El Greco エル・グレコ展
東京都美術館、エル・グレコ展に先日行ってきました。
エル・グレコは、本名ドメニコス・テオトコプーロス、1541-1614、16世紀から17世紀にかけて活躍し、ベラスケス、ゴヤとともにスペイン三大画家の一人に数えられる。(パンフレットより)
クレタ島出身であることから、古いスペイン語でギリシアの人=エル・グレコと呼ばれたらしい。本名1文字も入ってないという衝撃。
エル・グレコは、日本には岡山県倉敷市の大原美術館に『受胎告知』、これと国立西洋美術館にある『十字架のキリスト』の2枚しかないそうだ。それだけに、エル・グレコはあまり日本になじみがないかもしれない。ましてや、宗教画というジャンルそのものが敬遠されるかもしれない。
正直わたしもピンときてなかったのだが、夫がしきりに行きたがっていたので、スペイン三大画家だしいいかもと思ってついて行ったといういいかげんさだった。
まあ、しかし、これはいい意味で裏切られ、ほんとにおもしろい展示だった!
展示の前半は、肖像画が中心。彼はまず肖像画家として地位を得たらしい。
肖像画はごく一般的な構図なのだが、あれ? と思わせる。
肩のラインをまっすぐでなく、ちょっと変化をつけたり、手に表情があったり。
クレタからイタリア、スペインにわたって徐々にエル・グレコらしいダイナミックな構図が明らかになってくる。
とくに背景の描き方が、遠近法といっていいのか、奥の奥のその先まで描いて、主役を大きく浮き立たせる。
また絵がどの位置にかけられるか、見る人がどの角度から見るかによって変形する必要がある、という持論のもとに、下から見上げる祭壇画は、縦長にデフォルメされた構図をとる。それが、すごくダイナミックであり、うねるような流れを生み、高揚感さえ感じる。
正直に言ってしまうよ。なんかね、「漫画みたい!」と思ったのだ。
いわゆる劇画タッチなのだ。
わたしにはそれがエル・グレコの一番おもしろかった点だったのだ。
いや、これは褒めてるのだ。見る人を引き付けて、ドラマへ誘い込む。信仰という厳かさへと。
これは今回の展示の白眉、「無原罪のお宿り」サン・ニコラス教区聖堂蔵、サンタ・クルス美術館寄託、
縦347cm×横174cm、そそり立つような大きな絵画。パンフレットのコピーなので、両端はカットされている。
右下の天使の足元からうねるようにせり上がる流れ、立体3D感覚の構図、きらめく光と影、圧倒的なすばらしさである。無宗教のわたしでも、ひれ伏したくなる。
これは、アンナが聖母マリアを身籠ったのは、原罪を免れた受胎だったというキリスト教義にもとづいた作品なので、鳩の精霊とたくさんの赤子の頭(命?)からマリアが下りてくるシーンらしい。
わたしも、絵の下でしゃがんで見上げてみたが、上からなのか下からなのかはよくわからなかった。
しかし絵画を流れている大きなうねり、エネルギー、浮遊感はじんじんと伝わる。
このようにエル・グレコの構図は、独自の三次元感覚と表現が秀逸。視線から構図を計算したように、非常に頭のよい人だったんだろうなと思う。
宗教絵画とあなどるなかれ。めくるめく三次元感覚に酔いしれるがいい!<何様?
上野、東京都美術館にて、4月7日まで。
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