【装丁】 蛇夢五行歌集『それって食えるのか』
職場の同僚でもあり、歌会仲間でもある蛇夢(じゃむ)さんが、歌集を作られた。
ここのところ、市井社で出している新書サイズの、シンプルなタイプ。
カバーに、切り紙の文字(切り字)を使いたいと提供してくれて、レイアウトはまかされた。
切り字は、ご友人の三千代さんの作品。
蛇夢さんは、9月5日から8日の文京シビックセンター五行歌作品展の色紙作品にも、三千代さんの切り紙を使われていた。
その作品が、タイトルともマッチしていたので、歌の部分だけカバー袖に画像を入れた。
当初、このユニークなタイトルがセリフだったことから、吹き出しのイメージでカバーデザインを作っていたのだが、三千代さんの切り紙の林檎を、私がポイントとして使いたいと申し出たところ、蛇夢さんから吹き出しのラインがヘビに見えてきた。蛇にしてみたい、と提案を頂く。
いくつかのモチーフが伏線でつながっていくおもしろさ。ラインを探りながら、蛇を描いてみた。
切り字がないものは、フォントも使っているが、雰囲気の合うものを並べてしっくりさせた。
帯がないのですみずみまでのびのびスペースを使えるのは助かる。切り字は小さくしてしまうと良さが死んでしまうからだ。
カバー紙は、地模様「うろこ」で白蛇を表現。
くるっと曲線の舌は矢のように、蛇夢を背後から狙っている。(暗示する歌が中にあるのでみつけてね)
表紙は、この白カバー新書シリーズを踏襲して、透けて見える計算。
カバーと合わせて、アルファベットが並ぶ。語学が堪能な蛇夢さんを表現。
後ろは、三千代さんの林檎を影絵風に重ねてレイアウト。
さて、白雪姫かアダムとイブか。
本扉も蛇夢さんと相談し、ここにも蛇を入れたい! とのご希望で、とことんヘビーに?!
使えるのは墨一色だけど、グラデーションをかけて少し立体的な表現にしてみた。
デザインをしてると、あれこれやりたくなって、盛り盛りして後で、やり過ぎかと削っていくことが多いのだけど、蛇夢さんは、盛りをおもしろがってくれる方だったので、思う存分盛りこめて、満足でした。
めくっていく楽しみ、あれこれの伏線、歌との共鳴を楽しんでいただけたらうれしい。
蛇夢さんの歌は、少し怖くて、幻想的で、鋭く本質を炙りだす。
でも、その刃が他人にだけ向かうことはなくて、必ず我が身へも容赦なく振りかざすから、その切れ味に溜飲が下がる思いがするというか、不思議なカルタシスを味わえる。
タイトルの『それって食えるのか』は、この歌集全体を言ってるように思えてくる。「この毒リンゴみたいな歌集を食えるのか?」 と、試されているみたい。フフフと笑いながら。
ぜひ多くの読者に、味わっていただきたいものです。
わたくしは、大変おいしくいただきました。フフフ。
【書誌データ】
蛇 夢(じゃむ)著 五行歌集『それって食えるのか』
新書判・並製・94頁
本体700円(税別)
発行日 2013年10月17日
ISBN ISBN978-4-88208-124-1
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