【読書ノート】 百田尚樹 『モンスター』
最近、百田尚樹さんの本を読んでいる。『永遠の0』がとてもよかったからだ。
読む本は、「これはっ!」と思う一冊があったときにその作家の作品を手軽に手に入るところから選んでいく。
いくつか読んでいくと、その作家の持ち味が浮かび上がってくるのが面白い。
それが好きだったら、ファンになる。
先日読み終わったのは、百田尚樹著『モンスター』
**************ネタばれ含みます。ご注意を ******************************
幼いころから、顔が醜く友達もできず親からも愛されないヒロインが、整形手術で絶世の美女に変身して、ちょっとした復讐や、忘れられない男性に近づいていく。
整形手術の莫大な費用は、風俗業で稼いだ。
醜い女の目からみた、まわりの人間と、超絶美人から見た、とくに、男たちの変わりようが滑稽だ。
たんたんと観察し、男たちをもてあそぶ。
美しさとは作れるもの。
整形手術まで行かなくても、よくお化粧のビフォーアフターで愕然とする場合もある。
美しいだけで、周りから知的に見られ、上品に見られ、憧れられ、尊敬され、嫉妬される。
でもそれはきっと遺伝子が優位なものを残したいという本能からなんだろうな。
惹かれるのはどうしようもない。
一方で、どんなに美女でも手痛いしっぺ返しをくらったら、二度と近づかないのも本能なんだろう。
おもしろいな。
化け物のような顔を持った、モンスターは、化け物のような心のモンスターに変身したけど、彼女が求めていたのは純粋な愛だった。
心から愛する人に、愛されたい。ただそれだけを求めていた。
このまとめかたは、百田氏らしさが戻ってくる。
情に流れるのをよしとするか、徹底的にモンスターであってくれと思うかは評価が分かれるところかもしれない。
途中の、人間観察が辛辣だっただけに、終わり方は甘い。
その人間観察は、読んで「なるほどー」と思うよりは、「ああ、あれはそうだったのか」というのがおもしろかった。
ふだん自分が何気なくであってる光景の中、何かを感じ取っている。
でもそれは表面の意識に上るまでもなく、潜在意識にぼんやりと刻まれている。
そこに、言葉で表現されたピースが、ぴたっとはまったときに、その潜在意識が表に浮かんでくる。
そう、まさに「詩」もそうだ。
ああ、これ、わたしも表現したかったこと、と思う。
わかっていたのに。
小説家というのはすごいなーと思った。こんな400ページもの小説にそういう指摘をいっぱい盛り込むのだから。
もう少し百田さんを追いかけてみようと思う。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント