【読書ノート】原田マハ 『楽園のカンヴァス』
第25会山本周五郎賞受賞。帯には「それは真っ赤な贋作か、至高の名品か? 手に汗にぎる絵画鑑定ミステリー、若き二人の研究者の鑑定対決。リミットは7日間・・・・!」
ミステリ好き、絵画好きのわたしにとっては魅力的なキャッチ。カバー画はアンリ・ルソーの「夢」。
まさにこの「夢」とそっくりなもう一枚の「夢をみた」という作品の鑑定をめぐるいろんな人間模様と、ルソーへの愛が凝縮された傑作だった。
日本に二枚しかないエル・グレコの一枚を持っている大原美術館の監視員早川織絵が、MoMAのチーフ・キュレーターティム・ブラウンに「夢」を貸し出す交渉の窓口に指名されたところから物語が始まる。
少し前に見てきたばかりのエル・グレコ・・・MoMAはまだ行ったことがないけれどいつか行きたい憧れの美術館・・・。
ストーリーがすすむにつれ、読み手はパリの街角を散策し、若く貧しい画家たちのアトリエをのぞきこんでいるようにひきこまれていく。真実を語るのは誰か、絵画に対する情熱、正義、守るべきもの。
鑑定を依頼されたティムと織絵はさまざまな思惑に巻き込まれながらも、まっすぐに自分の信念の情熱を守り抜く。
読んでいて涙が止まらなくなった。
胸をこみあげるもの、ありったけの情熱を注ぐということ、傑作が生まれる奇跡のようなシュチュエーション。
体が震えた。
ほんとにありがとう。
また生涯忘れられない傑作に出会ってしまった。
人のこんなふうに何かを愛して、夢中になって、どうかなってしまうような状態っていったいなんていったらいいの? 愛なのか、情熱なのか、なにをあてはめても物足りなくて、叫びたい衝動。
たからもの。見えないたからもの。
何か。
胸のあたりからこみあげてくる何か。
とにかく素晴らしい本です! アート、ルソーやピカソに興味がある人はたぶんノックアウトされるでしょう。
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