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2010/08/27

【読書ノート】 赤い竪琴 ◆ 津原泰水

この本は、装丁を考えていていろんな作例を眺めているときに、そのシンプルさとタイトルとのマッチに実物を見てみたいと図書館で探したのが出会いだった。
赤一色に、弦のようなラインが配されて、しかも幻想的なムードをもっていた。
外側をじっくり見た後、せっかく借りたのだから中身も読んでみようと読みだしたら、これが予想外にどんどん引き込まれてしまった。

ヒロインの入栄暁子の職業はグラフィックデザイナー&DTP。仕事の内容がリアルにうかぶ。祖母の遺品から、探した詩人寒川玄児の孫、寒川耿介との出会い。
耿介の楽器職人としての深みと、抱えている苦悩。惹かれあいながらも、みえない壁がミステリアスにたちはだかって、物語に引き込まれる。
ほろ苦い、おとなの恋の物語。
そのための、道具立てが丁寧。

祖母にあてた詩人の一行に、ヒロインは号泣し、読者は一筋の涙を流す。
鯨の歌声につつまれて、胸いっぱいになるエンディング。

津原さん、すてきな物語をありがとう。

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2010/08/07

残暑お見舞い、などなどつらつらもの思い。

Srimg1850

今日は立秋ですね。
夕方窓辺に立つと意外と風が気持ちよくて、やっぱり秋に向かってきたのかなと思いました。
暑中お見舞い用に、今年はウミガメのはんこを作ろうと思い立っていたのですが、残暑見舞いになってしまった・・・。
カメはもともと好きで飼ってるけど、ウミガメの魅力はまた格別。
はばたくように泳ぐ姿の優美なこと!
目もくりくりで可愛くて、生まれたての子ガメはもだえる可愛さですねー。

魚もエイも、イルカもカメも、泳ぐ生き物の流線形はほれぼれする。
思い出しながら絵にかいてはんこに作ってみました。
青からみどりのグラデーションのインクをつけて、越前和紙のはがきに押してみた。
えへへ。残暑見舞いらしくないよ・・・orz

この季節はヒロシマ、長崎の原爆や、戦争について考える。
先日買った今日マチ子さんの『COCOON』という漫画は、沖縄戦に、従軍看護婦として出陣した女学校徒隊「ひめゆり部隊」をモチーフにしている。
戦後65年。
昨日は、原爆詩を朗読している吉永小百合さんの番組も見た。
戦争経験者が高齢化し、どんどん亡くなっていく以上、戦争を知らない世代が語り継ぐほかない。
戦争を体験しなくても、本や資料館や、体験者の話から学べるし、語ることができる。
それが必要だから、20歳代の今日さんの挑戦は、すばらしいと思った。

自分に何ができる?

たとえば子どもに話をすることとか、小さなことでも。きっと何かある。

今日、図書館で子ども用の本だけど、「ひめゆり部隊のさいご」という本を借りてきた。
生存者の体験記が載っている。これを読んだ後、窓辺に立った。

空は夕焼けで、涼しい風が吹いていて。
わたしは痛いところも苦しいところも無く、生きている。
家族やともだちと暮らせている。
これが幸せでなくて、なんであろうか。

戦争、はんたい。


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2010/08/01

雲間に見えるチカっと光るもの

金曜日の夜22:00からは、J-wave、radio×spiderをパソコンでききながらUstrem(映像配信)を楽しんでいる。
先日のゲストは、GACKETさんで、トークテーマは『GACKT直伝セルフプロデュース術』だった。

GACKTさんは、徹底した自己管理のもとに、悩むより行動、迷うより一生懸命やってるか、削れる時間はないかと自分を追い詰めて、理想を追求する人だった。その完璧さに、凡人は全部ついていくことはできなくても、大きくうなづけるものがあった。
全部完璧にできなくても、これはゆずれない、と思ったものに対しては全力で手に入れにいっていいんだなっておもった。チカリ。

今朝、日曜美術館を見るためにTVをつけてたら「ようこそ先輩」が野村克也元監督で、おもしろそうでつい見る。
京都の母校へ赴き、小学生にボードをつかった野球をさせる。
負けた方は、どこが悪かったか、反省会をさせ、作戦をたてて、もう一試合する。
8点負けていた青チームは、最後のイニングでなんと同点まで挽回した。
野村監督は、語った。「失敗、とかいて、成長と読む」
失敗すると、くやしくてなぜ負けたのか考え、工夫する、と。

今の時代、失敗するのがむずかしい時代だと思う。
なんでもインターネットで先回りしてわかってしまって、自らの実体験で失敗することが少なくなってる気がする。
子どもから、失敗する権利を奪ってはならない。
若者だって、すべての大人だってそうだよね。失敗できる、成長できる。
すばらしい授業だった。 またチカリ。

日曜美術館。
画家、彫刻家の宮崎進氏であった。シベリア抑留体験者の宮崎氏は、いまなお創作活動をつづけている。今回は司会者がアトリエへ赴き、作品を鑑賞したり、インタビューを行った。
作品の、重さ、深さに胸を打たれる。そして宮崎氏のことば。

「人間が大好き」

過酷な体験を経ても、なお、この言葉にびっくりした。

こびやへつらいはいらない。自分自身でありたい。

宮崎氏の作品は、この言葉どおりだった。自分しかできない表現を追求されていた。
チカリ。
金曜日のGACKETさんの話にもあった。セルフプロデュースとは、生き方の問題だ、と。
ばらばらの星がつながって、ラインが見えた。

自分の創作活動は迷ってばかりだけど、こびやへつらいだけはしたくない。
どんなに歌会の点数が低くても(笑)。
人の意見を聞かないというのではなくて。

チカっとする光は、すぐにいろんな雲間に隠れてしまう。
雲があってもすすめるように、雲をふきとばす力を。
その力っていうのは、信じることなんじゃないかな。きっと。

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