【読書ノート】谷川俊太郎 質問箱
ほぼ日ブックス刊
ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」にて連載していた、「谷川俊太郎質問箱」を書籍化したもの。
読者からメールで質問を集め、回答したものに加え、書き下ろしの追加質問もあるそうだ。
詩人谷川俊太郎は、ひょうひょうと答える。ユーモアを交え、肩の力をぬいて。
しかしこの質問の答えは目がくぎづけになった。
質問十五 ふつうの言葉と、詩の言葉の違いは何ですか? (みく 三十四歳)
谷川氏の回答引用
前略(嘘か本当かが問題なのではなく、)
その詩の前後の文脈の中でどれだけ読者を、聴衆を
動かす力をもっているかが問題になります。
言い換えると
ふつうの言葉には、その言葉に責任を負う主体がいますが、
詩の言葉の主体である詩人は
真偽については責任がなく、
言葉の美醜、または巧拙について
責任があるのです。
なるほど。
だからこそ自由な精神で創作できるわけで。
ただ良心とか、真実味の点でほんとうのことの方が、より描きやすいといえる。
また、同人関係で詩、五行歌などを書いて読んでもらった時に、「ほんとうか偽か」けっこう問われることが多い。
そして、「偽」だとわかると、かなり失望されるのだ。
それがこわくて、「偽」のことは書けなくなる。
はたしてそれでいいのか。
自分の狭い経験のほんとうだけしか描けないのか。
「偽」の中から「真理」をえぐりだすことはできないのか。
などと・・・・。
とろとろと考える午後でした。
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コメント
◇ずばり開高様
コメントありがとうございます。
築地本願寺。ときどきおもしろいことしますね。
以前わたしもコンサートのイベントに行ったことがありますが、お坊さんの木魚とオーケストラがコラボしていました。
お話をよませていただき、どんな環境、状況下であって自分の存在感を示せるってかっこいいなーと思いました。
谷川さんの朗読ライブは、まだ聴いたことがありません。
「言葉の美醜、または巧拙について責任」を果たされたのですね。
TVでやっていた「詩のボクシング」は好きでよく見ています。朗読で世界観を作れる人は、勝ちあがっていきますね。
なんかあんな感じなのかなーと想像しています。
機会があったら体感してみたいです。
投稿: しづく | 2009/02/16 12:53
遅レスすいません。
先月、築地本願寺で開かれた
俊太郎さんのご子息の谷川賢作さんが主催した、
ジャズと落語と詩人のコラボレーション企画、
“ジャズ寄席”に行ってきました。
関係者によると
事前の打ち合わせや準備をほとんど行う余裕がなく、
ぶっつけ本番で臨んだ企画だったようですが、
ものの見事に大失敗に終りました。
(あれで5千円の入場料をとるのは
不当というか不正な行為だと思います)
僕の観劇、ライヴ鑑賞の長い歴史の中でも
指折りのひどさ、惨憺たる出来栄えでした。
しかし、感動したのは、
その恥ずかしいお粗末な舞台に参加している
谷川俊太郎さんの佇まいの凛々しさでした。
自分も主演しているその企画の失敗を
痛切に受け止めながら微動だにしない詩人の姿。
おそらく即興で選んでいたであろう
自作詩の朗読も作品の選択が秀逸でした。
「死ねたらいいのに」
「うんこ」
などこの企画の失敗への厳しい批評を含みながらも
生命の賛歌などに繋げていく、
俊太郎さんのことばの力はさすがでした。
ことばの“美醜”と“巧拙”は、
独立排除的にああいう場面でもその魅力を保てるのだと
あらためて感じ入りました。
投稿: ずばり開高 | 2009/02/15 16:27
◇かおるさん
こちらこそ毎回お手伝いいただき助かっております。
ありがとうございました。
ほんとうに会場からあふれる人数の参加で大盛況でした。今後の会場探しがちとたいへんですが。
「いろんな角度」
うん。まだ見てない角度を見つけたいですね。
投稿: しづく | 2009/01/13 07:12
歌会ではお世話になりました!
そしていつもながら、お疲れ様でした。
今回も大盛況でとても楽しかったです。
この本、面白そうですね。
なんだかいろんなヒントがあるようで・・・
「「偽」の中から「真理」をえぐりだすことはできないのか。」
本当に共鳴いたします。色々な角度から歌を詠みたいので、この角度も私の中に深く植えつけときます。
深いナァ・・・
投稿: かおる | 2009/01/12 20:20
◇愛子様
うふふ。他の質問はあまり詩と関係ないものが多いかもです。
わたしは小説を読むのが好きだけど、小説にほんとうかどうかは求めない。なのにどうして五行歌だと違うのかなというところを考えてみたいと思ってるのです。
人の思いの生にふれる感動をなかなか超えられないからかなと思うのだけど・・・。
なぜ、と問い続けることもいろんな答えを探せて興味深いと思います。
投稿: しづく | 2009/01/12 18:03
この一つの質問の答えを読んで、
この本読んでみたくなりました。
私も自分の生きてる世界だけしか詠めないと、
お歌が生まれなくなるのかなあと、
時々考えたりします。
投稿: 愛子 | 2009/01/11 16:33