装丁 『嫁』
本木光子さんの五行歌集『嫁』が出来上がった。
20歳で三世帯六人の大家族へ飛び込み、介護、農業、育児とまさに嫁として生きてきた自叙伝的歌集である。
最初装丁のお話をいただき、本木さんのバックグラウンドを知りたいと、お宅へお邪魔して取材させてもらった。
家を継いでゆく重さ、大きさ、暖かさなどを感じることができた。
草壁先生が、3つのタイトルを選ばれ、その中で作者が選んだのは、『嫁』だった。
嫁。このインパクトのある言葉を聞かされた時、とほうに暮れた。
しかし、本木さんのお歌を何度も読ませていただき、お宅へも伺って、反芻し、まさしくこの生き方は「嫁」であり、嫁の王道をとことん追求した装丁にしようと決心した。
取材したときの写真を加工したり、スケッチしたり、あれこれ迷っているうちに、家紋はどんなものだろうと思い付いた。幸い家紋がうつくしいものだったので、家を背負っているイメージで、大きくあしらってみた。
また、嫁のイメージとして、姉様人形をつかってみたいと思った。
家紋は、ネットで模様をみて、自分でトレースした。姉様人形も、アウトラインをトレースして色つけやデザインは自分で描いてみた。今回、背が力作です!
著者に装丁案を2つ提示したのだが、もう一方は、グリーンから稲わら色のグラデーションに、アクセントの絵をそえたものだった。本木さんがそれを気に入ってくれて、帯に使いたいとおっしゃってくださった。
こうして、墨、特色2色、計3色の豪華な帯が誕生した。
これは、若くお嫁入りした、青い稲穂から熟した実りの稲のイメージを、著者の人生と重ねてみたものだった。
花裂、しおりも黄色。見返しは若葉。とりかかってから、一番時間がかかったけれども、できあがりをみてやっただけの苦労は報われたと思った。
装丁をしづくさんに、とおっしゃっていただけたのも大変うれしかった。
ありがとうございました。
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コメント
◇OKさま
ありがとうございます。
デザインをするときは、意味付けしたくなるのです。連想ゲームみたいに。あれこれ考えるのが苦しくもあり、楽しみでもあります。
本木さんのところには、やはり同じ「嫁」の立場の方やその周りの方から共感の声が届いているようです。
投稿: しづく | 2009/03/10 22:02
いいですねぇ。凄い!と思いました。デザインのアイディアが。
確か記憶では、『嫁』『家』『稲』というタイトル案があったようで
この三文字を見るだけで、歌集を読み終えたような気でいました。
それが、しづくさんの装丁によってとても新鮮に映ります。
しかもトラディッショナル。案外、若い読者層をつかむ予感さえします。
よいお仕事をされたなぁ、と思ったので、一言カキコミました。
投稿: OK | 2009/03/10 01:48
◇ゆうさん
メッセージ、ありがとうございます。
そうですね。嫁は落款のハンコ風にしてみました。
嫁の太鼓判! ってことで。
ひとつひとつにいろんなメッセージを込めています。それを読み取ってもらえると、ほんとにうれしいです。ありがとうございました。
投稿: しづく | 2009/03/08 22:26
またまたシンプルでアイデア満載で決まってますね!
帯の色が本体の渋さに彩を添えてて寒色系の方が
多いのに華やかさも感じられます。
落款のような「嫁」が効いているからでしょうか。
背の紙人形と嫁の字体の可愛さにキュンときました。
投稿: ゆう | 2009/03/07 21:24
◇かおるさん
おお、ありがとうございます。家紋は、「丸に橘」でした。華がある家紋だったので、これならいける! と思いました。ラッキーでした。
かおるさんの本の装丁なんておこがましいですが、やらせてもらえたら全力でやりまっせ。
わたしの本ね・・・うん、そろそろ作りたいデス。
2000年の区切りから10年たつ来年、ちょっと考えています。ってか豆本もつくりたいのよー!
投稿: しづく | 2009/03/05 22:50
う~ん、今回も素敵やね!品格が出てるよ。「嫁」という題にはびっくりしたけど、よく装丁でここまでもってきたね。しづくさんの凄さも見せ付けられたよ!家紋は橘?紋というデザインに気がついたのが凄いところ。また、姉様人形で、一見硬くなり過ぎそうなところをやさしく、おとしているね。着実に装丁家の道を歩んでいらっしゃると思うよ。帯の色もまたいいね。
私も本を出すなら(ありえないが)しづくさんの装丁がいいな!
ていうより、しづくさんの本が読みたいよ!
投稿: かおる | 2009/03/05 07:53