【読書ノート】 なぜ君は絶望と闘えたのか
~本村洋の3300日、門田隆将著、新潮社2008
(法に裁かれないのなら犯人を)「・・・私の手で殺します」
23歳の妻と、生後11か月の長女を惨殺された山口県光市母子殺害事件の夫、本村洋さんを初めてTVで見たのは、1999年のことだったのだ。
少年法で守られる加害者と、司法制度への不信、被害者遺族の苦しみ、本村氏はずっとマスメディアの矢面に立ちつづけ、訴え、その説得力のある言葉で世間を揺るがし続けた人だった。
「なんてすごい人なんだろう・・・」本村氏のまっとうなもの言いに、毎回揺さぶられた。この判決をずっと見守ろうと思って、新聞やネットなどをずっと追っていた。
この本は、本村洋氏を取材したドキュメンタリーだ。
この本の中には、本村氏自身も難病を抱える身だったこと、死刑以外の判決がでたら、自害しようと遺書を書いていたこと、職場の理解、熱血検事との出会い、犯罪被害者の仲間との運動がつづられている。
正義を信じ、けっして開かないと思っていた扉を開けた人たち。
その愛と信念に驚嘆し、その悲しみの深さに胸が張り裂け、人としてのありかたに心を揺さぶられる。
本村氏が正義の味方だとか、ヒーローだとかいうつもりは全くない。
彼自身、少年法というもの、死刑ということについて悩み、苦しみ、アメリカへ死刑囚に話を聞きに行ってまで自分の信念を確かめた。
彼はこの戦いをしないでは、生きられなかった。
被害者は、妻と赤ちゃんだけではない。
本村氏の一部も、殺されたと思う。
それは犯人が死刑になったとしても、一生修復されることはない。
凶悪な犯罪がなければ、死刑もない。
こんな被害者、加害者を出してはならない。
そのために自分ができること。
たとえばそれは、毎日おいしいごはんを作ること、にも宿っていると思う。
一日のうち出会った人に、笑顔を向けることでも。
自分にこれからどんな困難が降りかかる日が来るかもしれない。絶望の淵に立った時、彼らの戦った軌跡は、灯台のようにわたしを照らしてくれる気がする。
正解なんてない。
自分で動いて悩んで苦しんで光の先のものを見つけるしかない。
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