限定私家版 五行歌集 『おやま?! あ・ら・まっ!!』 。
奥付からみると、これが正式なタイトルらしい。
縦は文庫本とほぼ同じ長さ(148mm)で、横幅は、87mm。手に取ればしっくりなじむ。片手で楽に持てるサイズ。判形、軽さも手帳のよう。
最初の「おや?!」は、表紙だ。
すべすべする肌ざわりの紙に、タイトル文字がうすく削がれていて、裏側の透明シートがみえる。なんともめずらしい紙で、かなりお高いものだそうだ。
次の「あらま!!」は、左開きから読むと、8月に行った「五行歌七人展 『軋』展示作品集」であり、右開きから読むと、「限定私家版五行歌集」となっている造本の仕方だ。
見返しの色も左と右でそれぞれ変えている。
「うーむ」がいっぱい。
さすが紙フェチ。
「る・ぐらんふーる」初の出版物でもあるわけで、インパクトもある。
さて、そろそろ中身へ(笑)
展示作品集。いろんな紙のディスプレイとともに掲示されていた、歌たちとの再会。作者ま のすけさんのつぶやきコメントが楽しめる。左開きのため、縦書きも左から右へなったり、いろんな遊びがある。
<紙にできること>の言葉群には圧倒される。紙への愛情たっぷり。
五行歌集。
ま のすけさんもかなり作品があると思うが、ここに入ってるのは30数首。
ぱらぱらと歌をめくると、フォントがばらばらなことに気がつく。
使ってる書体名もひっそり書かれている。
書体見本も兼ねてる? 歌のイメージによってフォントを変えている。
隠しキーワードらしきものにもにっこり。(*^^*)
やわらかいうたいもあれば、硬質な視点が冴えるものもある。いろんな幅を持った方だなぁと感じさせる。30首のセレクトも、バラエティ豊かがコンセプトだったのかもしれない。
ま のすけさんの歌の魅力を知るには、まだまだ足りないし、もっと読みたいと思ってしまう。
以下は気になったお歌と、わたしのつぶやきです。
- * - * - * - * - * - *
誘蛾灯
命の果てへ
近づいて
そして途絶える
音ふたつ
◇俳句をたしなむ、ま のすけさんらしい1首。何気に七五調だが、歌の雰囲気と合っている。
音ふたつ、は、「じじっ」なのか、それとも2匹(二人)の道行か。
わたしは後者を連想した。諸行無常の響きなり。
でももしそれを告げたら、「いや、これは実景でして・・・」とにこにこされそうだけど。
実景を切り取ったところに、意味を見つけたがるのは人の性なのか。
深読みを想定してなくても、何かにぴん、ときたから切り取られたわけで。やっぱりそれは感度というか、センサーが働いてるのだ。
そして読み手のセンサーがまた、言葉から反応する。
- * - * - * - * - * - *
腐らぬもの
朽ちてなほ
地に残される
還れぬといふも
あはれ
◇なるほどなぁと思う。たとえばプラスチックゴミのようなものか。木の葉であれば、堆肥にもなろう。燃えないゴミは、いつまでたってもそのまんま。
作者は、朽ちること=還る、と捉える。これは生きとし生けるものへのやさしい視点であり、愛情である。
まったく逆の見方もあるだろう。永遠に朽ちることのないものへのあこがれ。でもそれは、生命をもつものには不自然なもの。腐らぬものへの目線は、腐るものへの目線まで届いている。
- * - * - * - * - * - *
月の光に
銀色のあざを曝す
冷やかに
身の内の
水が沸き立つ
◇一読、よくわからないけど、すてきな雰囲気にのまれる歌だ。ま のすけさんは、ときどきこんなふうな抽象的な歌も書かれる。
月の光の下では、本来の色を失い、代りになにか別のものが見えてくるよう。
沸き立つものは、熱い思いか、苦しかった記憶か、それとも怒り?
「冷やかに・・・沸き立つ」だから、マイナスイメージのような気がする。
月の光がなくなり、日の光の前ではそのあざは見えない。
いつものように、明るく「おはよう」と言うのだろう。
ひとりぼっちの月夜でしか見えない「あざ」。誰しも持っていそうだ。
- * - * - * - * - * - *
※限定250部ということですので、ほしい方はお早めに。
こちらから購入できます。←click!↓
最近のコメント