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2009/09/26

【読書ノート】正義のミカタ-I'm loser-

本田孝好著、双葉社。書き下ろし413P。

本田孝好さんの作品は、注目している。
タイトルの、「ミカタ」がカタカナなところ、サブタイトルが、「loser」なこと。うまいなぁ。

高校時代いじめられっこだった、蓮見亮太が、ひょんなことから正義の味方研究部に入部する。
その部では、大学内のいろんなもめごとを、正義感をもって対処し、やっつけていく。
敵か味方か、いろんな人物との出会いと騒動のなか、やがて蓮見亮太は、違和感をおぼえていく。

亮太が考えた末、部活をやめるといったとき、正義のミカタたちがしたこと。
それはとても正義のミカタでなんかなかった。
負けてるほうがほんものかもしれないと思わせた。
亮太は弱いけど強い。でもヒーローなんかじゃない。
すべてのいじめられっこが亮太になれるわけじゃないけど、別のものの見方を与えてくれるような気がした。

正義も振りかざして、人をおびえさせては、本質から離れてしまうってこと。
亮太は、自分なりのやり方を見つけることを選んだ。
どれが正しいとか間違ってるとか規制の概念に囚われるのではなく、自分で見つけることを選んだ。
そこがかっこわるい亮太を輝かせた、ものがたりの腕の冴えをまぶしくいとしく思った。

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2009/09/10

【読書ノート】 ま のすけさんの『おやま?! あ・ら・まっ!!』 

限定私家版 五行歌集 『おやま?! あ・ら・まっ!!』 。

奥付からみると、これが正式なタイトルらしい。
縦は文庫本とほぼ同じ長さ(148mm)で、横幅は、87mm。手に取ればしっくりなじむ。片手で楽に持てるサイズ。判形、軽さも手帳のよう。

最初の「おや?!」は、表紙だ。
すべすべする肌ざわりの紙に、タイトル文字がうすく削がれていて、裏側の透明シートがみえる。なんともめずらしい紙で、かなりお高いものだそうだ。

次の「あらま!!」は、左開きから読むと、8月に行った「五行歌七人展 『軋』展示作品集」であり、右開きから読むと、「限定私家版五行歌集」となっている造本の仕方だ。
見返しの色も左と右でそれぞれ変えている。
「うーむ」がいっぱい。
さすが紙フェチ。
「る・ぐらんふーる」初の出版物でもあるわけで、インパクトもある。

さて、そろそろ中身へ(笑)

展示作品集。いろんな紙のディスプレイとともに掲示されていた、歌たちとの再会。作者ま のすけさんのつぶやきコメントが楽しめる。左開きのため、縦書きも左から右へなったり、いろんな遊びがある。
<紙にできること>の言葉群には圧倒される。紙への愛情たっぷり。

五行歌集。
ま のすけさんもかなり作品があると思うが、ここに入ってるのは30数首。
ぱらぱらと歌をめくると、フォントがばらばらなことに気がつく。
使ってる書体名もひっそり書かれている。
書体見本も兼ねてる? 歌のイメージによってフォントを変えている。
隠しキーワードらしきものにもにっこり。(*^^*)

やわらかいうたいもあれば、硬質な視点が冴えるものもある。いろんな幅を持った方だなぁと感じさせる。30首のセレクトも、バラエティ豊かがコンセプトだったのかもしれない。
ま のすけさんの歌の魅力を知るには、まだまだ足りないし、もっと読みたいと思ってしまう。
以下は気になったお歌と、わたしのつぶやきです。

- * - * - * - * - * - *

誘蛾灯
命の果てへ
近づいて
そして途絶える
音ふたつ


◇俳句をたしなむ、ま のすけさんらしい1首。何気に七五調だが、歌の雰囲気と合っている。
音ふたつ、は、「じじっ」なのか、それとも2匹(二人)の道行か。
わたしは後者を連想した。諸行無常の響きなり。
でももしそれを告げたら、「いや、これは実景でして・・・」とにこにこされそうだけど。
実景を切り取ったところに、意味を見つけたがるのは人の性なのか。
深読みを想定してなくても、何かにぴん、ときたから切り取られたわけで。やっぱりそれは感度というか、センサーが働いてるのだ。
そして読み手のセンサーがまた、言葉から反応する。

- * - * - * - * - * - *

腐らぬもの
朽ちてなほ
地に残される
還れぬといふも
あはれ


◇なるほどなぁと思う。たとえばプラスチックゴミのようなものか。木の葉であれば、堆肥にもなろう。燃えないゴミは、いつまでたってもそのまんま。
作者は、朽ちること=還る、と捉える。これは生きとし生けるものへのやさしい視点であり、愛情である。
 まったく逆の見方もあるだろう。永遠に朽ちることのないものへのあこがれ。でもそれは、生命をもつものには不自然なもの。腐らぬものへの目線は、腐るものへの目線まで届いている。


- * - * - * - * - * - *

月の光に
銀色のあざを曝す
冷やかに
身の内の
水が沸き立つ


◇一読、よくわからないけど、すてきな雰囲気にのまれる歌だ。ま のすけさんは、ときどきこんなふうな抽象的な歌も書かれる。
月の光の下では、本来の色を失い、代りになにか別のものが見えてくるよう。
沸き立つものは、熱い思いか、苦しかった記憶か、それとも怒り?
「冷やかに・・・沸き立つ」だから、マイナスイメージのような気がする。
月の光がなくなり、日の光の前ではそのあざは見えない。
いつものように、明るく「おはよう」と言うのだろう。
ひとりぼっちの月夜でしか見えない「あざ」。誰しも持っていそうだ。


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2009/09/06

【読書ノート】 人を動かす

D.カーネギー著、世界的ベストセラー本。
自己啓発本として有名とのことで、図書館で借りてきたら、夫が「それうちにあるよ」と出してきた。
あれま。

人のやる気を起こさせたり、怒らせずに導いたり。
会話のテクニック集ともいえる。

この中で、「人をほめる」ということが何度もでてくる。

批判を手控え、ほめことばを活用するというのは、B・F・スキナーの教育の基本的な考え方である。この偉大な心理学者は、人間や動物の実験によって、批判を控え、ほめるほうに力点を置けば良い行動が定着し、悪い行動は抑制されることを立証している。 「PART4-人を変える九原則 6わずかなことでもほめる」 より

ほめるばかりで、いいのか? とか甘いんじゃないか、という疑問は誰しも浮かぶ。
しかし、実験の結果(!)で立証されているように、人間というのものは、ほめられるとそれを伸ばし、結果的に悪いところが目立たなくなるようにできているのだ。

わたしは大いに安堵した。
家庭でも、職場でも、自らが参加している歌会にでも、これらは通じることだと思う。
タイミング良く、うそっぱちじゃなく、心の底からほめる言葉を交わしあえば、人は変わり、世の中もよくなることだろう。簡単なことじゃないけど。

さて、わたしがいま一番「動かしたい」人は、娘である。
こちらの思い通り動かすには、どんなことばかけが必要だろうか。
本は読んで終わりじゃない。行動に応用しなければね。

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