【装丁】中邨安榮子五行歌集 『折づる』
京都在住の中邨安榮子さんは、昭和4年生まれ。まさに激動の昭和の歴史の生き証人である。
今回の歌集は、「昭和、平成の歴史を痛切に語っている」と草壁先生の跋(帯に掲載)にあるように、まさに戦争の記憶を語る歌たちが多く含まれる。
一方、安榮子さんは手先が器用で、折り紙細工を得意とし、いつも千代紙の楊枝入れや、しおりなど手作りされて皆さんに配ってる方だ。
歌集のタイトルも、『折づる』とお聞きし、深くうなづいた。折鶴は、誰かを思い、願いをこめながら折ることが多いからだ。誰かの病や傷の癒えるのを待ち、誰かの帰りを待ち、単なる折り紙を超えた存在は、日本人ならでは感性だろう。
安榮子さんは、編集部にいくつか折った鶴のサンプルとしおりを託された。
それは、正方形を半分の三角に切った紙を折ったもので、平らに貼りつけられるようなめずらしい形をしていた。
タイトルからも、この折鶴の造形を装丁に使わせていただくことにした。
実際の折り紙の写真を撮って、それを下絵がわりにして、パスを書き起してデザインのオブジェクトにした。
カバーや帯、などにあちこち顔をのぞかせている。
カバー紙は、折り紙の和紙のイメージで、しぼのある「きぬもみ 白」。
スピン(しおり)は朱赤。和のテイストで。
帯は、上の熨斗イメージからの一色をコーディネイト。
折り紙の地模様をつけるために、あちこち素材を探して、EPSパスの素材を提供してくれるサイトからお借りした。
(※商用利用なのでメールで問い合わせると、快諾してくださり、感謝。素晴らしいサイトです。)
粋屋 日本の伝統文様と伝統色
最初に提案したものは、和の配色で青緑を基調にしていたのだが、いざ見ていただくと、紫や赤がよかったとのこと(汗)。素材から探し直して、新しくデザインしたものを、無事OKしていただいた。
表紙。カバーの下なので淡く、シンプルに。赤か紫か悩んで薄紫にした。カバーがコントラストが強かったので、ここを控えめにバランスをとることに。
下は、カバー裏、袖だけが表。ここにも紫ツルさん。ツルのパターンはバリエーションがたくさんあったが、形が特にきれいなものを3種類、選んで入れた。
梅のEPSパス素材も、粋屋さんから。
化粧扉。見返し(画面右側の遊び紙)は、うす緑、フェザーワルツわかくさ。
飾り枠を、中国窓のようなイメージで、赤とスミの2色でと思っていて、デザインができたときは、「はっ!」とした。
なんだろう、自分でやっていてもぴたっと着地したときは、目が覚めるような思いがする。
今回私が一番気に入ってるのは、この扉なのだ。
紙も温かみのある、表紙と同じモデラトーン。(こちらもわずかにしぼがある)
こちらが正面、帯付き画像。
帯の歌をぜひ読んでほしい。
心の奥の奥まで沁みるような、静かなのにずっしりとした歌。
ぜひこの記憶の歌を、多くのみなさまに読んでいただきたいです。
【書誌データ】
五行歌集 『折づる』 中邨安榮子著
四六判・上製・176頁
本体1,200円(税別)
発行日 2013年4月25日
ISBN978-4-88208-121-0
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