桜さくらサクラ・2009-さようなら、千鳥ヶ淵-
千代田区三番町に移転した山種美術館が、改築完了で秋に引っ越すそうだ。
千鳥ヶ淵ともお別れ。
毎年この時期に行っていた、最後の桜をテーマにした展示会に行って来た。
こじんまりと50点ほど。
すべて桜を描いた日本画である。
入口に入ってすぐ迎えてくれたのは、まさに「千鳥ヶ淵」石田武、という画家のうつくしい日本画だった。
お濠の水面をバックに、桜が枝を伸ばしている。(上の山種美術館へのリンク先で見られます)
その水面の描写の見事さよ。スーパーリアリズム。写真のように忠実である。
同じ作家の「吉野」も圧巻であった。大正11年生まれの石田氏は、ご存命のようである。
すばらしい。
数は少ないけれど、横山大観、東山魁夷、菱田春草、川合玉堂から加山又造、千住博、といったビッグネームの作品も閲覧できた。
なかでも、気に入ったのは、川合玉堂の「春風春水」。
以前川合玉堂美術館を訪れたことがあるが、まさにそのあたりの多摩川の景色。
岩のかんじ、川、山のようすがそっくりである。
川を中心に、一艘の小舟がワイヤーのようなものをつたって、移動しようとしている。
船頭と、女たちのくつろいだ労働姿。上から見下ろしたようなダイナミックな構図と、春の香りまでするようなみごとな色使いに、ためいきがもれる。
桜を描くのは、たくさんの花、花びらを描かなくてはいけないので、大変根気が必要だな、と思った。
その根気を、見ないで適当な間隔&感覚で、機械的に羅列して描いていると、すぐわかってしまう。
丹念に描写した絵は、たいがい花数が少ない。
少ないけれど、精確だ。
ボタニカルアートのようだ。
日本画と洋画と何が違うのか、わたしには正確にわからないのだが、画材と描き方だろうか。
絵の具は顔彩岩絵の具が中心だと思うが、色のトーンが淡く柔らかいものが多いような気がする。
油絵と違って、一本の線の深刻さはそうとうだ。
見ていても、どきどきする。
こうして花の絵に囲まれているのに、さびしいのはこの千鳥ヶ淵という土地柄なのか、桜という花の特殊性のせいなのか。
桜に魅せられた表現者たちの丹念な仕事が、印象に残った。
外に出て、靖国神社へ。
観光バスが何台もでている。20日に開花宣言したはずが、ほとんど咲いていない。
遠くから来た方たちは、残念だったろう。
木によって、なんとか咲いているものある。
その木の下には、たくさんのにわかカメラマンが集まる。
その後、ぶらぶら出店をひやかして、九段下から外堀へ向かい、市ヶ谷土手へ。
こちらも木によって少し咲いているが、ほとんどははちきれそうな蕾。
それでも、ブルーシートを広げ、お花見中の集団が何組もいる。
通りかかった総武線におもわずパチリ。来週末が、お花見ごろになりそうですね。
楽しみです。
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