016/07/26

【装丁】福田雅子五行歌集『馬ってね…』

今月の市井社新刊として、埼玉在住の福田雅子さんが五行歌集を発行され、装丁を担当しました。
2013年に表紙歌、

馬と私が
空気の一玉となって
ふわっと弾む
体験乗馬の
まさかの一瞬

この「空気の一玉」で体感を瞬時に人に教えてしまう、見事な表現を見せてくれた福田さん。
今回の歌集も、馬が主軸のテーマになっています。

Rimg2874

馬の後ろ側、なにやらもの思いしてるようなちぎり絵は、著者によるもの。
カバー裏のおしりと合わせ、これをカバーデザインに使うことに。
バックは薄オレンジという希望をいただいたのですが、茶とオレンジだけでは少し色調が単調な気がして、空と草を追加してみました。
カバーの袖を広げると、雲も馬の形になっているんです。馬は馬の夢をみるのかなぁ? と想像しながら。

Rimg2875

帯は不要とのリクエストで、スペースのびのびのレイアウトが可能になりました。
カバー下の表紙は、ポクポク歩いている足跡がわりの蹄鉄。
馬の蹄鉄は「幸運のお守り」とされていて、上が開いているU字型に幸運を受けとめると言われています。
お守りをアクセントにあちこちに散りばめています。

Rimg2876

見返し紙は、芝生の緑に合わせてみました。
扉は、特色一色。
中にも入っていますが、この馬も、著者の切り絵を使っています。
五行歌の会に入会後、次々と新鮮な表現で周りを驚かせた作者の歌集です。
一首一首が鮮やかな印象を残すことに驚かれるでしょう。
ぜひご覧くださいませ。


【書誌情報】
書 名 ◇ 『馬ってね・・・』
著 者 ◇ 福田雅子
価 格 ◇ ¥1,200+ (税)

四六判・並製・204頁
本体1,200円(税別)
発行日 2016年7月27日
ISBN ISBN978-4-88208-142-5

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/09

物語を食べて育った

小学生のとき、ヒノキちゃんという友だちがいた。
ある日その子の家に遊びに行ったとき、「うちのタンスの裏に秘密の扉があるんだよ。見せてあげる」
と言われた。
タンスの中の服をかき分けて、ヒノキちゃんは奥を調べた。
「あれ? 今日は開かないや」
私はちょっとがっかりして、なんだか少しホッとした。
何処かに行っちゃうかもしれないのが怖かったのだ。
家に帰ってから、うちのタンスの奥も調べてみたのは言うまでもない。

わかる人にはわかる。ヒノキちゃんは、「ナルニア国」の住人だったに違いない。

本を読んでいると、本の中の世界が頭の中でぐんぐん広がって、主人公と一緒に旅している気分になる。
登場人物が大好きになったり、悪役を憎んだり。
こんな風に入り込める作品は限られている。

例えば『指輪物語』、『はてしのない物語』、ハリーポッターシリーズ、『ダレン・シャン』『モモ』。
児童文学ばっかりになっちゃったが、今でもタンスの裏の鍵は持っているつもりだ。

誰かの作ったバーチャルを見せられてるんじゃなくて。
自分の想像力が作った世界への鍵。

「精霊の守り人展」に行って、いろいろ思い出して、あらためて本を読み返したり、ドラマを見たり。
困難にどう主人公が立ち向かうのか、息をとめてわくわくするのは、心の栄養になっていたと思う。
うん、物語を食べて育ったんだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/02

上橋菜穂子と〈精霊の守り人〉展

世田谷文学館にて開催中の上橋菜穂子と〈精霊の守り人〉展に行ってきました!
Simg_4143
会期は7月3日までなのですべりこみセーフ。行きたい方は明日まで!
写真は一部OKマークのところだけ撮れました。

展示は、守り人シリーズの作品紹介を中心に、上橋先生の才能を育てたバックグラウンドの紹介、、二木真希子氏、佐竹美保氏の挿絵の原画も展示されていました。
(会場の最後に、二木真希子氏は5月にご逝去されたと書いてあった。ご冥福をお祈りします。)

NHKで3年かけて放送するドラマ「精霊の守り人」から、出演者がきた衣装も展示されていました。
一つ一つ作品イメージに合わせ凝った作りです。
Simg_4144
女用心棒、バルサ役、綾瀬はるかさんの衣装。

Simg_4145
チャグム、帝の子ながら、ある秘密から命を狙われる。町の子変装の衣装と、宮廷での衣装。ちっちゃい。

帝の住まいの装飾マークなどもオリジナルで作ったそうで、その製作ノートも興味深かったです。

上橋先生ご自身による登場人物のイメージのイラスト(!)も何点かありました。イラストレーターに人物イメージを伝えるため書いたものらしいです。きけばお父様が洋画家だったというので、絵がうまいのもうなずけますな。
大学時代のフィールドワークの資料から創作についてのインタビューのVTRや、ドラマで使われた衣装や絵コンテなど。
おじいさまが、柔術の達人で警護のお仕事(守り人!)をされていたこと、おばあさまが語り上手で、おじいさまの武勇伝を聞いたこと、大学でアボリジニのフィールドワークをされていたこと。
いろんな素地、経験、学問などから、あの物語が生まれたのだなぁと感心した。

インタビューの中で、「私はファンタジーを書いてるのではない」と語られていてはっとした。
「何でもありじゃないんです」
つまり、想像力は使うんだけど、リアリティーの延長での想像。
精霊の守り人の主人公は、女用心棒バルサ。
それが現実的にありなのか、柔術の道場に取材に行き、そこにうつくしい達人が居て得心が行ったという。
バルサの武器が、短槍なのも女性が使いやすいリアリティがある。
弁慶の体格なら、大長刀でよいが、細身のバルサには似合わない。そういう、細かな設定が綿密な思考と想像力によって組み立てられていたのだった。

そのリアリティが、読むものをどっぷり世界に惹きこんでしまうのだろう。
上橋先生の創作の秘密をちょっとのぞけた気がして、とても興味深い展示であった。

展示のチケットは、バングルになっている。つけて回っていると、映像のブースがあり、そこで別の文様が浮かび上がるしかけ。カッコイイ!
Photo

昔読んだ原作をまた読み返したくなった。ドラマも楽しみ!
創作についての上橋先生の矜持は、素晴らしいものだなと大いに刺激を受けた。
これからもご活躍を!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年6月 | トップページ | 2016年8月 »