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2013/02/24

【おさんぽカメラ:後編】 林芙美子記念館 

さて、中井には、2つの記念館がある。
ひとつは佐伯祐三アトリエ記念館、もう一つは、林芙美子記念館。
「染の小道」の会場からは、林芙美子記念館がとても近かったので、帰りに寄ることにした。
この建物は、林芙美子が、昭和16年から昭和26年に亡くなるまで住んでいた家とのこと。
今日はイベントのおかげか、特別に150円の入場料が団体価格80円とお得!

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路地を上っていくと門があるが、こちらからは入れない。裏口から入る。
広い敷地にお庭と母屋、アトリエと赴きある日本家屋。

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茶の間。収納と装飾のバランスがきれい。芙美子の写真らしきものも。
奥には台所がちらっと見える。

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小間。石灯籠とか沓脱石の感じとか、いいなぁ。ひしゃくは竹製。

アトリエには展示室が。ときどき展示替えがあるそう。
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写真。

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直筆原稿。

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まあ、なんと自画像ですって。

室内から庭に出ると、緑や水に癒される。
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歩き疲れて、庭の隅のベンチに腰掛け、ぼーっと空を見上げると、そよそよ木や竹がそよいで、今がいつで、ここがどこであるかわからなくなる。
芙美子さんもこの庭が好きだったんだろうなと思いをはせる。

あとからの資料で、300坪の敷地がある、と知る。簡素で十分機能的な日本家屋。
そこに佇むだけで、心が深呼吸するような空間でした。

◆新宿区立 林芙美子記念館
 東京都新宿区中井2-20-1
 月曜日がお休み

客間よりも、茶の間と風呂と厠と台所に工夫とぜいを凝らしたこの家は、人に見せるための家ではなく、住み手の暮らしと安らぎを第一に考えた家でした~パンフレットより

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【おさんぽカメラ:前編】 染の小道

2月22日(金)~24日(日)まで、都営大江戸線・西部新宿線「中井」駅周辺で、「染の小道」というイベントがある。FBで知って、今年は予定が合って夫と二人で出かけた。

落合、中井地域は、昔妙正寺川で染物の水洗いをしたそうで、染物産業がいまでもいきづいてると聞く。
新宿区に住んで25年以上になるのに、中井へ行ったことがないというなんたる不覚。
ウェブサイトから地図をもらって、まずは駅そばの落合第五小学校体育館へ
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ここでは、職人さんによる反物(きものに仮縫いしたものと帯)の展示があった。写真撮影は禁止だったのだが、職人さんコーナーで写せたので、バックで雰囲気がわかるかな。
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型染め、江戸小紋、紅型、友禅、絞り、草木、などいろんな技法をつかった作品がずらり。デザインも伝統的というよりは、新しい感覚、洋風なものも多く目についた。限られたところでしか着られないものより、お出かけにどんどん着られるようなものの方が、手にとられやすいのかもしれない。

妙正寺川に、約100m反物を架けて展示された「川のギャラリー」はたくさんカメラを持った人に人気。
地元の職人さんだけじゃなくて、小学生や大学生の作品もあった。風にたなびくさまが、まさに風情がある。
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今回は中井の街じゅう全面協力?らしく、商店街やちょっとしたお店などに作家ののれんが飾られていて、それをみつけながらの散策も楽しい。
わたしも着物を着て行ったが、散策してるお客さんにも着物の方が多くてうれしい。
こちら、木の枝ぶりと、のれんの見事なコラボレーション!
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工房見学・染色体験ができるという「二葉苑」をのぞく。
こちらさすがに見事なのれん。
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見学は1日3回、私たちは14:00の回に並んだ。先着20名。
道具萌え~! 
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もわーっと湯気がでたのは室。反物の染めの工程で、生地を蒸すそう。左に反物をかけたラックがあるが、これを室の中に入れると言う。手前は洗いの細長いプール。昔は川で水洗いしてたが、いまはここで。

もうひとつ奥の部屋にすすむと、職人さんがいた。想像より若い方!
更紗の染めを実演してみせてくれた。柿渋でかためた和紙の型紙を使って、1色ずつ染めていく。
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少しでもずれたらおしまい。「失敗することもあるんですか?」との質問に、「失敗は多いです。失敗しないと上達しないから」と。手間暇かかる工程では、価格も上がり、売れなくて更紗だけでは食べていけないと。いろんな技法をしています、と厳しい現状も。

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壁にあった見本。36枚の型紙をつかって、どんどん色が増えていく工程がわかる。更紗すてき~と見てる裏で、このような地道な作業があったのですねぇ。

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着物好きには心強いですねぇ。

この後、林芙美子記念館へ(後半へつづく?!)


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2013/02/11

【装丁】大友誠三 五行歌集『ナニャトヤラ』

福島県いわき市在住の大友さん、初めての五行歌作品集。
最初タイトルを聞いたときに、呪文みたいな言葉だなーと思った。
これは、大友さんご出身地である、岩手県に伝わる盆踊りで、意味は諸説あるが不明とのこと。
まえがきで、「この歌集はエンディング・ノート」としてこのタイトルを選ばれたと書かれている。
さて、このインパクトあるタイトルをどうレイアウトするか。

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カバーに使う絵は、大友さんの描かれたまつぼっくりの水彩画に決まっていた。
絵が左右に広がる構図なのと、ナニャトヤラが縦に並べると意外と長くなってしまうため、横書きにした。
タイトルの字体は、ちょっとくせのある字がいいと思い、『五行歌』で使ってるウェブチャビーに。
370Pの巨体?を支えるのに、どかんとした印象にしてみた。
絵の雰囲気を大切に、温かみのあるクリームの紙を選ぶ。

帯は、中身に大友さんの書を使ってるので、その中から選んだ。しなやかで流麗な字なので、素朴な色紙に墨で載せた。

表紙(カバーをとった本体)は、まつぼっくりの茶からコーディネイト。レザックつむぎ。入れた文字は飾らずごくごくシンプルにする。ここでやりすぎないよう自重。
見返しは、写真では飛んでしまって見えにくいが、フェザーワルツ若草。内側はグリーン系でまとめている。
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化粧扉は、今回カラー口絵を14P使ったので、その分扉も豪華四色を使えた。紙もマットなものを選択。大友さんは扉のためにモノクロでまつぼっくりを描いてくださった。カバーと実は違うんです!
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書は、落款印を朱で入れたいという要望から、全二色刷り! そこにときどき口絵が入るのだが、くどさがない。
作者の人柄や作品のやさしさのなせる技。
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日々の暮らしの中で、生きものや植物に注がれる温かな目、お孫さんへの限りない愛情、深く沈んだもの思う時間、福島への思い。ずっしりとした一冊です。


【書誌データ】
大友誠三著 五行歌集 『ナニャトヤラ』
四六判・上製・370頁、全二色刷り、カラー口絵14頁
定価1,500+税。
ISBN978-4-88208-120-3


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2013/02/09

El Greco エル・グレコ展

東京都美術館、エル・グレコ展に先日行ってきました。

エル・グレコは、本名ドメニコス・テオトコプーロス、1541-1614、16世紀から17世紀にかけて活躍し、ベラスケス、ゴヤとともにスペイン三大画家の一人に数えられる。(パンフレットより)

クレタ島出身であることから、古いスペイン語でギリシアの人=エル・グレコと呼ばれたらしい。本名1文字も入ってないという衝撃。
エル・グレコは、日本には岡山県倉敷市の大原美術館に『受胎告知』、これと国立西洋美術館にある『十字架のキリスト』の2枚しかないそうだ。それだけに、エル・グレコはあまり日本になじみがないかもしれない。ましてや、宗教画というジャンルそのものが敬遠されるかもしれない。

正直わたしもピンときてなかったのだが、夫がしきりに行きたがっていたので、スペイン三大画家だしいいかもと思ってついて行ったといういいかげんさだった。
まあ、しかし、これはいい意味で裏切られ、ほんとにおもしろい展示だった!

展示の前半は、肖像画が中心。彼はまず肖像画家として地位を得たらしい。
肖像画はごく一般的な構図なのだが、あれ? と思わせる。
肩のラインをまっすぐでなく、ちょっと変化をつけたり、手に表情があったり。
クレタからイタリア、スペインにわたって徐々にエル・グレコらしいダイナミックな構図が明らかになってくる。
とくに背景の描き方が、遠近法といっていいのか、奥の奥のその先まで描いて、主役を大きく浮き立たせる。

また絵がどの位置にかけられるか、見る人がどの角度から見るかによって変形する必要がある、という持論のもとに、下から見上げる祭壇画は、縦長にデフォルメされた構図をとる。それが、すごくダイナミックであり、うねるような流れを生み、高揚感さえ感じる。

正直に言ってしまうよ。なんかね、「漫画みたい!」と思ったのだ。
いわゆる劇画タッチなのだ。
わたしにはそれがエル・グレコの一番おもしろかった点だったのだ。
いや、これは褒めてるのだ。見る人を引き付けて、ドラマへ誘い込む。信仰という厳かさへと。

これは今回の展示の白眉、「無原罪のお宿り」サン・ニコラス教区聖堂蔵、サンタ・クルス美術館寄託、
縦347cm×横174cm、そそり立つような大きな絵画。パンフレットのコピーなので、両端はカットされている。
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右下の天使の足元からうねるようにせり上がる流れ、立体3D感覚の構図、きらめく光と影、圧倒的なすばらしさである。無宗教のわたしでも、ひれ伏したくなる。
これは、アンナが聖母マリアを身籠ったのは、原罪を免れた受胎だったというキリスト教義にもとづいた作品なので、鳩の精霊とたくさんの赤子の頭(命?)からマリアが下りてくるシーンらしい。
わたしも、絵の下でしゃがんで見上げてみたが、上からなのか下からなのかはよくわからなかった。
しかし絵画を流れている大きなうねり、エネルギー、浮遊感はじんじんと伝わる。

このようにエル・グレコの構図は、独自の三次元感覚と表現が秀逸。視線から構図を計算したように、非常に頭のよい人だったんだろうなと思う。
宗教絵画とあなどるなかれ。めくるめく三次元感覚に酔いしれるがいい!<何様?

上野、東京都美術館にて、4月7日まで。

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2013/02/02

ことばで絵を描く

今朝は忙しくて朝食抜きで飛びだしたため、終わってからこっそりカフェでモーニングセットなど頼んでしまった。
いつもはできないことなので、うれしいのだ。

目の前のスリムなお兄さんが、焼きたてのトーストにバターを塗ってくれたりして。むふふ。

携帯でブラウズしながらふと思ったこと。
facebookもツイッターもブログもそうだけど、写真や動画が多い。
そして添えられてることばは少ない。

写真って多くを語っちゃって、まさに一目瞭然だから、余計なことばは不要になっちゃう。
同じ理由で、自分もその手を使うのだけれど。

それでも、ことばで、絵を描いて人に見せたいという欲望は消えない。
同様に、ことばで、風景を見せてほしい。

セバスチャンのように、暗い物置にうずくまって本を読みながらはてしのない旅に出る喜びは捨てたくない。
『ビブリア古書堂の事件手帖』がドラマ化されて、「栞子さんはこんなじゃない!!」と怒るのは、その人の中にもう栞子さんが息づいてるから。
同じことばでも、描かれる風景や、見えたり感じるものも違うのだろう。
そうして見てる風景は、きっと自分が好きな風景。あこがれの風景。

写真や絵は便利に利用させてもらうけど、ことばで絵を描く挑戦はきっとずっと続けていく。

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