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2010/10/25

【読書ノート】桐島、部活やめるってよ

朝井リョウ著、集英社。
第22回小説すばる新人賞受賞。帯に「平成生まれの現役大学生が描く、きらめく青春群像劇」とある。

タイトル、キャッチーでうまい!
装丁もさわやかで、扉の写真もグッド。

目次を見ると、章が全部高校生の男女の人名。
最近こういう形式多いなー。『リアルシンデレラ』もそうだったし、以前読んだ山田詠美の『学問』もそう。『1Q84』なんかもそう。それぞれの人物の視点から起きてることを語って、全体として多面的に立体的に物語を構成している感じ。
実はけっこう読みにくい。あっちとこっちが関係しているから、読み返したりしたくなる。
ミステリ好きは検証したくなるので、疲れる・・・。

物語は、タイトル通り、バレー部のキャプテンだった「桐島」が突然部活をやめる(た)というところからスタートしている。桐島がいるために、毎回ベンチだった宏樹のモノローグが第一章。

目立つ子と目立たない子の学校生活での位置取りとか、細かいエピソードが凄くリアルに描かれている。
ルックスもよくて、運動神経もよくて、クラスでいいポジションにいて、かわいい彼女がいる自分。
でも、中身がすかすかなのも、どこかわかっているいらだち。
おおげさなテーマとか、訴えたい真実というより、空気感や心の繊細な揺れをうまく掬い取った作品。
たぶん「宏樹」が主人公で、「宏樹」が小さな一歩を踏み出しそうな上向き加減のエンディングも作風にマッチしている。

この小説が読んでおすすめか否か、というより、自分の高校生活の記憶を彷彿とさせてくれるところがおもしろかった。もちろん、わたしが高校生のときは、携帯なんかなかったし、家にパソコンもなかった。

それでも、この話とリンクすることはいっぱいあって、「ああ、そうそう、目立つ子は目立つ子とくっついてたなー」とか、「部活はなんかめちゃくちゃがんばってたなー」(あこがれの先輩がいたからね)とか、
同じクラスの男子が、文化祭で自主映画を作っていて、そのBGMが「ホテルカリフォルニア」だったなーとか。

泣いたり、笑ったり。楽しかったな。

作者の「朝井リョウ」さんのプロフィールを見ると、1989年生まれ、岐阜県出身、早稲田大学文化構想学部在学中、とある。ルックスもいまどきのおしゃれな男子風。
これは彼自身の物語でもあるのかな。ださい、とみんなが笑った映像部の同級生への、告白でもあるのかもしれないな、とふと思った。

外見も大事だけど、長い人生、中身、大事。


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