どこまでもころがる妄想
土曜日はAQ歌会だった。
わたしはプリント係りなので、自分の歌をまとめるのはいつも遅い。
ところが今月は、木曜日には出す歌を決めていた。
永遠に続いてほしいもの
草野正宗の詩の中の
いびつな愛情
満月の
前の夜
スピッツを聞いていて、このなんともいえない世界観を歌にしたくて、もだえていた。
ねちねちといつまでも片思いでいたり、寝ないで一晩中寝顔を見詰めていたり、
一歩間違えば変人になりそうな、あやうい恋心。
暑苦しくて、うっとおしくて、でもどっぷりひたるとこの上なく心地よさそうな。
好きだけど、嫌い。
彼の詩は、わたしの中でとても微妙な位置にある。
上の歌をつくってから、はた、と考え直し、「満月の/前の夜」、「十四番目の月」と悩みつつ、なんだか手垢のついた表現が嫌になった。
「スパイダー」を聞くうちに、彼はクモみたいだと思い、クモの糸って、蚕みたいに暖かいのかなと想像し。
このがんじがらめの愛情は、クモにかかった虫みたいと連想し。
元気なときは「うざいなぁ」と思うけど、気持ちが弱ってるときは、「みゅ~」と甘えたいなぁと想像し。
できたのは、こんな歌。
気持ちがざらつく日
うっとおしいほど
見つめられながら
温(ぬく)いクモの巣に
包(くる)まれて眠る
クモの巣にかかって、ぐるぐる巻きにされたら死んじゃうよ? と心配までされて苦笑。
いや、あのね、食べられるってさー大人の意味もあるじゃん?
と、そのうるうるの目をみたわたしは、とてもじゃないけど、言えなかったよ。
(クモさんのことは愛しているのです。クモの愛し方がうっとおしいだけで)
いやー、わけわからん歌ですな。でもなんか自分は、とことん妄想をころがして、満足した一首でした。
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コメント
◇eQさま
コメントありがとうございます。
これだけ解説してしまっては、もとの歌の香りもなにもないかもしれませんが、草野さんの世界について語りたかった!
おかげで、潜在的スピッツファンと出会えました♪
でもでも、あれれ。いつのまにか、わたしがクモになってる~。最近は、素直なそのまま的歌が多かったので、「しづくさんらしくない歌だね」とも言われました。
過去には、ときどき「形のないもの」を歌のピンで留めつけたくあがいた作品はいくつかあります。
「形のないもの」を表現しようとすると、直接的な言葉ではむずかしくて、喩えでイメージを作ることになります。
だけど、それは完全なつくりものと捉えられるのは不本意で、天空の城に「飛行石」が眠っているように、その歌には歌いたい「核」の思いがある。
五行歌はそのままのことばで詠えるのがいい、とよく言われるけど、「そのまま」だけでは届かないところもあるような気がしているのです。そこを苦しんで「表現」を生み出したいという要求がむずむずするときがあります。
その風をつかまえたときだけ、こんな歌が生まれます。
次は何年先かわからないけど、きっとまた生みたいな。
投稿: しづく | 2007/06/28 09:03
むちゃくちゃコメントしずらいこの記事に、未だかってない数のコメントが! ありがとうございます☆
◇かおるちん
おお、ありがとうございます。かおるちんテイストかもね。
かおるちんはいつもオイシソウデス。(  ̄ー ̄)
◇美雨さん
お久しぶりです。草野さんのテーマは、性と死とどこかで読んだことがあります。シュールな独特な言葉使いが魅力的ですね。際どさを感じるあたり、さすが美雨さんです。(  ̄ー ̄)
◇3歳児。さま
うふふ~。3歳にこの感覚がわかるかしらん(←いじわる)
いびつな愛情はどこか未熟でかわいくて、胸がよじれる感じがします。ありがとうございました。m(_"_)m
投稿: しづく | 2007/06/28 08:54
スピッツ、手強し! 私もあの独特の詞には脱帽でした。「涙がキラリ☆」にしても、「はみだしそうなキミの笑顔」とか、どういう感性だ! と冷や汗出そうです。だいたいあのタイトルのつけ方からしてタダモノじゃござんせん。
で、しづくさんの歌、いいですね。いいけれど、クセモノですね。クモに絡め捕られていると見せかけて、実は糸を張っているのは、しづくさん、あなたですね。この歌に魅せられて、気がつくとあなたの巣にかかっている自分に気付く。まんまと溶けかけたアイスクリームのような妄想に、堕とされていく・・・
投稿: eQ | 2007/06/27 20:14
おいら、ちゃぁ~んと点入れたもんねぇ。(微笑)
最初の歌のような「草野正宗」的な使い方では、
注釈などをつけてしまうのも、また、ひとつの
手ではあるのかも知れないですねぇ。
<付記>「草野」の歌であっても(もちろん3歳児は、
そのお名前だけでは判りませんでしたが)、きっと
1点入れさせて頂いたと思います。
《いびつな愛情》が「永遠に続いて欲しい」と願う
その感覚にです。
投稿: 3歳児。 | 2007/06/25 14:28
とってもお久しぶりです。
スピッツは熱心に聴くほうではありませんが、結構好きです。
初めて聴いた「ロビンソン」と言う曲もなんか摩訶不思議な歌詞と綺麗なメロディのミスマッチがいいって思います。
タイトルも殆ど意味不明な感が却って良かったりもして…
Shidukuさんのお歌、ギリギリの際どさがいいなって思います。
投稿: 美雨 | 2007/06/25 13:36
このお歌、大っ好き!土曜日行ってたら3点つけてたね!
行けなくて悔しい。蜘蛛の糸が暖かいのでは、というところに、もう全身が反応。ナルホド。うふふふ、食べて、食べて!しづくさんになら食べられてもいいよ!どっちの意味で!!!うふふふ。
投稿: かおる | 2007/06/25 11:34