« 2015年9月 | トップページ | 2015年11月 »

2015/10/02

【装丁】 『硝子離宮』 南野薔子五行歌集

九州の歌人、南野薔子(みなみの・しょうこ)さんの五行歌集の装丁を担当した。

南野さんは、華奢な透明感のある、まさに文学少女の風情の方だ。
その優しげな外面に対して、内面は、厳しくストイックで、自己分析ができていて、狂おしく熱量もあることをこの歌集から感じ取った。
こんなにもストイックな世界、黒白モノトーン、それしかいらない。
スリップも薄い水色でも、と思う邪なきもちを抑え、グレーで徹底統一。
本人希望の、「無機質な感じにしたい」というテーマに沿って装丁のイメージを構成した。

Rimg2650
本書は、すっきり縦長の新書判。
帯はなし。
カバーは、モノトーンのラインだけの構成。
「窓枠のイメージを使いたい」というリクエストから、窓枠はイラストレーターで描画した。
グレーの濃淡で軽く立体感を出した。

窓枠下の柔らかなラインは、波のイメージ。
窓枠上は、「硝子」の硬質さやきらめき感を醸し出すイメージを選んだ。

カバー裏側の閉じた窓も、南野さんの希望から。こちらも描画。


表紙は、カバーの窓枠ラインを重ねあわせ、鳥かごをぶら下げる。
鳥かごは、フリー素材のシルエット。きれいなラインのものが見つかってよかった。
「空の鳥かご」も、南野さんのリクエスト。
Rimg2651

南野さんの歌を通して読ませていただき、浮かんできたモチーフの幾つかの中に、螺子、歯車、があった。
無機質感を出すために、歯車を配置してみた。
タイトルのローマ字フォントは、硝子のストローのような透明な表現を使った。

この硝子離宮は、水面に浮かんでいる、と想像している。
舟に乗って、そこへたどり着く。舟に乗れるものは、限られている。
あなたは、この舟に乗れるでしょうか。
Rimg2653_2

【書誌情報】
書 名 ◇ 『硝子離宮』
著 者 ◇ 南野薔子
価 格 ◇ ¥ 700+ (税)
新書判・並製・168頁
本体700円(税別)
発行日 2015年9月28日
ISBN ISBN978-4-88208-137-1

| | コメント (2) | トラックバック (0)

あの日のこと(2)

8月24日(月)
病院へついてベッドに駆け寄ると、父はかすかに意識があった。呼吸器をまたつけていたが、少し落ち着いてる様子。先日と違って、話しかけても、言葉を返すことはできなくなっていた。
手をにぎるが、握り返す力も弱い。
看護師さんも、連絡したときより少しいいです、と。
今晩どうするか話し合い、安定してること、これが何日も続くかもしれないこと、など泊まろうかと思いながらも姉や母に促され、帰宅した。

8月25日(火)
朝早く目覚めたら、6時に病院から電話があった。「血圧が測れないほど低いです」
またどうするか、と聞かれたので、とりあえず私だけでも行く旨、連絡する。
とはいいながら、いつものように家族を送り出してから、と思って中野駅についた時に、また病院から電話がある。
看護師「今どちらですか?」
私「まだ中野なんです」
看護師「それだと、間に合わないかもしれません」

6時に電話をくれたとき、すぐ飛び出していればよかったのに。とりあえず、とにかく向かいます、と伝える。

駅からタクシーで駆けつけたが、父はもう息をひきとっていた。
ほんの20分前のことだった。20分が間に合わなかった。
顔をなでながら、「ひとりで死なせてごめんね」と何度も謝った。涙が止まらなかった。
とりあえず、いろんなところへ連絡し、葬儀屋さんに迎えにきてもらう手配をする。
死に目には間に合わなかったけど、遺体と一緒に帰ってこれたのはよかった。

母がもし、どこか施設に入ってもらうとしても、もうこんな遠くには入れないようにしよう、と思った。
でも、私だけが死に際に間に合うという「ずる」ができなかったのも、公平でよかったかもしれない。
それに間に合わない私を父は責めることはないだろう。
きっと笑って許してくれるんだろう。
それほどに優しい父だった。

父にもらったたくさんの思い出は、ずっと私の芯となって支えてくれている。
体はいなくなっても、私の中に父はいる。
ただただ、ありがとう、の言葉しかでてこない。
生まれ変わってもお父さんの子で生まれたい。

ありがとう。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2015年9月 | トップページ | 2015年11月 »