読書ノート『小林秀雄全作品1』
去年から小林秀雄の全集の拾い読みをしていたのだが、1から始めることにした。
サブタイトルは、様々なる意匠、という代表的な評論からついている。
1922 大正11年20歳から1930昭和5年、28歳までの小説を含む評論がびっしり詰め込まれている。
なんとなく、小説家から評論家への道を模索しながら道をすすむ感じがわかる。
ぜんぶ読み下すことなど、とうていできないが、はっとした断片を記録しておきたい。
自然の描写 断片十二(1924発表)より。
自然の美は、単純に「暗くなった」、「雨が降りだした」という様な簡単な言葉に依ってのみ到達されるというチェホフの言葉は乱暴だが、味わうべき言葉だ。~中略~情緒の色眼鏡なんかで、自然の美を誤魔化そうとする処に自然描写の失敗がある。
情緒の色眼鏡、情緒の色眼鏡・・・ジョチョノイロメガネ・・・・。
自然を詠んだいくつかの秀歌が浮かぶ。
そういうものたちの、うつくしいありようは、色眼鏡がとれている。たしかに。
でも、人は往々にして、情緒をもたせたくなる気もする。
ストレートには言えない気持ちを、目の前の光景に託すような表現。
心象風景として描く場合。
どちらに主題があるか。
自然の美なのか、心象なのか。
自然の美の力をもっと信じていいのか。
そこから生まれる感情にまかせることができるのか。
「簡単な言葉」とは。
「で、それでなに?」って言われないためには?
からまった糸のまま、しばらく持っていることにする。
<メモ>
風邪、80%くらい回復なり。
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コメント
なんかすごい文章を見つけた! って感じがあったの。
それに原本にぶつかって砕けるより、小林秀雄の視点で解説してくれたあれこれを知る、というちょっとお得な感じにもひかれたんだよね。<ちょっとよこしま。
うん、またこれは! というフレーズを紹介するよ。
ほんと細かい断片の文章が、すごいんだよ!
投稿: しづく | 2008/02/04 23:03
小林秀雄…教科書で読んだ以来だ、懐かしいです。
すごいの読もうと決心したのねー。^^
今、上の子(高1)の教科書には、我らが川上弘美さんなんかが載ってるよ♪
ところで自然や情景に心象を託す場合。
個人的には、心象のほうに主題を持たせたいと思ってます。
それでいて風景のほうもきちんと描けるというのが理想だけど、とっても難しいです。
「簡単な言葉」…チェーホフは俳句的な発想を持っていたのかしらん。
削ぎ落としすぎて「で、それでなに?」的作品になってしまうこと、多々あります。
でも、くどくど説明チックになると、それはそれで言いたいことから遠ざかってしまうし。
むずかしいねー。
また、続き、書いてね!^^
投稿: 柚月 | 2008/01/31 23:28