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2013/05/08

【装丁】 『俺はこわれちゃったんだよ』 河田日出子著

河田日出子さんの介護の本ができあがった。

Kaigocover

八年間を克明に順を追って書き綴ったつもりです。アルツハイマーというものが、こういうふうに進行してゆくのだと判って頂けましたら幸いです。 (著者まえがきより)

若いころより詩作され、詩集のほか、長編、短編と著作がある河田日出子さんが8年間の在宅介護の最中に記録した、介護日記である。
まずタイトルを決める際、「~介護日記」という案が出されたが、私はご主人から発せられた「俺はこわれちゃったんだよ」を推した。この言葉を聞いたとき、なんて哀しい言葉なんだろうと思った。
壊れてゆく自分が自覚される恐怖、とまどい、最愛の妻にそれを告白しなければならない辛さ、いろんな感情が渦巻くような独白だと感じた。何より、本のタイトルとしてのインパクトが強烈であった。
著者や家族の方の逡巡があったが、このタイトルでいけることになった。

どういう方が手に取ってくださるかと想像すれば、やはり介護にかかわっている方かもしれないと思う。
忙しい中でも読みやすいよう、並製のソフトな製本で、カバーは水濡れや汚れに強いグロスPP加工、本文用紙は薄手のものを選んだ。
本文の編集も、文字を大き目の組みとし、小見出しや月の表示で読みやすさを配慮したものになっている。

こちらの本は、リアルなノンフィクションであったため、イラストやきれいな絵というより、リアルな写真を使いたいと提案した。著者とも相談したうえ、故人が愛用していた万年筆とメガネをお借りして、私が写真を撮った。
ご主人の知的なイメージと、河田さんの文筆家のイメージを重ねてカバーデザインした。
「こわれちゃったんだよ」という長さの文字は、ラフな雰囲気のフォントにした。
フォントを傾けたり、文字通り一部壊そうかとも思ったが、ワイルドになりすぎると河田さんのイメージから離れてしまうかもしれないと、シンプルに抑える。

アルツハイマーという病名がわかったほうがいい、ということで、帯に病名の入った歌を入れた。
また本書のキーワード、在宅介護、五行歌を入れた副題をつけることにした。
歌集ではないので、草壁先生の跋は無いが、帯文を書かれることになった。
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袖(カバー折り返し部分)に、まえがきの一文を抜粋。タイトルの言葉が出た経緯や、著者のメッセージをさっと手にとった時にわかりやすいようにと意図した。
見返しは、マスタード色。黄色より少々渋め。著者の河田さんが黄色がお好きと聞き、この色に。
カバーの重さ(深刻さ)を励ますような明るさを添えられて、私だったらなかなか選べない色だったので、とてもよかったと思った。
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扉と表紙はごくシンプルにまとめた。
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文章の間に入っている五行歌は、ストレートに思いを伝えてくる。
この本を読ませていただくと、介護の大変さ、変わってゆく夫を見る戸惑い切なさはもちろんだが、根底を支え続けるのが家族の愛だとひしひしと感じる。夫を看取るという重責を河田さんはみごとに果たされた。
誰しも真似ができることではない。
でも、在宅介護に迷っている人の道しるべになるだろう。その先をどう進むかは、それぞれが決めればよいと思う。

【書誌データ】
著者:河田日出子
書名: 『俺はこわれちゃったんだよ -五行歌と文章で綴る在宅介護日記』
市井社刊

四六判・並製・276頁
本体1,200円(税別)
発行日 2013年4月28日
ISBN ISBN978-4-88208-122-7


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