転んでもいいのだ・・・ドリアン助川さんライブ
8・26(金)に新宿5丁目のLEFKADAへ、「ドリアン助川のザ・授業」東北詩人列伝 草野心平編~パティ・スミスも登場!転んでも泣くな というライブを聴きに行きました。会場は地下だったため、興奮のツイートが全然できなくてしょんぼり。
ドリアン助川さんは、叫ぶ詩人の会のボーカルで作詞作曲をしていた人で、そのCDを聞いて、その詩に心を射抜かれてから、ずっとひっそりファンだったのでした。
いつだったか、枡野浩一さんと一緒のライブ(追記:2006年8月南青山)にも行きましたが、その日も豪雨でした。
金曜日には、都内大雨洪水注意報がでていましたが、幸い夕方には雷が止んで雨もそう強くなく無事行くことができました。
ライブハウスLEFCADAは、椅子席80ほどでしたが、かなり満席でした。
舞台はシンプルにマイク一本。白いバックスクリーンに照明器具。
開始時間を10分くらい過ぎたとき、ドリアン助川さんが、白いアフロヘア、アルルカンの衣装と、メイクで登場しました。
アルルカンとピエロの違いは、おしえてgooにあったんですけど、
アルルカンは元々、16-18世紀イタリアで流行した即興仮面喜劇に登場する道化役のことでした。
一方ピエロは、フランスの無言劇に登場する男役のことです。
つまり、歌ったり語ったりするのは、アルルカンなわけです。
歌ではじまり、きさくなトークがあり、ラジオで人生相談している話になり、
かえるさんから相談のはがきが来て、それにこたえるコーナーがありました。
(草野心平は、かえるの詩がとても有名なので、その伏線らしいです。)
75歳のなんとかかえるさんは、犬を飼っていいものかどうかの相談。
自分より先に死んでしまう、でもさびしくてしかたがない。
一人娘のたまこさんは遠くに住んでいる。
どうしたらいいかと聞く。
ドリアンさんは、答えます。「飼いましょう。今のままではさびしくて死んでしまいます」
かえるさんは、人間社会にもそこここにいるようなかえるさんで、いまの時代を反映するような悩みを抱えていて、
おかしくて、ちょっとほろりと苦くて。
相談の中で、照明が変わると、詩の朗読になったり歌になったり。
シュルーゲルアオガエルのるりる?さんは昼はいい池で働いているそうですが、夜になるとさみしくてしょうがないといいます。どこかに行きたい、誘拐してくださいと相談があり、るりるさんと穴に入って(タイムマシン?)に乗り世界を旅することになります。
休憩中に、パティ・スミスのベルリンライブ映像が流れた。その間約10分の休憩。
なぜ、パティ・スミスなのか。それはパティ・スミスが、
スミスが舞台で詩を朗読し、そのバックでケイが音楽を演奏するスタイルで活動をし始めるWikipediaより
そう、ドリアンさんのように、詩の朗読と音楽というスタイルを作ったのが、この人、このグループらしいのです。
るりると旅は続いて、日本に帰りたいと願って穴に入った二人が目にしたものは、福島の原発の現場だった。
ゴミだらけで殺人が世界一多いナポリや、地雷のうまったカンボジア。麻薬と音楽、崩壊するベルリンとずいぶんひどいところを回ってきたけど、そこには人がいた。
この福島には、人がいられない場所になった、と。
そう、草野心平は、福島いわきの出身だったのです。
さまよう二人が草野心平の詩集を拾ったところから、授業?が始まります。
バックのスクリーンに「年表」が映しだされ、彼の苦労の多い人生が見渡せました。
さまざまな職業について、お店(居酒屋系がなぜか多い)を開いては、つぶして、新聞社のようなまともなところに勤めたと思ったら、やめて、それでも子どもは増え続け、自費出版を続けて。
財産を没収されたり、火事でなにもかも失い、親兄弟も何人も見送り、それでも彼は詩を書きつづけて、70過ぎて毎年一冊詩集を出すと決め、亡くなる一年前までそれは続いた。
ドリアンさんはいいます。
「金持ちとか、成功した人の話なんか聞きたくない。こんな年表を眺めながら、ウィスキーをちびちび飲むのがいいんだ」と。彼もまた迷い続け、さまよい続ける詩人でした。
なんどもくじけそうな心を支えながら、自転車で多摩川をいったりきたりしながら、凡人と天才について考えながら、自分の生き方を探している一人です。
草野心平は、凡人で天才だと。凡人は生き続けることだと。
生き続けることが作品だと。
ドリアンさんの歌を聞きながら、彼の持っている苦しみが伝わってきて、それは自分の問題でもあって、小さな詩を書く私にとっても、これでいいのかと思い続ける。
そのまだ考えの途中だけど、結論とかじゃないちょっとした決心のようなものが、すごくわかって、あたしもがんばろうって思えたんだ。
終わった後、CDを買うとサインをくれると聞いて、サインしてもらって握手してもらった。
「ドリアンさんに戻ったんですか?」と聞くと、
「両方使ってます。執筆は明川名で、ライブは、ドリアンなんです」とおっしゃっていた。
感動しました、と伝えたけど、ほんとはもっといろんなものをもらったんですよ。
とここにひっそり記しておきます。
ありがとうございました。
もちろん、生き続けようと思います。
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コメント
◇kikkoro様
そうそう、人生相談で有名なのですよね。
2000年に渡米したときにドリアンを捨てて一度「明川哲也」になって小説を書いていました。
ドリアンを復活させたのは、今年なんですよ。
違うかもしれないけど、震災と関係あるんじゃないかしら。被災地でもライブをしてるので、どん底にいるひとに、ろうそくのような火を灯すのがドリアンさんの真骨頂。いまこそ、復活の時! となったのではないかと勝手に想像しています。
LEFKADAのライブは、あと2回続くみたいなのでできればまたいきたいです。
投稿: しづく | 2011/09/02 09:30
エッセイなんかは読んでたけど、まだライブもやってるんですねえ。
しかも、まだ「ドリアン」使ってるのね。
10年以上も前の夏(たぶん)、
伊豆から真夜中に車で帰ってくる途中に聞いた、
深夜ラジオの人生相談を思い出しました。
めちゃくちゃ、どーしよーもないくらい暗い
女子高生からの悩み相談でした。
運転席のオジサマ(仕事相手で遊び仲間でもあった)と
妙に静かに聞き入ってしまい、
「暗いね」「はい」と言ったきり
2人とも黙って暗い高速をひた走ったのだけはよく覚えています。
実は少しお酒も入っていたのですが(今だから言える?)
どうしても翌日仕事で帰らなくてはいけなかった私たちでした。
真面目に答えるドリアンさんの声だけが、車中に響いていたのでした(笑)
投稿: kikkoro | 2011/09/02 02:34
◇柚月くん
先日はありがとう♪
うん、ナポリのことそういわれればニュースでやってた気がしたけど、すっかり忘れてた。
問題提起はしてくれるけど、主張を押しつけはしないのがよかった。それぞれの人が考え、やれることをやればいいと思うから。
CDはベストが出てるので、それが一番いいですよ。号泣ですよ。でもまずはYoutubeとかで探して見てみてね。「叫ぶ詩人の会」です。
来月は宮沢賢治をやるらしい・・・どうしよう。いけるかな・・・^^
投稿: しづく | 2011/08/31 13:42
再会したのねー、いいなー、すごいなー。
私もそんなライブが近くであったら行きたいと思いました。
会場の雰囲気とか感動が伝わってきましたよ。
>ゴミだらけで殺人が世界一多いナポリや、地雷の
>うまったカンボジア。麻薬と音楽、崩壊するベル
>リンとずいぶんひどいところを回ってきたけど、
>そこには人がいた。
>この福島には、人がいられない場所になった、と。
そうだね、衝撃的なことだよね。あらためて思った。
生き続けることが作品…って言葉もズシリときました。
CD聴いたことないので探してみようと思ったよ。
投稿: 柚月 | 2011/08/28 16:19
追記:以前のライブの感想をこのブログに書いてたので、リンク張っておきます。
やっぱりCDにサインしてもらったのです。へへへ。
http://shiduku.cocolog-nifty.com/heart/2006/08/the_word_show__355f.html
このときは30分以上とか書いてるけど、今回の2時間たっぷりのこのライブも、紙ぺらひとつ見ずに全部暗唱したのは、ほんとに改めて素晴らしいと思ったことも追記しておきます。
投稿: しづく | 2011/08/28 15:34