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2007/02/27

三好叙子さん五行歌集『母が降る』市井社刊

20070227haha
三好さんの歌集の見本がとうとう届いた。
わくわくどきどきしながらこの日を待っていた。

タイトルを聞いたとき、浮かんだイメージをスケッチにして提案したところ採用になって、初めての装丁の仕事をやらせていただいた。歌のイメージ、三好さんのイメージを大切にしたいと思い、カラーコーディネイトした。
中扉の窓は、三好さんからのリクエスト。
わたしのへたな落書きを、きれいにデータにしてくれた真造さん。
うれしくて感激でふるえております。

あるひとりの女性の生き方の軌跡を、抱きしめるようにじっくりと読みたい一冊。

予約いただいた皆様、数がそろってきて、発送の準備までもうしばらくかかります。
よろしくお願いいたします。

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2007/02/25

作品からプロファイルすることへのぐるぐるな思考

昨日歌会や二次会で出た話題の中で、歌と作者と評価の関係というのがあった。
話題としては、何度もとりあげられているけれど、稲田さんがおっしゃってた言葉があたまに残っている。

作品は作品で見ているから、その先の作者がどういう人であるかということまでは踏み込まない。
 作品からプロファイルはしない

作品は作品としてみてほしい、作品から妙に勘ぐって、やぼな質問をしないでほしい、とつねづね思ううたびとたちにとっては、いちばん理想的な読者の姿勢だろう。

自分はどうかなと考えてみた。その話をしているときと、その後でも。

◇読み手の立場として。
 
作品(五行歌)を読んで、この人はこういう考えを持ってるんだ、こういうものをよしとしているんだ、ということは感じるし、考える。つまりは、歌とぴったりくっついた作者の一部について、思いは馳せる。

特に、日常を素直に詠ってる親しい方には、「こういうことがあったの?」と思わず聞いてしまうことがある。
病気の歌があれば、会ったことがない人でも、「大丈夫かしら」と思ったりする。
会って話す以上の本音がそこに語られている、とどこか思っているからだ。

でも、それは作者の一部であって、全部ではない。
一生その考えかというとそうではなく、その歌をつくったときの思いなのだ。

この作者だから成り立つ、許せるみたいなこともあると思った。
それは前にも話題になったかもしれないが、「当事者かどうか」ということ、詠ってるそのものへの信憑性。
歌の力を裏打ち、太鼓判を押してくれるのがその作者の背景=プロファイルというところか。

だがそもそも作者の背景をしらないなら、その裏打ちは効かない。
作品そのものに力があったらなら、詠み人知らずの歌のように、人々の記憶に残るわけで。
つまりは初めてみる作者を、公平な目で見られる。純粋に作品力だけの勝負。かっこいい。


◇詠み手の立場として

もちろんベースは、作品は作品としてみてほしいのだけど、歌には、どこか「わたしを分かって」という訴えが無意識にしろ潜んでいる気がしてならない。 この出来事をこのように感じた自分、その思い、それを伝えたいという表現欲みたいなものが。
詠わずにいられない。
とにかく言語化したい。

作品の中に、自分はすでに入っているわけで、そこを感じてくれれば十分だ。

上に書いた「読み手」と「詠み手」のことを並べてみると、ぴったり重なることに気づく。
ああ、自分は読んで欲しいように、詠みたいのだな、と。
いや、読みたいものが、詠みたいんだ。

ぐるぐるの回り道は、もとへ戻る。
あたりまえのことを、無意識から意識するために、わたしのぐるぐるは続く。

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ずるずるの帯事件

昨日は、AQ歌会だった。
東大阪からいなださんがいらしてくれること、久しぶりに由奈さんがいらっしゃることから、にわかに「着物で行こう!」計画が、わたしの中で浮かんだ。

先日母にもらった小紋をだしてみたが、ベースが白で、そこにポイントの飛び柄になっている。着物初心者には「汚ごすのではないかという恐怖」が頭をもたげた。で、あきらめる。
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またもや母からもらった、濃いピンク(蘇芳色)の色無地。これなら色が濃いし、古いので万が一汚してもあきらめられる。
帯は黒のいちばんお気に入りので、帯締めは濃い紫に4色の飾り玉がついたもの、帯揚げは菜の花色(明るい緑みの黄色)。めだたないけど、雀ちゃんの根付を。ピーピー。
半襟は一段暗い青朽葉(渋みの緑黄色)の地に、ピンクの梅の刺繍と合わせた。襦袢もうすいピンク。

当日。
朝6時におきて、お弁当を作っていたら、今日は試験前で家でご飯だよ、と娘に言われる。
ぼけている。昨晩半襟つけに、午前1時までかかったので、娘を送り出した後、二度寝。
家事をやりつつ、プリント印刷、コピー、買い物などしていると、時間がどんどんなくなる。
着付け時間は、30分しかなくて、とにかくがんばる。少しでも定刻より早くつかなきゃ、とあせるあせる。

ようやく、電車に乗り込んで、溝ノ口の駅について、席をたったら。

・・・がーん! うそぉ!

なんと帯がゆるんで、下がってきてるではないか!
自分の着付けで出かけたのは、4回めなのだが、こんなことは1回もなかった。
この帯も2回目なのに~。

強風で髪もぐしゃぐしゃにかき回せられるなか、帯を押さえつつ、とにかく会場へ向かう。
プリントを配ったら、速攻トイレへ飛び込んで、点検。
帯締めを締め直すくらいしかできず、髪をピンでとめる。

で、歌会。歌会は、とにかく集中しようと心がけたので、着物のことは忘れた。
稲田さんと、由奈さんのお着物姿が、すてきですてきで、いろいろ聞いたり、よく見せてもらいたかったのだが、自分がみっともないので、あまり近づけず・・・。
でも、他の人の着付けを見せていただくと、すごく参考になるし、楽しい。

稲田さんの茶系の大島紬と、ひわ色(明るいうす緑)の半襟をたっぷり目に着付けていらっしゃるのが、新鮮にうつる。
わたしの着付けの先生は、「1cm!」派だったので、ゆったり出すのもいいなと思った。
襦袢のオレンジも映える色の選択にうなる。

由奈さんのかわいい柄のたびは、生地をもっていって作ってもらったという。半襟も白地に茶の模様で、上品な薄茶の紬のお着物にアクセントを加えている。
すごいなーすごいなーとあこがれのまなざし。

わたしが次にほしいなとおもっているのは、縞の着物。
浮世絵とか夢二のファンなので、どうしてもそういう世界にあこがれてしまう。
だから、きっと着物になると他の人より(安っぽめの)派手好みかもしれない。(・・・危険だ)
まだまだとんちんかんなことをやりそうですが、着物へのあこがれは、しばらく続いていきそうです。

教訓:帯の締め具合は、帯枕を上げるときにきちんと確認!

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2007/02/17

ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展

原宿にある浮世絵太田記念美術館でやっているギメ・コレクションを見に行きました。
会期が、2月25日(日)までなので、ややあせりぎみ。
混んでいると聞いたので、開館の50分まえに行くと、2人並んでいました。
30分まえになると、列もかなり長くなってきて、10:30には一回に入れたのかな、と思うくらい。
ここは展示スペースが小さいので、人数制限をかけている。ふだんは、靴を脱いで鑑賞するが、今日は「込み合うので土足で」と張り紙があった。
若い人もけっこう並んでいる。

さて、今回の目玉はフランスと日本に引き裂かれた、北斎の「龍図」「虎図」二つの浮世絵が対幅で展示されていること。
二つを並べてかけて初めてわかるいろんな謎がとけて、感動がある。
そのほかは、非常に保存状態のよい、つまりは色あざやかな北斎、広重らの名作に目を奪われた。

龍虎の作品よりも、気に入ったものは、北斎の「諸国滝廻り 下野黒髪山きりふりの滝」。
ダイナミックな構図、鮮やかな色彩。飛沫の細かい表現。ほれぼれ。
その滝のならびにあった、老人が何かをかついでいる作品(歌川貞秀「山中の猟師」?)も遠景からなにから、ものすごい精緻ですばらしい。
あとは、広重の「木曽街道六十九次 須原」の雨の作品。この三つが今回の私的ナンバースリーだった。
もっとも、1月の展示は内容が入れ替わっているので見ていない。1月は歌麿の美人画がかなり出ていたようだった。でも美人がより風景画の方が好きなので、2月でよかった。

きりふりの滝でも使われている、「ベロ藍」という、青い人工染料の開発で、青の表現が可能になったという。北斎はそれをいち早くとりいれ、すばらしい作品を生み出したわけだ。
北斎は、多くの作品、多くの雅号、転居もいろいろして、作品以外の資料がほとんどななぞめいた人だと聞く。
この謎が作品の素晴らしさとともに、みんなの心をつかむんだろうな。

北斎の作品の前にたつと、ほんとに打ちのめされるものがある。
理屈も背景もいらない。
作品力に、ただただひれふすのみだ。
わたしはこの洗礼を浴びたいがために、足を運ぶし、彼らはそれを裏切らない。
北斎も、広重も。

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2007/02/15

上野御徒町で五行歌?

昨日仕事で外出した夫からの情報。
大江戸線の上野御徒町は、駅のホームから改札口の通路の壁が、よくギャラリーに使われている。
そこで、昨日五行歌作品を見たという。

以前、どどいつを墨で書いた作品や、似顔絵などみたことがあったので、「どどいつ、じゃなかった?」
と確かめると、「いや、一番はじに、『五行歌』って書いてあった」というのです。
どなたが書かれた物なのか不明ですが、もしお立ち寄りになれる方がいらしたら、見てみてください。
改札を入らなくても、見られる位置にあると思われます。

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2007/02/03

祖母から母へ

今日は実家へ着物を着ていった。
着付け教室も今月で最後。筆記試験や、20分で着付け終わるテストもある。電車に乗って外出しなれておこうと思って、鮫小紋と母の羽織。
節分だし、おめでたモードな感じで。

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母に、小紋をもらう約束をしていたので、みせてもらう。
グリーンの帯揚げと帯締めがあったので、していったのととりかえてみた。
目の覚めるような補色! 洋服だったらぜったい身に着けないのに、着物だとぜんぜん平気なのが不思議。

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母が、「これみせたことあったっけ?」とやおらとりあげた長じゅばんがあった。
「着ることもないんだけど、これはどうしても処分できない」という。

えりのところにあるのは、祖父(母の父)の出征旗だという。
日の丸に、墨で祖父の名前が書いてある。
物のない時代、祖母がはぎれをつなぎ合わせて、母に縫い上げた長襦袢だという。
祖父は、母が二歳のときに戦争に行ってあっけなく亡くなった。
子ども三人を、祖母の和裁が支えた。

そのていねいな仕事ぶりに、泣きそうになった。
ていねいにたたまれたそれは、また母の桐ダンスで眠りについた。

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