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2013/04/17

【装丁】中邨安榮子五行歌集 『折づる』

京都在住の中邨安榮子さんは、昭和4年生まれ。まさに激動の昭和の歴史の生き証人である。
今回の歌集は、「昭和、平成の歴史を痛切に語っている」と草壁先生の跋(帯に掲載)にあるように、まさに戦争の記憶を語る歌たちが多く含まれる。
一方、安榮子さんは手先が器用で、折り紙細工を得意とし、いつも千代紙の楊枝入れや、しおりなど手作りされて皆さんに配ってる方だ。
歌集のタイトルも、『折づる』とお聞きし、深くうなづいた。折鶴は、誰かを思い、願いをこめながら折ることが多いからだ。誰かの病や傷の癒えるのを待ち、誰かの帰りを待ち、単なる折り紙を超えた存在は、日本人ならでは感性だろう。
安榮子さんは、編集部にいくつか折った鶴のサンプルとしおりを託された。
それは、正方形を半分の三角に切った紙を折ったもので、平らに貼りつけられるようなめずらしい形をしていた。
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タイトルからも、この折鶴の造形を装丁に使わせていただくことにした。
実際の折り紙の写真を撮って、それを下絵がわりにして、パスを書き起してデザインのオブジェクトにした。
カバーや帯、などにあちこち顔をのぞかせている。
カバー紙は、折り紙の和紙のイメージで、しぼのある「きぬもみ 白」。
スピン(しおり)は朱赤。和のテイストで。
帯は、上の熨斗イメージからの一色をコーディネイト。

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折り紙の地模様をつけるために、あちこち素材を探して、EPSパスの素材を提供してくれるサイトからお借りした。
(※商用利用なのでメールで問い合わせると、快諾してくださり、感謝。素晴らしいサイトです。)
粋屋 日本の伝統文様と伝統色 

最初に提案したものは、和の配色で青緑を基調にしていたのだが、いざ見ていただくと、紫や赤がよかったとのこと(汗)。素材から探し直して、新しくデザインしたものを、無事OKしていただいた。

表紙。カバーの下なので淡く、シンプルに。赤か紫か悩んで薄紫にした。カバーがコントラストが強かったので、ここを控えめにバランスをとることに。
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下は、カバー裏、袖だけが表。ここにも紫ツルさん。ツルのパターンはバリエーションがたくさんあったが、形が特にきれいなものを3種類、選んで入れた。
梅のEPSパス素材も、粋屋さんから。

化粧扉。見返し(画面右側の遊び紙)は、うす緑、フェザーワルツわかくさ。
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飾り枠を、中国窓のようなイメージで、赤とスミの2色でと思っていて、デザインができたときは、「はっ!」とした。
なんだろう、自分でやっていてもぴたっと着地したときは、目が覚めるような思いがする。
今回私が一番気に入ってるのは、この扉なのだ。
紙も温かみのある、表紙と同じモデラトーン。(こちらもわずかにしぼがある)

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こちらが正面、帯付き画像。
帯の歌をぜひ読んでほしい。
心の奥の奥まで沁みるような、静かなのにずっしりとした歌。
ぜひこの記憶の歌を、多くのみなさまに読んでいただきたいです。

【書誌データ】
五行歌集 『折づる』 中邨安榮子著

四六判・上製・176頁
本体1,200円(税別)
発行日 2013年4月25日
ISBN978-4-88208-121-0


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2013/04/03

肥後守(ひごのかみ)

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ひさしぶりに歌の話など。
3月のAQに出した私の歌。肥後守と書いて、「ひごのかみ」と読む。
簡単な折りたたみ式のナイフで、刃渡りは7cmくらいだろうか。
Wikipediaに紹介があるので、興味ある人はどうぞ→肥後守

わたしのは、安価なもので、これを、眉墨(やわらかいので)とか、デッサンの鉛筆を削るのに使っている。

たまたま歌会の前に、眉墨を削って取り出してみて、その刃の鋭さや、うつくしさをじっくり観察した。
人に向かって使おうものなら、なかなかの殺傷能力もありそう。
実際、子どもに使わせるのは危険として、学童用だったものも、筆箱から消えることになった。

これを見ていたときに、それでも昔の子どもたちは、道具として節度をもって使っていたわけだとしみじみ思った。
安易に人を傷つける若者が見受けられる昨今と比べて、精神性が高いのは、サムライの血なのかなぁ、とも思った。
「ならぬものはならぬ」みたいな。
相手の後ろ側から切りつけてはいけない、みたいな。

サムライがカタカナなのは、歌会でも気がついてくれた人がいたが、本物の侍ではないから。
二行目が説明なのは、肥後守を知らない人がいるかもしれないと思って入れた。

血、は魂のほうがよかったかな、とおもいつつ、ちょっと推敲するかも。
肥後守、ひごのかみという読みの響き、文字もいい。
歌会で、コメントを下さったみなさんが、みな読み間違えせず発音してくださったのが、すごくうれしかった。
いつか、この道具も使われなくなるんだろうか?
無くなってほしくない気持ちもこめて、歌で書き残してみた。

肥後守LOVE.

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