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2011/12/04

【装丁】川上美也子五行歌集 『ありがとう』

5人のお子さんを育てた「カルガモ母さん」の愛称で親しまれる川上美也子さんの五行歌集『ありがとう』が11月に完成した。
川上さんは、脳性マヒの障がいを持ち、電動車いすを愛用してあちこちアクティブに活動されている。麻痺のない左手で書く書は、国内各地、ニューヨーク、パリ、ケルンでも個展を開かれている。今年還暦のお祝いということもあり、五行歌の歌集の刊行を決意された。
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川上さんの書の作品画像を見せていただき、カバーにレイアウトさせていただいた。川上さん自身も気に入ってるもので、カバー表は「ありがとう」と思いきや、「ありのまま」。川上さんのテーマのひとつである。
帯にはお二人のお孫さんを抱っこした、カメラマン耳塚富士雄氏による写真。生き生きとした今の表情がすてき。
キャッチコピーの「私、今、生きてるもん」は、川上さんの五行歌の一部からいただいた。

川上さんの五行歌は、障がいによる思うようにならない健康のことや、家族の悩みなどシリアスなテーマと、一方で独特のユーモア精神といい意味での開き直りが混在している。
装丁にあたっても、どっちの軸に振れたらいいのか、悩んだ。
でも、川上さんのテーマは、生きること、ではないかと感じていたので、一番打ちこみ評価も高い書を敬意を持って使わせていただこうと思った。手に持った時ひっかかる方が開きやすいという川上さんの希望もあり、しぼのある和紙風の紙をカバーに使った。
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川上さんは、エッセイをすでに2冊発刊されていて、「カルガモ母さん」として知られており、娘さんがイラストを書いてくださるというので、表紙に使わせていただいた。川上さんのトレードマークであり、娘さんとのコラボであり、ユーモアのある部分も表現できた。
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本扉は、イラストと、川上さん自筆の「ありがとう」とサイン。
歌を一首、帯の折り返し(袖)に入れた。

今回川上さんは、歌を全部自筆の画像で入れた。
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川上さんの思いとして、あいさつ文の一部から引用させていただこう。

重度の脳性まひの私には、もはや小筆が持てません。 年々不自由になります。 それでも、「お母さんにも、こんな字を書けた時もあったよ」って、五人の子どもたちに 形見に残したいと思ったのがきっかけで、デッサン用の6Bの鉛筆を持って、自作の五行 歌を色紙に書き始めました。 個展の都度、書けた色紙作品を展示させていただくようになりました。 一年以上書けない時もありました。鉛筆も持てなくなってからはサインペンにしました。 首がぐらつくし、上半身はつっぱるしで、まっすぐ書けないので、ヘルパーさんに、色紙 に薄く線を引いてもらい、あとで消してもらいました。たくさんの方々のご協力をいただ き、自分の体調に従いながら、一生懸命に六年がかりで書き上げました。

以上のような事情で、手書きの文字は太かったり細かったり、まさにありのままの川上さんを伝えている。
川上さんの生き方に触れるとき、自分を振りかえずにはいられない。
川上さんとの出会いに、わたしからもありがとう、と思う。

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コメント

◇波那さん
 ブクログから来てくださったのかしら。ありがとうございます。川上さんとお会いすると、「自分ももっとがんばれるはず!」と元気をいただきます。
 この歌集からも、力をいただけるのではないでしょうか。苦しさを乗り越える知恵としての明るさとか、笑顔ほど強いものだなと感じます。

投稿: しづく | 2012/02/28 07:39

しづくさんこんにちは。お世話になっております。
装丁のお仕事、見せてくださりありがとうございます。
直筆のままの歌集、私もぜひ読みたいです。
幾度かお逢いしたことはございましたが
背負ってこられたものの大きさに驚きました。
それだけに明るい言葉が響いてきます。

投稿: 波那 | 2012/02/27 13:37

◇柚月くん
 ありがとう☆ 歌会代表の方へ贈呈があると思うので、参考までにまず手に取って見てくださいませ♪ 

投稿: しづく | 2011/12/05 22:00

この記事を読んだだけでも感動しました。
これは是非手に取って読ませていただきたい!

投稿: 柚月 | 2011/12/04 21:55

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