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2012/12/16

【読書ノート】 『夢と希望の人生学』

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『夢と希望の人生学 - これからの「生き方」が見つかる授業』
佐藤剛史著
現代書林 2012.12

佐藤剛史さん(ゴーシ先生)は九州大学の教員で、お弁当と自炊の本を読んで感動しました。食べることを通して、大切なことを教えてくれる以下の本で有名な先生。(どちらもおすすめ本です)

今回は、ゴーシ先生がFacebook誕生日企画で新刊をプレゼントしてくれました!
本には、真っ赤な紙に書かれたメッセージが同封されていました。(他の方がネットにあげているのを見たら、文面も少し違っていたり、白い紙だったり。すごいなぁ。)心がこもってます。

主人公は大学に入学したばかりの田中敬くん。
<ドラゴンボール>人生学、というゼミに興味を持って、キタガワ先生の風変わりな授業の中で、仲間を見つけ、人生の教えを学んでゆく、というストーリー。
<ドラゴンボール>って、そうそう、漫画の、鳥山明さんのジャンプコミックス。

この本、カバーが燃えるような朱。見返しもオレンジ。本文もスミとオレンジの二色刷り。
元気なイラストやポップなど、いきおいにあふれている編集。
人生学その1~その5が章立てになっていて、章の最後には「まとめ」がある。
作りが、ビジネス書みたいな小説。すごく読みやすい。

人生学その1 「選択の積み重ね」が人生だ
人生学その2 「成長」にこそ価値がある
人生学その3 「できるかできないか」ではなく「やるかやらないか」
人生学その4 誰かの幸せを願うと、自分が幸せになる
人生学その5 「スタート」はいつだって目の前から

読み終わって、まずこれは娘(大2)に読ませたいと思った。
キタガワ先生はけしてスパルタ的ではない。こんなにやさしい先生がいるんだろうか、というくらいやさしい。

キタガワ先生の一番私自身に刺さった言葉、

「あなたの人生は、タダではありません。  あなたの時間は、タダではありません」

時間は大切で、同じ時間を過ごすなら、できるだけたくさんの修行をしたほうがいい、と先生は言った。
目先の利益や手数で、もっと大切なものを得るチャンスを逃している・・・。イタタタと思った。
小さな一歩でも、向きを変えていけば、たどりつく先は大きく変わるだろう。
その一歩を出すきっかけになりそうな、励まされる本だと思った。
迷える大学生にとくに勧めたい一冊。


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2012/12/09

【観劇】 第二回「演劇早慶戦」

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テーマは「平成のシェイクスピア」、1日2回公演の夜の部に行ってきました。
演劇早慶戦って耳慣れないと思ったら、まだ第二回だそうです。
公式サイトはこちら

(以下芝居の中身にふれています。ネタばれ注意です)

先攻後攻をいきなりジャンケンで決めたのでびっくり。大道具の準備、今から?!
ジャンケンは慶応が勝ち、昼の部後攻だったので、同じく後攻を選んだ。
受付でもらったチラシに、投票用紙があり、観客が3つの観点からどちらがよかったか選び、最後に発表があるという。

◇早稲田大学 「青の楽園」◇
舞台は人里離れた山の飯場。住人はどうやら犯罪者のようす。
新しく入ったわけありそうな「よっちゃん」の登場から、飯場のバランスがくずれてゆく。

舞台にたくさん足場のようなものが組まれて、ダイナミックに駆けあがったり、転げ落ちたり、体を張った演技。
ただ、セリフ回しが早口で、何を言ってるのか聞き取れないことが多々あった。

よっちゃんはともかく、新入りが入るたび繰り返されること、でもなぜ残る人たちがいるのか、全体的な状況がいまひとつ掴めなくて、けっきょく最後までよくわからなかった、というのが正直な感想。
女は、人形の化身だとしても、獅子舞はなんだったんだろう?
シェークスピア作品には、よく亡霊の類がでてくるが、そういうものだったのか?

1人ひとりの役者の演技力は高かったような気がする。ストップモーションで固まったシーンはみごと。
いったん死んだようだった班長も。運動能力や踊りも。
でも、何を伝えたかったのかが私には難しくて掴みそこねてしまった。
結局ここを出ても、待ってるのは同じ毎日の暮らし・・・・。その虚無感だけはわかったのだけど・・・。

◇慶応大学「ロミオとジュリエット/ロミオとジュリエットみたいなの」
(大道具の足場みたいなのは、共通していたのね)
幕あけはロミオとジュリエットの出会いのシーンから始まり、恋に落ち、逃げようとするが・・・いつのまにか違う展開に・・・とここで暗転。これは前ふりだった。(うまいねぇ)

舞台は、大学紛争時代。機動隊勤務の彼と、学生運動側の彼女。どうやら「作戦」で彼女(なぜか盲人?)はスパイとして同棲しているらしいのだけど。学生運動を進めるため、女子大生は体で奉仕して同士を募っていた。
その中で、作戦なのか愛なのかにもだえ苦しむ。
舞台から引き裂かれそうな苦しみと、愛なのか性なのか、服従なのか自立なのか、いろんな相対するものが渦巻いてびりびりと伝わってきた。気が付いたら涙がこぼれていた。

すばらしかったです。
わたしは早稲田側の応援のつもりで行ったのですけど、今回は、3つの観点すべて慶応に投票しました。
早稲田が登場人物わずかに8人に対して、慶応側が舞台ボリュームいっぱいの群舞など厚みがあったし、内容もわかりやすかった。いいたいこと、主題が、これが私たちの描く「ロミオとジュリエット」だよ、というメッセージがずどんと伝わったところが強かったんじゃないでしょうか。

結果も、すべて慶応側の勝利でした。

早稲田ひとつ見せられたら、それなりに受け止めただろうけど、比較するというのは厳しいものですね。
ぜひ、リベンジしてくれることを!
舞台を支えた多くのスタッフのみなさまも、お疲れさまでした。
ありがとうございました。

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2012/12/01

尊厳の芸術展 -The Art of Gaman-

芸大美術館でやっている、尊厳の芸術展に先週の日曜日行ってきた。
上野公園は、ちょうどいちょうの黄葉も始まり、秋の陽に色鮮やかでうつくしかった。

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この美術展を知ったのは、NHKの日曜美術館での紹介だった。
(リンクをクリックすると、紹介記事が読めます。)

アメリカの強制収容所、というところに移住した日系の方たちが集められ、財産も奪われ、苦しい生活をしたこと、その中で、生活に必要なものを中心に、少ない材料をくふうしながらいろんなものを作ったという。
写真を撮れたので、いくつかわたしからも紹介したい。

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これは石を削って作った食器だそうです。何とうつくしいのでしょうか。
お皿を作ろうと思った、どんな形にする、そうだ、葉っぱしたらどうか。
石をみつけてあれこれ考えたのでしょう。石はきっといびつで、それをそのまま生かしたのかもしれません。
なにげないものから、こんなものを作ってしまう心に打たれるのです。

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これは少し太めの枝です。彼らが住んでいたのは砂漠のようなところで、まともな木も無かった様子。
大きさは小さな水筒くらいです。少し虫が喰っていたのでしょうか。
ぐるっと山道にして、登る人まで掘っています。「登山」という題でした。

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こちらは、貝細工のブローチです。
女性が胸にかざったのでしょう。
この貝は、枯れた大地を数メートル掘った地層にある貝を集めたそうです。
きれいに洗って、組み合わせて、おしゃれをしたのですね。
それにしてもこんな繊細なものが、壊れもせず、大事にとってあったことも驚きです。
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思わず、「可愛い!」と叫びたくなるブローチです。
鳥が細かくよーく描かれている。小さな木切れに色をつけたものでしょう。

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お人形の箪笥。子どもにねだられたのでしょうか。お父さんがんばりました。足のカーブがなんだか泣けるんです。お人形の箪笥って、そうでしょう? よくまあ、ねぇ。

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文通で収容所から出された封筒に、水彩画が描かれています。
小さなキャンバスです。
収容所の手紙は検閲があり、苦しいとか辛いということは書けなかったそうです。
実際、写真やこれらの作品からは、苦労の実感は正直薄いように思いました。
抑圧された中でも、楽しみを見つけること。名前を奪われ、数字で呼ばれながらも、人間らしい暮らしを必死で求めていた様子の輝きの方が強く感じるからかもしれません。

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芸術家でもなんでもない、市井のごくふつうの人が、苦労して材料を見つけて、生活の彩を求めた史実とそれを証明するこれらの遺品はどれも愛しい。
人ってやっぱり美しいものが好きで、ものを作ることも使うことも好きなんだなと気付かされる。
私はNHKのTVで見たとき、この作品たちに殴られに行きたいと思った。
だけど、これらは優しくてきれいで、切実で、ただそこに静かに佇んでいたのだった。

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尊厳の芸術展 -The Art of Gaman-

会期: 2012年11月3日(土•祝)- 12月9日(日)
月曜休館
午前10時 - 午後5時 (入館は午後4時30分まで)
会場: 東京藝術大学大学美術館
観覧料: 無料

全国でも巡回するそうです。よかったら見てみてくださいね。

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