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2011/12/17

【装丁】萌子五行歌集『海と生きる』

萌子さんは石巻在住。そう、あの3・11のとき恐ろしい光景を目の当たりにされた。ご主人の安否がわかったのは、新聞記事だった。萌子さんの歌集のひとつの章は、震災の経験の記録となった。
大変な状況の中でも、歌集を作る決意を守られて、事務所へも顔を見せてくださった。
そして、震災のお話や、石巻の画家の草刈量一氏との出会いなどをお聞きし、装画として使わせていただくことになった。
タイトルの海のイメージそのままに、さわやかな美しい絵を生かした装丁をさせていただいた。

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カバーの裏側は、石巻の日和山の桜の絵。震災前のうつくしい石巻の景色。
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帯は極力、カバー画を邪魔しないように、透けるシープスキンで。

カバーと本扉が緻密な水彩画なので、表紙はシンプルに。
青の5本のグラデーションのラインで、水平線と、五行歌を表現してみた。
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見返しは、明るさと力強さ、萌子さんのはつらつ感を反映した黄色に。
本扉の漁船の絵は、原稿を読んでから新たに草刈氏が描いてくださったものと聞く。
萌子さんの作品と熱意に賛同いただいた草刈氏は、作品をすべて無償提供、全面協力していただいたとのこと。
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長野の山で育った萌子さんが、海と生きる覚悟を決めるまで。海が与えてくれる豊かな幸への驚きと感動。のびのびと健やかで気持ちのいい歌とともに、最終章の歌には、胸にせまる真実の記録がある。

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2011/12/04

【装丁】川上美也子五行歌集 『ありがとう』

5人のお子さんを育てた「カルガモ母さん」の愛称で親しまれる川上美也子さんの五行歌集『ありがとう』が11月に完成した。
川上さんは、脳性マヒの障がいを持ち、電動車いすを愛用してあちこちアクティブに活動されている。麻痺のない左手で書く書は、国内各地、ニューヨーク、パリ、ケルンでも個展を開かれている。今年還暦のお祝いということもあり、五行歌の歌集の刊行を決意された。
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川上さんの書の作品画像を見せていただき、カバーにレイアウトさせていただいた。川上さん自身も気に入ってるもので、カバー表は「ありがとう」と思いきや、「ありのまま」。川上さんのテーマのひとつである。
帯にはお二人のお孫さんを抱っこした、カメラマン耳塚富士雄氏による写真。生き生きとした今の表情がすてき。
キャッチコピーの「私、今、生きてるもん」は、川上さんの五行歌の一部からいただいた。

川上さんの五行歌は、障がいによる思うようにならない健康のことや、家族の悩みなどシリアスなテーマと、一方で独特のユーモア精神といい意味での開き直りが混在している。
装丁にあたっても、どっちの軸に振れたらいいのか、悩んだ。
でも、川上さんのテーマは、生きること、ではないかと感じていたので、一番打ちこみ評価も高い書を敬意を持って使わせていただこうと思った。手に持った時ひっかかる方が開きやすいという川上さんの希望もあり、しぼのある和紙風の紙をカバーに使った。
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川上さんは、エッセイをすでに2冊発刊されていて、「カルガモ母さん」として知られており、娘さんがイラストを書いてくださるというので、表紙に使わせていただいた。川上さんのトレードマークであり、娘さんとのコラボであり、ユーモアのある部分も表現できた。
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本扉は、イラストと、川上さん自筆の「ありがとう」とサイン。
歌を一首、帯の折り返し(袖)に入れた。

今回川上さんは、歌を全部自筆の画像で入れた。
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川上さんの思いとして、あいさつ文の一部から引用させていただこう。

重度の脳性まひの私には、もはや小筆が持てません。 年々不自由になります。 それでも、「お母さんにも、こんな字を書けた時もあったよ」って、五人の子どもたちに 形見に残したいと思ったのがきっかけで、デッサン用の6Bの鉛筆を持って、自作の五行 歌を色紙に書き始めました。 個展の都度、書けた色紙作品を展示させていただくようになりました。 一年以上書けない時もありました。鉛筆も持てなくなってからはサインペンにしました。 首がぐらつくし、上半身はつっぱるしで、まっすぐ書けないので、ヘルパーさんに、色紙 に薄く線を引いてもらい、あとで消してもらいました。たくさんの方々のご協力をいただ き、自分の体調に従いながら、一生懸命に六年がかりで書き上げました。

以上のような事情で、手書きの文字は太かったり細かったり、まさにありのままの川上さんを伝えている。
川上さんの生き方に触れるとき、自分を振りかえずにはいられない。
川上さんとの出会いに、わたしからもありがとう、と思う。

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2011/12/03

オーケストラ鑑賞ことはじめ 2011/11/30

娘が大学のサークルとして、オーケストラに入ったことをきっかけに、私のオーケストラ鑑賞(クラッシック鑑賞?)、をはじめました。まだ新入部員なので演奏会には参加できませんけど、いろいろお知らせをもらったり、無料演奏会とか見に行くようになり、やがて、チケットノルマなどもあり、先日は本格的な定期演奏会へ行ってきました。

これを期にちょっと勉強というか、いろいろ背景も知るとより楽しいかなと思い、行くたびになにか書いてみようかと思いました。
今回の演奏会は、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)が作曲した曲をもとに構成されていました。

1)歌劇「グントラム」序曲
2)アルプス交響曲 作品64
3)ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 作品28
4)ホルン協奏曲第一番 変ホ長調作品11

2、3、に関しては、少し前の演奏会でも聞いた作品でした。アルプス交響曲は、50分もある大作で、今年一年オーケストラで力をいれて取り組んでいる作品とのこと。
オーケストラというのは、司会者等はいなくて、あいさつとかもなし。指揮者が出てきて、いきなり演奏がはじまる。
何の曲かは、パンフレットに書いてあるので説明がいらないということなのかな、けっこう最初はめんくらった。

曲名からイメージがあるていどわくのだけど、音からもいろいろイメージがわく。
アルプス交響曲は、暗いうちから山を登って、草原や氷河、嵐にあって、やがて夜へという一連の流れがあるのだが、そのときどきでいろんなおもしろ楽器を使って、舞台の効果音みたいな演奏になる。
こだまの立体感を出すためか、バックヤードからも演奏が聞こえる。

愉快ないたずらは、軽妙で明るいリズム。聴いていても楽しくなる曲。でもあとでパンフレットの曲紹介をよく読むと、最後は絞首刑になるらしい。意外とこわい。

最後のホルン協奏曲は、今回の目玉、ソリストとしてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席ホルン奏者シュテファン・ドール氏を迎えて素晴らしい音が聞けた。彼は燕尾服をまとって、指揮者の横に立ち、ホルンを掲げてすべて暗譜で演奏した。指揮をみて、オーケストラをみながら絶妙のタイミングでやわらかく入ってくる。音色もやさしく力強く、高く低く音域が広くてさすがとしかいいようがない。
彼一人の演奏がこうなのだから、ベルリン・フィルの演奏とはいかに。思わず誰しも聴いてみたいと誘われる。

今回、前から4列目で前にいるバイオリンとか弦のパートがよく見えたのだが、弦は休まない!
弦楽器というと、お嬢様、おぼっちゃまが趣味で弾くイメージ(ごめんなさい)だったのだが、とんでもない!
メロディラインを弾かないときも、細かい音を伴奏するし、ほとんど腕をあげっぱなし。気力体力集中力の凄さに認識を改めた。そんな生易しいものではなかった。

知らなかったことや、気がつかなかったことがいろいろあって、とにかく素晴らしかった!
こんな演奏がわが子もできるようになるんだろうかと、大いに不安に思いつつも、心から素晴らしいと思った。
自分のカテゴリーにはない経験だったが、これからも楽しみたいと思います。

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