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2009/05/19

【読書ノート】 『芸術家とデザイナー』

ブルーノ・ムナーリ著、萱野有美訳、みすず書房、2008

図書館で本を物色中に、出会った本。タイトル直球ど真ん中すぎるぜよ。
わずか135ページの本だが、なんとまあ密度が濃く、読み返してもあきない本だ。
その中に、おもしろい記述があったのでぜひ紹介したい。

時空を超えた円卓 より
この想像上の円卓からは、さまざまな時代の重要な思想家、哲学者、科学者、芸術家たちの真正で、権威的な声が聞こえてくるだろう。(中略)

オノレ・ド・バルザック:芸術の使命は自然を模倣することではなく、表現することである。

ルナチャルスキー:反復は芸術ではない。

アンドレ・バザン:写真は、絵画に課せられた、本物らしくなければならないという強迫観念を解放した。

アリプ(笑いながら):自然を模倣するなんてまっぴらだ。複製したい訳じゃない。植物が実をつけるように、ただ作品を生みたいだけ。

クレー:芸術とは、視えるものを複製することではない。視えるようにすることなのである。

モネ:いや、小鳥のさえずりのようにですよ。

ドガ(割り込んで):芸術はニセモノ。

ピカソ:芸術は、私たちが真実を、少なくとも私たちが人間として理解できる真実を、肌で感じられるように教えるウソである。
(以下略)

全部イエス、と思う。さすが巨匠たち。(といっても書いてるムナーリの洞察力がすごいのだけど)

土曜日にデッサンをしたのだけど、同じモデルをみていて、みんなそれぞれ違う作品になる。
上手い下手をのぞいてもだ。
モデルさんの雰囲気とか、特徴をラインで表現してみたいと思いながら鉛筆を動かしている。
写真じゃないから。

基本には忠実だけど、もっと目にもみえないなにかがラインに乗り移るように。
鉛筆を動かしながら、これらの巨匠のことばを思い出していた。

わたしがピカソが好きなのは、前にも書いてるけど「目に見えないもの」を描いてみせてくれるからだ。
それは、ピカソにとっての真実。

真実・真実・真実。

真実に肉薄する作品が作れるか。
最高の嘘がつけるのか。
ぞくぞくしながら、考えている。


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コメント

◇かおるさん
 いいな。職場の真ん前が美術館だものね!
 かおるさんのギャラリーに行ったときは、美術館にも寄りたい!
 クレーの封筒みたいな絵・・・。前にいったクレー展にはでてなかったかも。

 なるほど筆ねー!
 鉛筆は、手に入りやすいし、扱いが楽だからかしら。
 たしかに筆だと強弱が簡単に出せていいかも。
 井上雄彦さんの「バガボンド」っていう漫画があって、美術館でも展示したんだけど、あれは全部筆で描いていてすごかった。日本画の世界。
 わたしもけっこう筆は好き。筆ペンもよく使う。

 あはは。尻尾はそんな簡単につかまらないよ。
 夏休みの宿題だな!(謎笑)

投稿: しづく | 2009/05/21 21:39

面白そうな本ですね!
一昨日、向かいの美術館でクレーを見たばかりです。
一番惹かれたのは「別れ」という題の、封筒にような紙に、ちょんちょんちょん、と墨で描いたような絵です。
簡単な線ほど難しいのは、当たり前なのですが、凄かったです。
ちゃんと内面やら背景が滲み出てくるのです。


デッサン、頑張っていらっしゃるのですね。
でも、なんでデッサンはいつも鉛筆で教えはるのやろね。基本やからかなぁ・・・
むしろ、墨と筆で描いたほうが、教えやすいと思うのやけど。

歌も絵も、その裏側を匂いでなく香りで現さなければあかんのやね。あれからずっと、匂い(もしかして臭いかも)と香りについて考えています。

ウフフフ、真実、真実、真実
しづくさんにとっての表現の真実の尻尾は、掴まれましたか?

投稿: かおる | 2009/05/20 16:17

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