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2010/10/27

【装丁】 福家貴美五行歌集 『富士』

福家貴美さん、第二歌集。

Photo

カバー写真は、第一歌集同様、フォトディレクター光川十洋氏。
歌集のタイトルが、「富士」に決まった時点で、光川氏へ富士山の写真の候補をお願いしました。
いろんな季節、時刻の素晴らしいお写真がたくさんある中、こちらの写真が、一番この歌集の内容と合ってる気がして選ばせていただきました。
他にも3つほど候補があったのですが、著者ご自身が、「これ」と決めてくださって、わたしもいちおしだったのでうれしかったです。

あとは、この写真と、前回の歌集の装丁を踏まえながら細かいところを決めていきました。

Srimg2075

写真が、ブルー、紫などがはいっていたので、見返しも藤色。「フジ」つながりで。
花ギレ、しおりもブルー系。
本扉は、前回同様、ダブルトーンの写真にしました。
メインのモチーフがゆるぎなかったので、安心して装丁できました。

福家さんの五行歌は、同じものをきっと見ていても、こんなふうに簡潔にきりっとなかなか書けないんです。
「は~」とため息がでます。
鮮やかです。

ぜひぜひ。こちらでも↓

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2010/10/25

【読書ノート】桐島、部活やめるってよ

朝井リョウ著、集英社。
第22回小説すばる新人賞受賞。帯に「平成生まれの現役大学生が描く、きらめく青春群像劇」とある。

タイトル、キャッチーでうまい!
装丁もさわやかで、扉の写真もグッド。

目次を見ると、章が全部高校生の男女の人名。
最近こういう形式多いなー。『リアルシンデレラ』もそうだったし、以前読んだ山田詠美の『学問』もそう。『1Q84』なんかもそう。それぞれの人物の視点から起きてることを語って、全体として多面的に立体的に物語を構成している感じ。
実はけっこう読みにくい。あっちとこっちが関係しているから、読み返したりしたくなる。
ミステリ好きは検証したくなるので、疲れる・・・。

物語は、タイトル通り、バレー部のキャプテンだった「桐島」が突然部活をやめる(た)というところからスタートしている。桐島がいるために、毎回ベンチだった宏樹のモノローグが第一章。

目立つ子と目立たない子の学校生活での位置取りとか、細かいエピソードが凄くリアルに描かれている。
ルックスもよくて、運動神経もよくて、クラスでいいポジションにいて、かわいい彼女がいる自分。
でも、中身がすかすかなのも、どこかわかっているいらだち。
おおげさなテーマとか、訴えたい真実というより、空気感や心の繊細な揺れをうまく掬い取った作品。
たぶん「宏樹」が主人公で、「宏樹」が小さな一歩を踏み出しそうな上向き加減のエンディングも作風にマッチしている。

この小説が読んでおすすめか否か、というより、自分の高校生活の記憶を彷彿とさせてくれるところがおもしろかった。もちろん、わたしが高校生のときは、携帯なんかなかったし、家にパソコンもなかった。

それでも、この話とリンクすることはいっぱいあって、「ああ、そうそう、目立つ子は目立つ子とくっついてたなー」とか、「部活はなんかめちゃくちゃがんばってたなー」(あこがれの先輩がいたからね)とか、
同じクラスの男子が、文化祭で自主映画を作っていて、そのBGMが「ホテルカリフォルニア」だったなーとか。

泣いたり、笑ったり。楽しかったな。

作者の「朝井リョウ」さんのプロフィールを見ると、1989年生まれ、岐阜県出身、早稲田大学文化構想学部在学中、とある。ルックスもいまどきのおしゃれな男子風。
これは彼自身の物語でもあるのかな。ださい、とみんなが笑った映像部の同級生への、告白でもあるのかもしれないな、とふと思った。

外見も大事だけど、長い人生、中身、大事。


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2010/10/16

【装丁】 『風の伝言』 柳瀬丈子第二五行歌集

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柳瀬丈子さんの『風の伝言』がようやくできあがりました。
この装丁、ずいぶん生み苦しみました。
最初、写真とイラストとそのバリエーションで5種類ほど提案させていただき、打ち合わせしました。
その後、決まりかけては変更を繰り返し、10種類以上提案した気が・・・。

作品を読ませていただき、生きものへのやさしい目をポイントにしたいと思い、鳥をテーマにしたすばらしいお歌があったので、かつ「風」のイメージ、鳥のモチーフを取り入れたいと考えていました。
かわいいイラストを使ってしまうと、柳瀬さんのスケールの大きさが表現できず、美瑛あたりの写真はどうかと思ったのですが、白地がお好みでなかったようすで。
空と海、両方の青、「秘色」を使いたいとのご希望、甘くなりすぎず、ちぢこまらないように、いまのデザインに落ち着きました。

すてきな鳥のシルエットは、商用フリーで使えるシルエット素材シルエットデザインさんよりお借りしました。
ここのサイト、すごいです。びんぼーなデザイナーの味方です! 実はこの次の装丁にも使わせていただきました。感謝です。
帯は文字をブルーにして、下のブルーが覗いてるような効果をねらってます。
秘色は、カバーの左側の色で、とても淡いのでグラデかけてます。

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表紙と本扉はほぼ同じデザインで、鳥さんをみていただくとわかりますが、白→ブルー→濃紺、とだんだん色が濃くシルエットになってます。見返しは、本文となじむ落ち着いたクリーム。袖が左右色が違うので、くせのない色味にしました。
著者のこだわりで、一首だけ青い文字で印刷した歌もはいっています。

第一章 いきもの図鑑
第二章 風の伝言
第三章 いのちの環
第四章 海

命、自然への畏怖、太古からつながるリズム、おなかの底に響いてくるような歌集です。


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2010/10/11

豆本カーニバル!

本日10:30-17:00まで開催中、東京古書会館(神田小川町)地下1階大ホールの「豆本カーニバル」へ行ってきました。
最初に入口でパンフレットを500円で購入します。(小銭のご用意をお願いとのことでした)
11:00少し前についたのに、がちゃぽん売り切れ! の看板が! ひえー!

中にはもう熱気むんむん! 小さなブースに人がたくさん群がって?よく見えない感じでびっくり!
人垣の後ろのすきまからのぞき見することしばし・・・(苦笑)

落ち着いてみてくると見知ったブースがたくさん出ていた。
みなさん心をこめて作ってるなーと感じるし、見てる人の情熱?も感じた。
作者のお話を直接聞けるのもうれしいですね。

Twitterでよくお見かけするかわいいアイコンの、こがりょうこさんがいらしたので、思わず「twitterでいつも拝見しています~」と言ったら「ID教えてくれたらわかるかも」とおっしゃるので言うと知っててくださった!
思わず名刺交換。うきゅー。かわいい作品がいっぱいです。

うろうろぐるぐる。いろいろ手にとって見せてもらえるのがうれしいですね!
さすがプロの作家さんの作りはていねいですごいです☆
山猫やさんって、東京堂書店にも置いてある作家さんも出店されていて、横でお話を聞かせてもらった。
和紙に版画の作品ですが、これはゴム版なんですって。
ゴム版の実物も置いてあって、おもしろかった。
和紙は知り合いのところから仕入れているそう。
「いやーこれは趣味なんですよ」
うーむうーむ。すごいすごい。

お忙しそうな中、豆本をお買いものしている田中栞さんも発見。
(以前豆本教室に参加させていただきました)

目が回ってきたのでそろそろ退散。
いくつかおみやげを買いました。
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帰りに文房堂にて年賀状用の版木2枚を買って、帰宅。
来年はウサギ年かぁ。

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岡田潤 水墨画個展

日 時◇10月9日(土)~14日(木)11時~18時(最終日17時)
場 所◇ギャラリー美音 03-3398-2978

荻窪駅東口を出て、右方向松屋がある荻窪銀座商店街を道なりにしばらく進んで、左側1Fが焼肉屋さん、塾のあるビルです。
入口の案内
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柳瀬さんよりご案内いただき、初日の夕方、拝見しにいきました。
柳瀬さんや岡田さんともお会いでき、お話しできて楽しかったです。
資格試験の学校TACの雑誌に連載した、柳瀬さんの五行歌と、岡田さんの水墨画のコラボがきっかけとなった展示のようです。
コラボ作品には、柳瀬さんの五行歌も添えられていました。

絵本の挿絵などかわいらしい画風が中心だったらしいのですが、宮沢賢治のイメージで水墨画を描いたことから編集の目にとまり、五行歌とのコラボが実現したようです。
岡田さんはとてもやわらかな笑顔のやさしい方でした。
水墨画はいきおいを感じて、お名前から、すっかり男性だと思っていたのでびっくりしました。

紙芝居のお仲間という、声優の真山亜子さんともご一緒にお話しでき、五行歌の朗読や映像などとのパーフォマンスの共演などもおもしろそう、と興味をもっていただけた。

少し違う外へ一歩踏み出すと、いろんな人との出会いがあって、それぞれ違うスコープがあって、思ってもいない広がりを見せてくれるものだなーと感心してしまった。
水墨画の岡田さんも、「五行歌は、イメージがすごく浮かびやすい」「いいですね」と気に入ってくださったようす。
すなおにうれしいな、と思った。

14日までオープンしているそうなので、よろしかったらどうぞ。

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2010/10/06

【読書ノート】姫野カオルコ 『リアル・シンデレラ』

こんな人、いるわけない。
まあまあ、そう早まらずに。


童話、『シンデレラ』って、ほんとうに幸せなの?

編集プロダクションに努める、わたしが語り部で、「倉島泉(せん)」について取材し、長編ノンフィクションを書くことになる。その取材で泉とかかわった人たちとの話をもとに、「倉島泉」とはいかなる人だったのかを描く、二重構造になった小説。
泉は、身体が弱く、美しい妹の影にかくれて、いつも働き、手伝い、いろんなものをゆずってきた。
地道に努力し、勉強し、旅館の経営手腕も裏方としてこなしてきた。
妹に、お見合い相手をとられ、夫を従業員にとられ、泉が手に入れたものは、まわりの誰かに流れていく。

泉の欲のなさに、周りの女たちは、「何か裏があるのじゃないか」と疑う。
そう、あまりに清過ぎるものは、案外疎まれたり、距離を置かれたり、信じてもらえない。

何をされても、ひどい中傷をされても、泉は畑で有機野菜を育て、布わらじを編み、休みの日に知り合いの子どもをなぐさめにいく。
自然の美しさに身動きできずにたたずんだり、うまい肴と酒を楽しんだりもする。
そう、はたから見ると彼女は、不思議なほど幸せに見えたのだった。

泉には、幸せになる呪文があった。

泉の平和をやぶったのは、「恋」だったように思う。
初めて、自分の心にやどった感情が何かもわからず、扱いかねたのではないか。
泉が選んだ道は・・・・。

泉が親友だったら、さぞ歯がゆくて、「これでいいの?」と人生の折々に何度も問い詰めるだろう。
そのたび、彼女は「なんで?」って答えるんだろう。

自分の中に、泉のような小人を住まわせておくといい。
くやしいとき、「どして?」ってまっすぐ答えてくれるから。
そして足元の実をもぎって、「そんなことより、これ食べるとおいしいよ」って言われて、
お月見で、湖に舟にのって、星を見よう、と言うだろう。

泉のことを、嫌い、という人もいるだろう。
善人すぎる、と。
でもときどき、きらっとそういう面を持ってる人ってほんとにいるよ。
そういう人を疑ったり、馬鹿にしたり、遠ざけたり、からかったりするのでなく、心からの言葉を伝えたいと思う。
いいことしてる人には、ごほうびがなくちゃ、と思ってる。
理不尽なことが、一番あたまにくる。

いいことしてる人には、いいね、って伝えよう。
もう二度と会えなくなって、泣いたって遅いんだから。

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