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2008/09/14

液晶絵画 Still/motion

恵比寿にある東京都写真美術館へ、液晶絵画展を見に行ってきた。

高精度の液晶ディスプレイ(SHARPのAQUOS)を使って、絵画的な映像表現をするという新しい試み。
今までも、美術の展示で、ビデオ映像のようなものはあった。
それらとどう違うのか、どういう試みなのか。よくわからないまま部屋に入る。

印象的だった作品は、千住博氏の「水の森」。
液晶ディスプレイを立て置きにし、さらに屏風状にならべ、さながら微かに動く屏風絵のよう。
森と足もとに水がゆらゆらと波立っている。
じっとみていると、さわさわと木々も風にゆっくりそよいでいる。
全体は水墨画のように、モノトーン。静かで癒される映像だった。

ドミニク・レイマンの作品は、大きな画面下半分に、首がない裸の男が後ろでに縛られている後姿。
上の空間は、よくみると5秒くらい前の見ている人の映像が映りこんでいる。
後ろ手の男も、ときどき手を動かす。
作品の中に、自分が入り込むのがおもしろい。

そのほか、果物が徐々に腐ってかびていくようすや、アニメのような映像。
やなぎみわの、仮面をつけた少女の心象風景を描いたような4枚のディスプレイ。

鷹野隆大の「電動ぱらぱら」は、男女が服を脱いでいくシーンが上半身と下半身にわかれて何人もシャッフルされて展開していく。上の映像と下の映像がばらばらなので、服や指輪などで、さっきのあの人かなと想像する。
モデルさんがそれぞれチャーミングで、きれいでみとれる。男性の陰部にはモザイクのラインが入っていた。
裸好き?としては、すごく見とれる映像だった。
男の体も、女の体も、あまり違わないような気になってくる。

楊福東(ヤン・フードン)の作品は、数台のディスプレイを使って、それぞれ中国の農村の別の映像を流している。ときどきつながってるのだが、部屋全体に配置された映像をみていると、中国の広さと、簡易なくらしぶりの中をのぞきこんでいるような気がする。

パンフレットに大きく出ているのは、森村泰昌「フェルメール研究」の中の、『真珠の耳飾りの少女』の写真だ。
フェルメールのアトリエの一部を再現したスペースがあり、使われている椅子やテーブル、絵の具、キャンバスがある。映像は、がらんとしたアトリエに、モデルが現れ、フェルメールの仕事をしてる姿を現れ、さらにそれを後ろから写真をとるフェルメールがでてくる。登場する人物は、すべて森村氏の扮装による。

ビデオ映像のようなものを見ると、液晶絵画? と思ってしまう。
千住氏のような微妙な違い、ゆらぎの動き、やなぎさんのようなストップモーションのようなゆっくりとした動きのほうが、より新鮮味を感じた。

薄型でキャンバスや額のように、壁にかけられること、明るい部屋でもきれいに見えること。
そこへビデオアート作品を流すことで、液晶絵画というジャンルになったのだろう。
液晶ディスプレイというハードウェアと、映像というソフトウエアが分離した。
ソフトウエアを入れ替えると、そこには、また違う絵画(映像)が呼び出される。

映画でもなく、セリフもなく、音楽の力もほとんど使われない。
ストイックな映像表現。
不思議で、めずらしい展示会であった。

ビデオ映像も多いせいか、ひとつひとつ見るのに時間がかかり、全部みると、ふらふらになった。
見に行かれる方は、時間の余裕を持たれることをおすすめします。

写美では、10月13日(月・祝)までです。

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