尊厳の芸術展 -The Art of Gaman-
芸大美術館でやっている、尊厳の芸術展に先週の日曜日行ってきた。
上野公園は、ちょうどいちょうの黄葉も始まり、秋の陽に色鮮やかでうつくしかった。
この美術展を知ったのは、NHKの日曜美術館での紹介だった。
(リンクをクリックすると、紹介記事が読めます。)
アメリカの強制収容所、というところに移住した日系の方たちが集められ、財産も奪われ、苦しい生活をしたこと、その中で、生活に必要なものを中心に、少ない材料をくふうしながらいろんなものを作ったという。
写真を撮れたので、いくつかわたしからも紹介したい。
これは石を削って作った食器だそうです。何とうつくしいのでしょうか。
お皿を作ろうと思った、どんな形にする、そうだ、葉っぱしたらどうか。
石をみつけてあれこれ考えたのでしょう。石はきっといびつで、それをそのまま生かしたのかもしれません。
なにげないものから、こんなものを作ってしまう心に打たれるのです。
これは少し太めの枝です。彼らが住んでいたのは砂漠のようなところで、まともな木も無かった様子。
大きさは小さな水筒くらいです。少し虫が喰っていたのでしょうか。
ぐるっと山道にして、登る人まで掘っています。「登山」という題でした。
こちらは、貝細工のブローチです。
女性が胸にかざったのでしょう。
この貝は、枯れた大地を数メートル掘った地層にある貝を集めたそうです。
きれいに洗って、組み合わせて、おしゃれをしたのですね。
それにしてもこんな繊細なものが、壊れもせず、大事にとってあったことも驚きです。
思わず、「可愛い!」と叫びたくなるブローチです。
鳥が細かくよーく描かれている。小さな木切れに色をつけたものでしょう。
お人形の箪笥。子どもにねだられたのでしょうか。お父さんがんばりました。足のカーブがなんだか泣けるんです。お人形の箪笥って、そうでしょう? よくまあ、ねぇ。
文通で収容所から出された封筒に、水彩画が描かれています。
小さなキャンバスです。
収容所の手紙は検閲があり、苦しいとか辛いということは書けなかったそうです。
実際、写真やこれらの作品からは、苦労の実感は正直薄いように思いました。
抑圧された中でも、楽しみを見つけること。名前を奪われ、数字で呼ばれながらも、人間らしい暮らしを必死で求めていた様子の輝きの方が強く感じるからかもしれません。
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芸術家でもなんでもない、市井のごくふつうの人が、苦労して材料を見つけて、生活の彩を求めた史実とそれを証明するこれらの遺品はどれも愛しい。
人ってやっぱり美しいものが好きで、ものを作ることも使うことも好きなんだなと気付かされる。
私はNHKのTVで見たとき、この作品たちに殴られに行きたいと思った。
だけど、これらは優しくてきれいで、切実で、ただそこに静かに佇んでいたのだった。
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尊厳の芸術展 -The Art of Gaman-
会期: 2012年11月3日(土•祝)- 12月9日(日)
月曜休館
午前10時 - 午後5時 (入館は午後4時30分まで)
会場: 東京藝術大学大学美術館
観覧料: 無料
全国でも巡回するそうです。よかったら見てみてくださいね。
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