15日、えほんの刷りたてが事務所に届いた。
思わず、じーんとしてしまう。
お家に帰ってから、一人でゆっくりページをめくり、観終わってまたちょっと泣いた。
いい絵本に仕上がりました!

一番苦労したのは、原画の色補正だった。
絵がスケッチブックに描かれていたため、スキャナーでスキャンしたとき紙の凹凸をひろってしまいそこが影になったり、ピンクっぽくなってしまったのだ。原画を見ながら色補正かけて、一度入稿して、色校正を見るとやっぱりいろいろ見落としがあった。これでは工藤さんに申し訳ない。
どれどれ、とファイルを開いても、肉眼で見えない! くーっ!
色が1%でも乗ってると、印刷上見えてくるのだが、モニタでみているとほとんど識別できない。
モニタの彩度などを調整しても苦しい。
けっきょく色校正をみながら、見えない敵をやっつけるみたいな、座頭市みたいだなーと思いながら修正した。
色鉛筆のほのぼの感を残しつつ、絵本のはっきりした見やすさという両極からのバランスを探す。
印刷所に、スキャンを頼んでしまおうかとも思ったけど、けっきょく納得できる色がでるまでいじるのだったら同じかなと思い勉強と思って地道に作業した。デジタルならやりやすいこともあり、いくつか提案もさせていただいて、工藤さんの了解もとりながらすすめた。
今回の絵本は、ストーリーと絵と五行歌と3つの要素が入っている。工藤さんの五行歌の力は人をゆさぶるのだけど、絵本として読むときどう読まれるのか、子どもがどこまで理解できるか、というところでいろいろ試行錯誤もあった。
最終的に、ストーリーを上段で追えるようにして、五行歌は下段に、という構成の提案が通り、編集を進めることになった。漢字は小学6年生までに習うもののみにして(五行歌を除く)、すべての漢字はよみがなをつけた。

あと、装丁について。いつもは多くの単行本で一般に使われているアジロ綴じといって、背をのりでつける方法にするが、今回は絵本で子どもが頻繁に開け閉めしても耐えられるよう、糸かがり綴じでお願いした。
また、カバーが破けてなくなってもいいように、表紙もカバーと同じデザインで、(汚れに強い)ビニールコーティング(PP貼)した。絵本として流通するからには、コストは増えるけどきちんとした「あるべき絵本の形」を目指した。
見返しはカバー画のアクセントカラー緑に。いくつかの候補から絵本らしいポップな色を提案させていただいた。お話が少しシリアスなので、中和する意味も。
カバー絵は、絵本の中から工藤さんが選んだもの。絵の中のグリーンをカバーデザインのアクセントカラーにして、背も緑に。
絵本を最初に手にとってくれた人がまず開けるであろう、右側のカバーの折り返し(袖)に工藤さんのあとがきの文章から抜粋して入れた。
偶然ちょっと手に取った人にでも、このメッセージを伝えたかった。

そして帯にも、このえほんのメインテーマ、「にげて! なにももたずに! もっともっと高いところに!」をキャッチとして据えた。カバー絵がまさに逃げるシーンなので、よりアピールできたと思う。
工藤さんが避難所で行ってきた紙芝居や、ワークショップ活動、NPOと協力の活動のおかげで、たくさんの方から推薦もいただいた。工藤さんの作品の力、人柄、いろんな人たちがこの作品を支えてくれている。

この絵本を読むと、つなみは予想よりももっともっと高く、強く、激しく、襲いかかってくることがわかる。
一瞬の判断が明暗を分けるのだ。
次は、1年後かもしれないし、1000年後かもしれない。
でも、わたしたちができることは、1000年先の人にも、この教えを伝え残すことなんじゃないか。
このえほんが、すこしでもその助けになれたらどんなにうれしいことか。著者の工藤さんはもちろんのことだが、編集のわたしたちも強く願わずにはいられない。
長くなりました。全力出しました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。m(_"_)m
【書誌データ】
くどうまゆみ著 『つなみのえほん -ぼくのふるさとー』 市井社(しせいしゃ)刊
B5判・上製・46頁 定価1,260円(税込)
ISBN978-88208-116-6 C8793
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